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冒険者珍道中

数ヶ月の前のことです。
ここはある地方の辺境にある広大な土地。争い事など滅多に起こらない非常にのどかで緑に溢れた、広さだけが売りの平凡な地です。
この土地を納めているアルクライト一族の長男、ナギットは現領主である父の部屋を訪れていました。
「失礼します」
「おお!ナギットくん!待ってたよー」
キングサイズのベッドの上にいる初老の彼こそ、子供の頃から大きなベッドを独り占めするのが夢だったと豪語していたらしいナギットの父親兼、領主でした。性格はようき。
趣味は推理小説を読みふけること。あらゆるコネを使って世界中から取り寄せた小説たちはベッド後ろにある、天井まで高さを持つある本棚に収められ、キチンと整理整頓されています。
他の家具といえば、あまり物が散らかっていない机が部屋の隅にポツンとあるぐらいでしょうか。趣味兼仕事部屋と言っているそうですが、ナギットからすればただのサボり部屋にしか見えません。
現在反抗期継続中のナギット、ベッド上の父を見てため息をつきます。
「元気そうですねお父様、倒れたと聞いた時は心底驚きましたが……」
「3年」
「は?」
「3年なんだよねー。寿命」
少年は硬直しました。
「いやー僕さー残り25年ぐらいは余裕で生きれる!って思ってたんだけどね?医者に診断してもらった結果!残り3年の命ですって断言されちゃったわーおかしいなー?どこを間違えちゃったんだろうね?」
余命宣告をされた人間には見えない口調とテンションで喋っています。ほとんどの人間なら絶望して泣きじゃくったり死ぬだろうと全てを諦めたりするでしょうが、この男は他人事のように語っていました。
ナギット、余命宣告に驚いたらいいのかそのテンションに文句をつけたらいいのか分からず固まったままです。
「余命宣告なんて生まれて初めてだからワクワクしちゃったなー後何度ぐらいされるのかな?」
「何度も余命宣告されてたまるかクソ親父!!つーか死ぬ?お前が?3年後に!?ポックリと!?」
「うん死ぬ。びっくりだね」
「なんでそんな平気な顔してんだよ……これじゃあ驚いてる俺がおかしいみてぇじゃねーか……」
反抗期中とはいえ、実の父の余命宣言にショックを受けない息子はいません。よってナギット、呆然。
「まあまあナギットくん。お父さんが大好きだからってそこまで落ち込まなくてもいいよ、だってまだ当分死ぬつもりないし……というか今死んだら未練がありすぎて成仏できない。ナギットくんに取り憑いて悪事の限りを働くかもね」
「塩まくぞクソ親父」
「ハハハハハ、僕は塩より砂糖がいいな」
「もういいとっととくたばれ。俺はアンタの仕事の引き継ぎとかすっから」
「そういうワケにもいかないんだって、そもそも今のナギットくんにウチの仕事を全部任せるのはちょっと嫌、やっぱかなり嫌、というかすっごく嫌」
「トドメ刺すぞコラ」
いっそのこと自分の手で終わらせるのも1つの結末なのかもしれない……何年か前から考えていたことがを今なら実現できる気がして、腰に下げた剣の柄を静かに掴みます。
「落ち着くんだナギットくん。僕を納得させてくれたらちゃーんと君を後継者として認めてあげるから、暴力に身を任せるのはよくない、ヒジョーによくない」
「チッ……で?なんだよ納得って」
「世界樹」
「え?」
「ここからメチャクチャ遠いオーベルフェという地に世界樹という巨大な樹がある。しかし、途中の道か険しいせいでそこに到達した者はおらず、今なお様々な逸話が飛び交っているとか」
「はあ」
「だから、ちょっくらそこまで到達してきてくれない?」
「……へ?」
「だーかーらーオーベルフェの世界樹に到達して君の実力を見せてくれないと、とてもじゃないけどアルクライト家の後継者として認められないんだよ。キキョウを連れて行ってもいいから、しっかり攻略してくるように!」





第2迷宮。翠玉の洞窟

アオニ「新しいダンジョン!新しいBGM!新しい敵!いやーやっぱ1階ってゆーのはワクワクするなー!」
クロ「ひとつ建設するだけで蟻の巣状構想の固定ができる原理不明の機能を持つ砦のチュートリアルも兼ねて、ひとつめの仕事は終わりましたし、後はヌシを大人しくさせる大仕事だけですね」
ナギット「なんで俺たちがそんな面倒なことを……ブツブツ」
キキョウ「ナギットさんどーどーどー」
アオニ「おっ、とかなんとか言ってるけど間に新しい敵が」

眠れる大獅子が現れた。

アオニ「……」
クロ「こんな序盤のダンジョンから終盤臭のする魔物を投入しないでください!」
キキョウ「さっきクエストに討伐依頼出てたじゃん」
ナギット「つーか終盤臭ってなんだよ……よくわかんねー表現しやがって……」

ポイズンウーズの毒の息!アオニは毒におかされた!鈍足になった!

アオニ「ヴぉえあ」
クロ「なんて汚い声を出しているんですかフカ子!ああっ!私がサブメディになっていれば治療できるというのに!」
ナギット「すみません……まだリフレッシュとってなくて……」
キキョウ「とにかくウーズ倒すな!といやっ」

ポイズンウーズを倒した

アオニ「そうだった……毒になると鈍足にもなるんだった……忘れてた……ごふっ」
クロ「動いちゃダメですよ!1ターンに20の固定ダメージで、鈍足も重なって一気に40ダメージも負うんですから!」
ナギット「いや動かないとターン進みませんよ」
キキョウ「もう詰みゲーになるのはやだなぁ。てか世界樹の毒ってえげつないダメージが出るって聞いたぞ?」
ナギット「毒持ち魔物の個体差なんじゃね?」
キキョウ「おぉ~さすがナギットさん、目の付け所が常識からズレてる!」
ナギット「誉めてねぇだろそれ」
アオニ「うう~君らがコントしてる間に自然回復したよ。ぶっちゃけHPギリギリだったけど」
キキョウ「真っ赤だな」
アオニ「サブクラス取れるまではナギットにリフレッシュしてもらうことになりそうだね。次にレベルが上がったらでいいからお願いね」
ナギット「わかりました」

ナギットは木の矢の罠を踏んだ!

