このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

冒険者珍道中

アオニ「うーんうーん……ハッ!!」

いつの間にか気絶していた一行が目覚めた場所は、街の湖畔だった。

クロ「あれ?ここは、オーベルフェの街……?」
ナギット「どうやら助かったようですね」
キキョウ「……」
アオニ「大変キキョウが折れた刀抱きしめて起き上がらない」
ナギット「しばらく放っておいてください。後で起こしますんで、それよりも……」
ダンサー風の男「よおっ、気がついたか?」
クロ「さっきの方ですね」
アオニ「状況から察するに君達が助けてくれたみたいだけど……」
ナギット「他の仲間もいるようだが、どうして妖魔族が俺達を?」
ダンサー風の男「勘違いするな。お前らのことなんかどうでもよかった。お前らは俺の白蛇を殺した。あの女と共にな」
キキョウ「…………」
アオニ「ビクッ。白蛇って……あの時ナディカを丸呑みしたアレ……?君のペットだったの……?」
クロ「我々に濡れ衣が着せられたはたまったものじゃないので言っておきますが、白蛇を殺したのはキキョウですよ」
ナギット「あっさり仲間を売りましたが僕でもそう言っていたと思うので文句はありません。殺ったのはコイツです」
キキョウ「…………」
ダンサー風の男「そんなことぐらい知ってる。命令がなきゃお前らなんて助けてないからな……それより!」
アオニ「なにさ」
ダンサー風の男「ああもう!お前らに白障壁をもろに見られてしまった!くそう!」
「とっさのことだ。仕方がないさ」
「とはいえまあ、しくじったよな」
「オキテ破りだよなぁ……」
「どうしよ族長に怒られる……」
ナギット「?」
ダンサー風の男「フン、言いたいこと言いやがって。とにかく若には黙ってろよな」
アオニ「若?その呼び方どこかで……」
ダンサー風の男「あと……あの女だ」
ナギット「あの女……もしかして、ナディカの事ですか?」
ダンサー風の男「ああ。世界樹の麓がまさか蜃気楼だったとは、俺も随分驚いたが……それは、あの妖魔族の女も同じだったハズだ。あの女が次にどうするかが気になるところだな……」
アオニ「やっぱりナディカが妖魔族だったんだ……でもじゃあ君達は何?」
ダンサー風の男「俺達は精霊族だ。周りにいる奴らもな」
クロ「なんと!」
ナギット「ああ……やっぱりそうなるのか……」
アオニ「うーむ外見からして信じがたいけど、ナディカが妖魔族って考えたら納得……」

「そうなんだよね」

アオニ「え?」
ダンサー風の男「わ、若っ!」

振り向いた先には、エミルとネッドがいた。

アオニ&クロ&ナギット『え!?』
エミル「ビクトル、ご苦労さん♪ここからは僕が説明するよ」
ダンサー風の男「は、はいっ!」
アオニ「え、ええっと……エミル?精霊族達の若って、君……?」
エミル「うん。パレッテごめん、嘘