ナギット「いたっ」

キキョウは睡眠の罠を踏んだ!

キキョウ「ぐー」

アオニは落石の罠を踏んだ!

アオニ「痛い!」
クロ「いきなり罠が増えましたねぇ」
キキョウ「こんなに罠がわんさかあるなんて聞いてなーい!地味に痛いぞこれ!」
アオニ「しかも踏むのはリーダーじゃなくてだいたい仲間なんだよね」
クロ「行動原理がよくわからないAIのままで部屋で留まっていると勝手にウロウロしちゃうのが原因ですねぇ」
アオニ「でも勝手に結晶床踏まないのはいいと思う。これでTPが減ってる味方に効率よく別けることが」
ナギット「あ……すみません……さっき間違えてひとつ踏んでしまいました……」
アオニ「…………」
クロ「…………」
キキョウ「ナギットさーん……」
ナギット「しっ、しょうがねぇだろ!こちとらクソみたいなAIなんだからさぁ!全部踏まないだけマシだろ!」
アオニ「まあ、仲間の行動については一種の縛りプレイみたいな感じで楽しんでるとこあるし、いいっちゃいいけど」
クロ「せかだんの味方AIについては今更文句言うこともないでしょうね~前も散々でしたし。とにかく先に」

クロは鉄球の罠を踏んだ!

クロ「え」

クロは鉄球に押されて吹き飛ばされた!

クロ「ごふぅ」
アオニ&ナギット&キキョウ『!!?』
キキョウ「そっち水辺だ!」
アオニ「なんだって?!専用スキル持ってないと水に落ちたら強制ワープだよ!分散されちゃう!」

クロは水落ちた!ワープした!
アオニたちの目の前に着地した!

クロ「………………」
3人『………………』
クロ「……………………」
3人『………お、おかえり?』
クロ「た……ただいま!?」

B6Fにて

アオニ「さーて、次はB7Fかー」

階段の先から異様な気配を感じる……

アオニ「およ?」
ナギット「この先に例の迷宮のヌシがいるのでしょうか?」
クロ「でしょうねぇ。どうしますかフカ子、パーティのHPTP共にほぼ満タンですし突入しても十分戦えますが」
アオニ「いや、帰る」
キキョウ「ええっ!?なんで!?ボスは目の前じゃん!」
アオニ「だって……!アタシはまだ突剣を買えてない……!」
キキョウ「あ」
クロ「では帰りますか。準備は怠らないようにしないと死んでも死にきれませんからね」
ナギット「不吉なことを言わないでください」

突剣を購入して出直す。

アオニ「かくしてB7Fまでやってきたのであった」
キキョウ「異様な気配がぷんすかするな!」
ナギット「なんで怒ってるんだよお前」

甲羅獣ベスマオが現れた!

クロ「出ましたねぇ」
キキョウ「うひゃーゴリラと亀の融合体みたいな魔物だなー」
アオニ「どんな魔物だろうが基本は同じ!まずは近づいて」

甲羅獣ベスマオは甲羅突進を使った!
アオニとクロにダメージ!

アオニ「おふん」
クロ「ぎゃん!経路上!」
キキョウ「見事にひいていったな」
クロ「私はルンマスだから被ダメはフカ子の2倍以上なんですよもう!死んだらどうするつもりですか!」
ナギット「ネクタル使えばいいだろ」
アオニ「ネクタルや世界樹の葉があるから平気だって高を括るのが一番危ないんだからね?バッグにあると思い込んでボス戦まで来てしまった時の絶望感と行ったら……」
クロ「今日は5回ぐらい見直したから大丈夫でしょう?それより、ヌシはかなり遠くに行ってしまいましたし……まずは隊列を整えることから始めましょう」

クロは雷撃の印術を使った!甲羅獣ベスマオは麻痺した!

アオニ「うーむ相変わらずチートみたいなスキル」
クロ「とはいえしばらくすると自然回復されてしまいますし油断は禁物ですよ」
ナギット「この間になるべく接近しておきましょう。隙を見て挑発もしておきます」
キキョウ「よっ!煽り上手!」
ナギット「ターン制じゃなかったら殴りに行ってた」
アオニ「あとは道中で拾ったブレイバンドとかクロのルーンの輝きで火力を上げて、麻痺がとけたらスキル封じの印石であの突進を封じてしまおう」
クロ「かしこまりました。私はもう一撃喰らったら死ぬと思うのでなるべく距離をとっておきますね」
アオニ「おっと、麻痺もとけた。ナギットが挑発してくれているし向こうに攻撃が集中してる隙にこっち殴って……」

アオニの攻撃で甲羅獣ベスマオはひっくりかえった!

ベスマオ「じたばた」
クロ「あらまあお間抜け感120%」
キキョウ「隙に溢れてる間にもっと殴るべきだな!」
アオニ「それはいいんだけど、ブレイバンドで攻撃力を上げたキキョウが軽く170ダメージ出してる件について。アタシでも100行くか行かないかなのに」
キキョウ「どや」
クロ「さすがは攻撃特化職。素晴らしいですねぇ」
ナギット「キリキリ働けよ」
キキョウ「辛辣なのナギットさんだけッスよ」

甲羅獣ベスマオを倒した!
迷宮のヌシを倒した一行は船着場まで戻ってきた

ナディカ「あっ!帰ってきた!どうだった?」
アオニ「どうだったも何もちゃーんと踏破してきたよ」
ナディカ「踏破したの!?すごーい!おめでとーーー!!」

どんどんぱちぱちひゅーひゅー

ナギット「なんだ今の演出」
ナディカ「今回は断られたけどこれからはバッチリ取材させてもらうからね!さっ、もうすぐ日が暮れちゃいそうだし早く帰ろ帰ろ!」
ナギット「なんでお前が仕切ってるんだよ」
クロ「可愛いからいいじゃないですか」
ナギット「可愛いからなんでも許すのはよくないでしょう……というかもしかして、あの女宿まで付いて来る気じゃあ……」
クロ「ワクワク……」
ナギット「おい」

宿に戻ったがナディカの姿は見当たらなかった。

キキョウ「いつの間にか消えてるな」
クロ「しょんぼり」
コヌア「お帰りなさい、お疲れ様。お風呂の用意ができてますよ」
クロ「待ってました!」
アオニ「あ、これ迷宮踏破するたびに温泉イベントあるんだね」
クロ「ワクワク!」
アオニ「誰でもいいからアタシの代わりに殴っといてね」
ナギット「了解しました」
キキョウ「ナギットさんのグーパンはなかなか痛いから歯ぁ食いしばらないとルンマスは確1だぞ!気をつけてな!」
クロ「えっ」

第2迷宮を踏破したパレッテの一行は、今日も温泉で疲れを癒す。
念のため言っておくと混浴ではないが、露天風呂のため互いの声が聞こえてしまうのである。

アオニ「ふいー、やっぱ温泉はいいよね〜生き返る〜って感じ〜」
クロ「私はフカ子の裸体が見れたらもっと生き返ると思います」
アオニ「お黙れ」
キキョウ「部屋は一緒なのにお風呂は一緒じゃないなんて、変な話だよなー?」
ナギット「お前それ本気で言ってんのか?」
キキョウ「むえ?」
アオニ「なんとなーく思ってたんだけどさー?キキョウって性別の概念ないの?自分オトコノコだって自覚ある?」
キキョウ「むー。どんな馬鹿でも自分の性別を間違えるヤツはいないだろー?俺は見た目こんなんだけどちゃーんと男だって分かってるもん」
クロ「自覚はあるけど性別が異なる場合の問題等々は全く分からないといったところでしょうか」
キキョウ「問題って?」
アオニ「ナギット……キキョウっていつもこんな感じなの……?」
ナギット「残念ながら……」
キキョウ「???」
クロ「どうしてこんなになるまで放置しておいたんですか」
ナギット「それは親z……じゃなくて、お父様がコイツを拾った時から顔つきかちょっと女の子らしくてメイド達もほとんど気付かなかったそうでして……こりゃ面白いと楽しみ出したお父様が……まあ、その、色々教えなかったんですよね……」
アオニ「人の親のこと悪く言いたくないんだけどさ、ひっどいわ」
ナギット「でしょう?」
キキョウ「あ〜ご主人の元で働き出してからほぼ毎日メイドさんに可愛がってもらってたなーなつかしー。休憩時間とかよくファッションショーとかやってた」
アオニ「それが原因で性別の概念ぐちゃぐちゃに……」
ナギット「それだけと言い切れないんですけどね。元の性格がアレですし」
キキョウ「アレって何スか」
クロ「メイドさんに毎日可愛がってもらっていた……?なんて羨ましい!!」
キキョウ「そうか?」
アオニ「羨ましがるのはクロだけだって。んじゃ、アタシはもう上がるからー、コーヒー牛乳飲まなきゃ」
ナギット「僕もそろそろ出ますね」
キキョウ「俺はもうちょっといるッス」
クロ「では私も残ります」
ナギット「そうですか。コイツが何かしでかしたら桶で殴っておいていいですよ」
キキョウ「ナギットさんってば自分の手を汚さす人に罪を犯させるなんて……悪のカリスマ……!」
ナギット「殴っといてください」
キキョウ「ああん」

他の客がいないため、クロとキキョウの2人きりになった。

クロ「珍しいですね、いつもは早く出て牛乳飲んでいるのに」
キキョウ「だってー気になるんだもん」
クロ「気になる?とは?」
キキョウ「クロのことだよ」
クロ「……え?」
キキョウ「だってさ。一番最初にお風呂に入って一番最後に出てるじゃん。不思議だなーって」
クロ「長風呂が好きなだけですよ」
キキョウ「この前アオニがクロは暑いの得意じゃないって言ってたぞ。タルシスの第3迷宮で死にかけてたって聞いた」
クロ「……あらー」
キキョウ「そう思うとルンマスの服ってめちゃめちゃ厚着だよな?暑がりにはしんどいだろあの服……そうだ!今度俺が涼しい感じに改良してやろうか?裁縫は得意だから任せとけ!」
クロ「いいですいいです遠慮しておきます。ルンマスの衣装はあれが正装なので改造してもらったら困りますから……」
キキョウ「なんだ残念。でもその言い方だと、正装じゃなかったら改良してもいいってコトなんじゃないのか?」
クロ「そういう細かい話はいいですから、早く上がった方が良いですよ、ええ」
キキョウ「…………」
クロ「…………」
キキョウ「…………」
クロ「そういえば風呂上がりの牛乳……残り一本しかなかったような……」
キキョウ「なんだって!?誰かに飲まれたら俺の風呂上がりハピネスエンジョイタイムがなくなるじゃないか!!そうはさせん!そうはさせんぞ!!」

キキョウは湯船から飛び出すとものすごい速さで脱衣所に戻ってしまった。お風呂では走らないようにしよう。

クロ「思った以上に勘が鋭い……参ったなぁ……」

ため息をつく彼の背中には、無数の痣が浮かんでいたのであった……
そして、次の朝。

エミル「やあっ!君達も冒険者!?新人さんなのかな♪いいね!」
アオニ「正統派イケメンが出た」
クロ「どう見てもプリンスです本当にありがとうございました。NPC減らした分冒険者グラ流用増えてるんですね」
ナギット「初対面からバッチリ毒を飛ばさないでくださいよ。悪人じゃああるまいし」
エミル「初々しくてピチピチしてて希望に満ち溢れているこの感じ!いや〜いいねぇ〜♪」
ナギット「前言を撤回する
キキョウ「ピチピチって死語じゃね?」

ばたばたばた

ネッド「わ……若っ……!こんなところに……ゼェゼェ……」
アオニ「おっと新キャラが。今度はカースメーカー男だね」
エミル「やあ!おはようネッド!相変わらず清々しい朝が似合わない男だね♪」
ネッド「病弱なんです……ほっといて……ゼェゼェ……」
クロ「じゃあ1秒でもはや早く安静にしてくださいよ」
ネッド「それより勝手にどっか行かないでくださいよ……こっちは王の命令で御付き任されてるんですよ?ゲホゲホ……」
エミル「それが鬱陶しいのだよ♪じゃあ行くね」
ネッド「そ……そんな……待って……ゲホゲホ……ぐはあっ……!!」

ネッドは大きく咳き込むと倒れてしまった!

キキョウ「ギャー!倒れたー!」
クロ「言わんこっちゃない!」
エミル「……じゃあ♪」
4人『見捨てたぁ!!?』
ナギット「なんて主君だ……」
キキョウ「暴君じゃん」
クロ「ディスってる場合ですか!とにかくベッドまで運んで……」
コヌア「大丈夫ですよパレッテさん、じきに起きます」
ナギット「え?」
ネッド「ふうっ……また死ねなかった……」
コヌア「すごいですよね、よく死にそうになるのに必ず死なないんだから。私も最初見たときはビックリしたけど今はもうだいぶ慣れました」
ネッド「コヌアどの、いつもかたじけない……そして……パレッテというかお主たちは、驚かせてすまない。私はベルシク・ネッド。カナハルタ王国の公認呪術師だ……」
キキョウ「カナハルタ?ナディカの地元と一緒だな」
ネッド「そしてさっきのバカタレ王子がわれらの若エミルだ……我々は世界樹の謎を求めてオーベルフェにやってきた……同じ冒険者ならまた会うこともあるだろう。では……」
クロ「お、お大事に……」
ナギット「あんまり無茶しないでくださいね……」
ネッド「どうも……ぶふぉ!ゲホゲホ……!ぐぼあーーー!」
キキョウ「ギャー!また倒れ」
ネッド「いや持ちこたえた……では……」

坊然とする一行を尻目に、ネッドは出て行った。

コヌア「エミルさん達もここに泊まってるんですよ。王族の方なのにこんな所に泊まるなんて珍しいですよね……あっ!こんなところとか言っちゃいけませんよね!てへっ!」
アオニ「てへて」
クロ「可愛い!」
アオニ「お黙れ」
クロ「はい」

街に出るとナディカがいた。誰かと話をしているようだ。

ナディカ「ねえ、取材をお願いしていい?」
エミル「全然オッケーだよ、お嬢ちゃん♪」
アオニ「お前かよ」
ネッド「おや?お主たちは……?確か宿にいた……」
ナディカ「あっ!パレッテさん!」
キキョウ「こりゃまたみんな揃って……って、そういやナディカもカナハルタ王国だよな?エミルたちと同じ国出身なんだよな?」
ネッド「なに?この娘が我々と同郷の者だと?」
キキョウ「そーそー」
ネッド「い……いや、ど……どうだろう……お……王国の記者とは私もかなり顔なじみだが……」
ナディカ「……ッ!!」
アオニ「違うの?」
ネッド「むう……こんな幼い子が取材など……」
ナディカ「ちょ、ちょっと用事思い出しちゃった……ごめんなさーーい!!」

ナディカは猛スピードで逃げ出した!

クロ「ああっ!ナディカ!せめて泊まってる宿ぐらい教えてくださいよ!何もしませんから!」
ナギット「何もしないんだったら聞く必要ないでしょうが」
エミル「あらら、ネッドの不健康な顔面見て逃げ出しちゃったよ」
ネッド「誰が不健康な顔ですか誰が……ゲホッ……ぐはぁっ……!!」

ネッドはまた倒れてしまった!

キキョウ「ギャー!また倒れたー!」
ナギット「いい加減慣れろよ」
キキョウ「慣れるのもどうかと思うッスよ」
エミル「やれやれ。せっかく取材を受けてあげようと思ってたのに……まあいっか。これからギルドに寄ってみるかな♪パレッテだっけ?じゃあまた♪」
アオニ「そして安定の置き去り退場」
クロ「王女だったらよかったのに……」
アオニ「お前はそればっかりか」
ナギット「とにかく、第2迷宮の仕事の報酬を貰いにギルドに行った方がいいのでは?」
アオニ「そうだねー行ってみよっか」
キキョウ「……」
クロ「どうかしましたか?」
キキョウ「んー?なんでもない。ネッドは放置でいいのかなーって考えてただけだからさ」
クロ「宿での様子を見る限り放置でも問題なさそうですし、その内勝手に起き上がりますよ」
ナギット「アナタもアナタで辛辣ですね」
アオニ「大丈夫、女だったら問答無用で助けてたよ」
ナギット「どこが大丈夫なんですか……とにかく、さすがにこのままなのは可哀想なので書き置きだけでも残しておきましょう」
キキョウ「わーナギットさんやっさし〜」
ナギット「お前に言われても全っ然嬉しくねぇわ」

倒れたままのネッドにエミルが冒険者ギルドに向かったと書き置きを残し、一行もギルドへ。

エミル「トラオレさん!じゃあまた♪」
トラオレ「おう!頑張ってこいよ!」
アオニ「およエミル」
クロ「こちらに気付く間も無く去ってしまいましたねぇ」
イルコフ「気に食わん。道楽者が」
キキョウ「おお、新しい顔が次々と」
アオニ「もう驚かなくなってきたよね。ガンナー男だし」
トラオレ「でも実力はかなりのものですよ?」
イルコフ「フンッ、ワシは認め……ん?なんだお前たちは。知らぬ顔だな」
トラオレ「おお、パレッテか。いい所にきた、紹介するよ。この方はイルコフさん、銃の名手で街ではナンバーツーの実力を持つギルドへのリーダーなんだ」
アオニ「なんとライバルギルドとな!」
クロ「可愛さはフカ子がナンバーワンのオンリーワンですよ!」
ナギット「誰もそんな話はしていません」
トラオレ「イルコフさん、こちらはパレッテ。最近ギルドへに登録したばかりの新人ですがこう見えてなかなかスジはいいんです」
イルコフ「フンッ、少し仕事したからといって調子にのるんじゃないぞ」
キキョウ「おっ?見え透いた挑発ってやつだな!だがそれに反応するほど俺たちは安くないぜ!たぶん3350エン以上はする!」
アオニ「さっき工房に出た新しい突剣とあんまり変わらないお値段じゃないか」
クロ「見た目はいいのに性別と性格が残念すぎるんですよアナタ」
ナギット「だからそんな話はしてませんって」
イルコフ「なんなんだコイツら……」
トラオレ「ははは……なかなか自由な人たちでしょう?」
イルコフ「ただのアホにしか見えんがな。それよりトラオレよ、聞いてくれ。銃が一丁盗まれたのだ」
トラオレ「またですか?」
イルコフ「ああ、たぶん妖魔の仕業だ」
トラオレ「ええっ!?見たんですか?妖魔を?」
イルコフ「いや。だが、そうに決まっている。とにかくこれからガラク工房に行かねば……まったく邪魔ばかりしよって。じゃあな」

ばたん

キキョウ「なーんか感じ悪いやつだったなー丸腰相手なら斬ってもよかったかも」
ナギット「斬るな」
トラオレ「やれやれ。虫の居所が悪かったのか」
キキョウ「てかさーよーまって何?」
トラオレ「妖魔というのはこの街の噂だ。世界樹の麓には神の国の入口があるとの説がある、そのせいなのか……街で精霊や妖魔といった存在を見たっていう話がたまに聞こえてくるんだ。ホントかどうかわからんがな」
クロ「よくある都市伝説ですね」
トラオレ「ホントかどうかわからんがな、だいたい世界樹の麓に何があるのか自体わかってないワケだし……って、話が長くなってすまないな。報酬を貰いにきたんだろ?受け取ってくれ」

800エン、ネクタル、命のベルトを受け取った!

アオニ「……一桁足りない気がする」
クロ「しーっ!しーっ!」
トラオレ「そうだ。砦を作ったならついでにメンバーもその砦に派遣した方がいいぞ。砦にいるメンバーは街にいるメンバーより成長が早いんだ、なのでもしパーティ外のメンバーがいるなら街で遊ばせておくより砦に派遣した方がずっといいぞ」
ナギット「他のメンバー……って、いましたっけ?」
アオニ「んーまあボチボチ増やしていくよ」
トラオレ「ともかく今回は砦の建設とヌシの退治お疲れさん。よくやってくれたよ。今日のところはここでの仕事はないから……黄金の麦酒場でクエストを受けるなり不思議のダンジョンを探索するなりしてくれ」

一行はクエストを受けてから船着場へ

アオニ「うん?あれは……イルコフとナディカ?」
ナギット「なにやら言い争っている様子ですね」
ナディカ「どうしてもダメですか……?」
イルコフ「ダメだ!ダメだ!お前みたいな小娘連れて行けるワケなかろうが!不思議のダンジョンをナメすぎだ!」
ナディカ「絶対に迷惑かけません!だから!」
イルコフ「それがわかってないというのだ!!」

その時!草むらから一匹の野うさぎが飛び出してきた!

キキョウ「あ、うさ」

バーーーン!

アオニ「わあお!?」
クロ「おお〜一撃で急所に当てましたね。さすが街でナンバーツーギルドのガンナー、正確な射撃です」

撃たれたウサギは横たわり、動かなくなる。

ナディカ「ああっ!」
イルコフ「可哀想だと思っているのか?その考えが間違っているというのだ。それではダンジョンでは生きてゆけん。どれ、今晩はウサギ鍋にでもするか」
キキョウ「え、いいなぁ……」
ナギット「ヨダレを吹け」

イルコフがウサギに近づこうとした時、ナディカが立ちふさがる。

イルコフ「なんだ?」
ナディカ「わかりました。取材は諦めます。その代わり、私にその子をください。弔ってあげたいんです」
イルコフ「……フンッ、わかった。二度と付きまとうんじゃないぞ」
クロ「あらアッサリ」
アオニ「ナディカ、ちょっと大丈」

ナディカが野ウサギに近づいた時、突然野うさぎが元気に跳ね始めた!

ナギット「え?」
クロ「なんですか?即興のマジック?」
ナディカ「パレッテさん、見てたんだ。今のはちょっとした目くらまし、ビックリした?」
ナギット「ビックリしたもなにも奇跡の力的なものかと思いましたよ」
ナディカ「イルコフさんが銃を構えたんでついとっさにね。でも、あの子が死ななくてよかった」
キキョウ「ウサギ鍋……」
ナギット「黙ってろ」
ナディカ「今日は取材失敗しちゃった。また他の冒険者さんをあたらないと……実は私ね、なんとしてでも世界樹の麓まで行きたいんだ」
アオニ「なんで?」
ナディカ「ナイショ!じゃね」

ナディカは立ち去った。

クロ「ミステリアスな少女もまたいいですなぁ……」
ナギット「アナタはそこしか見てないんですね」
キキョウ「にしても、今のは何だったんだろう。ナディカは目くらましって言ってたけど」

クエストをこなして街に帰った翌日。
一行は街でエミルとネッドに会った。

エミル「やあ、パレッテ達。知り合えて早々でナンだけど、僕達今日からしばらくここを留守にするよ♪」
ネッド「王に報告するためにカナハルタに帰らねばならんのだ……ゴホゴホ……」
クロ「貴方はまず病院に行ってくださいよ」
エミル「参っちゃうよね。父上に報告なんてホント面倒くさいんだよな」
ネッド「何言ってるんですか……ゴホゴホ……今回の世界樹の調査も報告が条件でお許しが出ているんじゃないですか……」
エミル「そうなんだけどさぁ……うーん、何を報告しよう。面倒だな……今回はまあ、精霊の存在でも話しておくか」
ネッド「ええっ!?」
キキョウ「精霊!?マジでいんの!?」
ネッド「わ、若っ!?せ、精霊って……!?」
エミル「うーん……どうだろうね……見たような見てないような……」
ネッド「な、なんですかぁ!?そのいい加減な……」
アオニ「……王族ってアタシでもなれるような気がしてきた」
クロ「テキトーな報告して済むなら誰でもなれますよ」
ナギット「おい」
キキョウ「むむっ!妙な気配」

地震だ!

アオニ「わあああお!?」
キキョウ「今日もまた盛大に揺れてるなー」
クロ「やっぱりキキョウは動じませんね。さすがです」
ナギット「どこに隠れてるんですか」
クロ「噴水の中ですが何か!」
キキョウ「びっしょびしょじゃん」
ネッド「……おさまったか……よく揺れますな……」
エミル「街の人達は慣れっこみたいで平然としているけどね。でも、嫌な感じなんだよなぁ……」
キキョウ「ふつー頻繁に地震があったら嫌だもんな。こんなにあったらビックリしちまうよ」
エミル「その割には君がこの中で一番落ち着いてるけどね♪まあいいや。ではパレッテ。僕達は行くから♪」
ネッド「しばらくしたらまた帰ってくる……頑張れよ……ゲホゲホ……」
エミル「じゃあ!」

エミルたちと別れを告げ、クエスト報告をした後、一行は仕事を求めて冒険者ギルドに足を踏み入れた。

アオニ「こんにち……あれ?」
クロ「なにやら怒鳴り声が……」
キキョウ「イルコフだ」
イルコフ「だーかーらー!トラオレ!何度も言うてるだろうが!ありゃ絶対に妖魔の仕業だ!」
トラオレ「まあまあそう興奮なさらずに。とんだ災難ですが……とりあえず銃は誰かから借りればいいんじゃないですか?」
イルコフ「そんなことできるかあ!ワシァ愛用の銃しか持たーーーん!!」
トラオレ「まあまあまあまあ……おっ、パレッテ達。来てたのか」
アオニ「うーんと、取り込み中なら出直すけど」
トラオレ「いや、ちょっと聞いてくれ。イルコフさんの銃がまた盗まれたんだ」
クロ「またですか?不用心ですねぇ」
イルコフ「うるさい!あれはワシの最後の銃だったんだぞ!」
トラオレ「最後の銃って……イルコフさん今も銃を持ってますよ?」
イルコフ「これは模型!」
アオニ「模型」
クロ「模型」
ナギット「もけい」
キキョウ「遠回しにグラフィックにツッコミ入れちゃったな」
アオニ「メタァイ」
イルコフ「何か持ってないと落ち着かんだけだ!とにかくこのままでは不思議のダンジョンには行けん!」
トラオレ「がっちり管理しているにも関わらず連続で盗まれているんですよね?ホント奇妙な話ですが……」
アオニ「イルコフって間違った事は言ってないけど言い方とか表情とかそういうので誤解されやすそうだから逆恨みされてるんじゃない?」
クロ「あーありがちですねぇそういう話。ツンデレのツンが強調されすぎて周りから嫌に思われてるって感じの」
キキョウ「認めたくないから妖魔のせいにしてるだけどってコトか」
ナギット「同情するがちょっと自分のせいというか……」
イルコフ「言っておくか、そこらのガンナーから銃を借りてお前達1人ずつ脳天をぶち抜くことぐらいできるぞ」
アオニ「ごめんなさい」
クロ「すみません」
ナギット「……」
キキョウ「アイムソーリー」
イルコフ「全く……だから妖魔の仕業だと……」

「た、大変――――!!」

イルコフ「むっ!誰だ!?」
アオニ「あの子は前にアタシ達に仕事を押し付……じゃなくて頼んだ女ガンナー!」
クロ「こんにちはお久しぶりです今日はお時間ありますか?」
ナギット「流暢にナンパしないでください!」
トラオレ「どうした?そんなに慌てて」
女ガンナー「か、帰って来たの!あの魔物が!第3迷宮に!龍獣エタラガムラが!」
トラオレ「なんだとっ!?」
イルコフ「ヤツなら姿を消したはずだろう!」
女ガンナー「確かにエタラガムラは数年前、第3迷宮の縄張りから移動した。繁殖のためか他に何かあったのか理由はわからない。そのお陰で私達も第4迷宮への足がかりが出来たんだけど……」
トラオレ「急に戻って来たってことか」
イルコフ「危険だな。第3迷宮には砦もある」
女ガンナー「そうなの!現場で立ち向かったけど凶暴すぎて手に追えなくて……!イルコフさん!お願い!イルコフさんの力でなんとかしてくれない!?」
トラオレ「イルコフさんは無理だ。今は銃がない」
女ガンナー「えええ〜!?そんなーーっ!?じゃあ誰が……!」
アオニ「はいはいはいはいはいはいはいはい!!
クロ「ルックミー!!
ナギット「なんという自己主張」
キキョウ「クロの場合は9割下心だろうけど」
女ガンナー「……君達でもいいけど。どう?」
トラオレ「パレッテ達が?バカ言え。知って通りまだ新人だ」
イルコフ「その通りだ。こいつらには荷が重すぎるわ」
女ガンナー「でもだったらどうすれば……私の実力じゃあ到底叶わないし……エミル達だって国に戻ったって聞いてるし……他の実力者も今は出払ってるし……」
イルコフ「があああ!ワシの銃さえあればっ!くそぅ!ガラクの親父に言ってすぐにでも銃を作らせるわ!」
アオニ「そんなすぐには無理なんじゃ……あーあ行っちゃった」
クロ「こちらの意見はガン無視ですもんね。まあ野郎なのでいいですが」
キキョウ「クロって本当に分かりやすい性格してるよなあ」
トラオレ「相変わらず無茶なことを……君が言うように、銃が出来るまではだいぶかかるぞ」
キキョウ「だろーなー」
女ガンナー「ねえパレッテさん。お願い!今は君達しかいないの。行ってくれないかな……」
アオニ「行くに決まってるじゃないか!ここまで来て行かないなんて世間が許してもアタシ自身が許さないもん!」
クロ「美人の頼みとあれば断る理由がありません!」
女ガンナー「ホント!?受けてくれるの!!!?」
ナギット「ここまで来ると矢とか鉄砲が降ってこない限り思い留まらないでしょうね」
キキョウ「ヒートアップしまくってるからな!」
女ガンナー「ありがとう!!龍獣エタラガムラは今はダンジョンの最深部にいるはず!本当にありがとう!!」
トラオレ「仕方がないな……しかし、危険な仕事だ。くれぐれも無理はするんじゃないぞ」

ギルドカードが解禁されました!

アオニ「このタイミングで!?
クロ「謎タイミングですなあ」
ナギット「え、ギルドカードって?」
アオニ「他のギルドとの交流に使う名刺みたいなものだよ。登録した冒険者や自分のパーティ、メッセージなんかを書いて他のギルドに紹介できるの」
クロ「ばっさり言ってしまえばすれ違い通信機能ですね」
キキョウ「おっけー理解した」

第3迷宮、龍風峠

アオニ「砦を建てるよ!」
キキョウ「おっけー!」
クロ「まだまだ豊富には程遠いですがクエスト等でお金も貯まってきましたし、自腹で砦を建てられるようになってよかったですね。毎度毎度トラオレにお金をせびるのも気が引けますし」
ナギット「せびってないでしょ1回も……」
アオニ「砦建てた!」
キキョウ「やったぜ!」
アオニ「これで蟻の巣状は固定されたワケだし、ちょっとは安心して……」

赤獅子がこっちを見ている

赤獅子「じろり」
アオニ「…………」
クロ「…………」
ナギット「前の迷宮にいた獅子の強化版でしょうね」
キキョウ「つよそー」
アオニ「やめてよ!そこで歴代冒険者の古傷えぐるの!第6迷宮の悪夢を思い出させないで!!」
クロ「フカ子落ち着いて!寝起きで殺気だってないだけマシですよ!」
ナギット「また前の迷宮か……」
キキョウ「修羅場だなー……っておおーっ!?この結晶床赤いぞ!?レアものか!?」
アオニ「ちーがーいーまーすーこの結晶床は展開床!リーダーが踏むとターン消費して隊列を部屋のなかに展開できる優れものなんだよ!」
キキョウ「え?どこが便利なんだ?」
クロ「ほら、通路を通って部屋に入るとすぐ魔物と遭遇して動けなくなってしまい、部屋の入り口で立ち往生してしまうことってありますよね?その時この展開床で隊列展開を行えば、他のメンバーもすぐに部屋の中に入ることができるので、ひとりが魔物にフルボッコにされる心配がなくなるのですよ」
キキョウ「なーるほどーそりゃあ便利だ!」
ナギット「しかし、自分が踏む前に魔物に踏まれたら意味がないのでは?」

展開床の上にさっきの赤獅子が立っている

クロ「……」
アオニ「……そんなときもある」
キキョウ「ナギットさん今ッス!その無駄にでかい盾で殴り飛ばすッス!」
ナギット「まだシールドバニッシュ覚えてないから無理。つーか覚える気ねーし」

ちなみに、展開床を壊すと味方全員のTPが回復するぞ!
しばらく順調に進むパレッテ一行の前に虫が立ち塞がる

ヤンマ&ハチ「通路外から失礼致します」
アオニ「わあぉ強襲!」
クロ「ここは砦を建てない限り壁がありませんから、飛行能力を持つ魔物は通路外からやってきてしまうんですよね。こんな狭い場所で囲まれることだけは避けたいものです」
アオニ「いざとなったら君の雷撃の印術に頼るよ」
クロ「お任せあれ」
キキョウ「俺たちは誰も飛べないのにアイツだけ飛んでてズルいズルい!俺も飛びたい!」
ナギット「アホか」
アオニ「翼着けたら飛べるんじゃない?」
キキョウ「よーし!いっちょ空中戦といきまふか!アイキャンフラーイ!」
クロ「足元で超至近距離の火球の印術を使えば爆風の衝撃で飛べるかもしれませんよ。試してみます?滞空時間は恐らく10秒にも満たないと思われますが」
ナギット「やめろ」

君達は異様な気配を感じる。敵が強くなったようだ。

キキョウ「んん?なんだ?」
アオニ「ああー……やっぱりきたか。魔物の強化」
ナギット「強化?」
クロ「深い階に潜れば潜るほど敵が強くなってしまう非常に厄介な現象です。ここから先の敵は攻撃力防御力共に上昇していますので気を付けてくださいね」
キキョウ「うええ……嫌なシステム」
ナギット「システムゆーな」
アオニ「これくらいでへこたれてたら龍獣は倒せないよ。さー潜った潜った!」
キキョウ「いや、潜るのはいいんだけどさ、ちょーっと気になることがあるんだよな」
アオニ「なに?」

がっしょんがっしょんがっしょんがっしょん

アオニ「緋緋色の剣兵」
キキョウ「どう考えても自然発生しない全身金属系の魔物がいるんだけど」
クロ「ああっ!とうとう触れてしまいましたね!第2迷宮からスルーしたまま進めようと思っていたのに!」
ナギット「……どう見ても人工物ですよねあれ」
クロ「はい。でもあれでも世界樹産の魔物なんですよ、見るからに人の手が入ってそうな作りですが」
キキョウ「なんでそんなもんが不思議のダンジョンにあるんだよ」
アオニ「さあね……そもそも、世界樹は時々アタシ達の予想を越えたとんでもないものをぶちこんでくるからいちいち驚いてはいけないってアスラーガで学んだ」
クロ「アスラーガ初のDOEが全身金属の人工物らしき魔物で、フカ子は萎えまくってましたからねえ」
ナギット「なんなんだアスラーガ……」
キキョウ「てかDOEって何」

B8F
魔物の邪悪な力が更に強くなっていることを君達は感じる。今までのようにはいかない。気をつけたまえ。

アオニ「えっ」
キキョウ「もう一段階あるんじゃん!」
アオニ「あっれー?アスラーガではこんな序盤のダンジョンから魔物の強さ第3段階まであったっけー?」
ナギット「僕に聞かれましても」
クロ「まあまあ……何にせよ警戒して進むことが一番ですし、より一層気を引き締めていきまきょう」
キキョウ「ナギットさんナギットさん!この先から異様な気配を感じるッス!」
アオニ「つまりボスだね」
クロ「ですね」

案の定、龍獣エタラガムラが現れた!

キキョウ「想像通りの禍々しいデザインだな!」
アオニ「なんかオーラ纏ってるんだけど、初っぱなから大技来るの?」
クロ「いつも通り私が電撃の印術で麻痺にするのでその間に隊列を整えてくださいな」
アオニ「てかなんでアタシだけみんなよりボスとの距離あるの?バグ?」
キキョウ「駆け抜けの印石使えばいいだけの話じゃ?」
アオニ「まーそうだけどさぁー」

龍獣エタラガムラは水鉄砲を使った!
ナギットはアオニを庇った!

アオニ「みずてっぽうというよりハイドロポンプみたいなエフェクトじゃないか!前方3マス攻撃だし!」
キキョウ「ナギットさん大丈夫ッスか!?びしょ濡れッスよ!?」
ナギット「メディカがあれば問題ねーよ。唐突に氷属性の攻撃しやがって、まだ3色ガードに手ぇ着けてねぇんだぞ」
キキョウ「パリング目当てで背水の守護を取ったのが仇になったッスね」
クロ「私は状況を見て電撃の印術をしていきますね。まあボスが何度も麻痺になるとは思いませんが……」
アオニ「距離とるのはいいけどナギットのディバイドが届かないんだから自分の身は自分で守ってよね?」
クロ「もちろん」
アオニ「っておっしゃあ!リンクフレイム入ったぁ!」
キキョウ「神速剣で面白いようにリンクフレイムの追加ダメージが入る!楽しい!」
ナギット「やることなさそうなので毒の水葉でも投げておきますね……あ、1発で入った」
クロ「状態異常耐性はガバガバのようで安心しました。これで私も気兼ねなく火球の印術が撃てますよ」
キキョウ「戦闘始まってから俺、一撃も喰らってないのすごくない!?」
ナギット「俺が挑発してるからだろ」
キキョウ「ナギットさんサンキューッス!!」
クロ「仲が良さそうで何より……おっと、倒しましたね」
アオニ「道中の軍隊バチの毒の方が強かったね」
クロ「ですね。実は我々が想像している以上に楽なのかもしれませんよ?オーベルフェの世界樹は」
アオニ「そんなことないって言いたいんだけどなぁ」




【次回予告】
クロ「その神々しさ故に多くの冒険者が集まるオーベルフェの世界樹。しかし、誰が言ったか禁断の言葉“結局、誰が一番可愛いんだ?”により、女冒険者達に火がついた!」
ナギット「アナタもなんですか!?」
クロ「なお私は、女の子は誰だって可愛いと思いますが、強いて言えば胸の大きい子がよかったりしますがまあなくても可愛らしさに変わりはないと言いますかええ!」
ナギット「結局何でもいいんじゃないですか?それ」
クロ「私の制止も聞く耳持たず、戦いへと身を投じていく乙女達……男達もししょー派、メディ子派、ガン子派、プリンセス派等々に別れてしまい、不毛な言い争いを始める毎日……ああっ!冒険者乙女達が可愛らしいせいで傷付いてしまうなんて!可愛さが争いを引き起こすなど、あってはならないといのに!」
ナギット「争わなければいいと思います」
クロ「引くに引けない戦いというものはいつでもどこでもあるんですよ。例えば、スクール水着は貧乳に着せるか巨乳に着せるかという議題1つでも罵詈雑言じみた様々な議論が飛び交うのですから。ちなみに、私は断然巨乳派ですがまあ……ぐべえっ」
アオニ「次回!修羅冒険者アオニちゃん、第3話!“乙女の祈りで人類滅亡”さようならクロ……君のことは忘れないよ……」
ナギット「アオニさんって、クロさんのことをどう思っているのですか……?」
アオニ「………………」
ナギット「ちょっ!?沈黙を押し通さないでくださいよ!気になるから!」
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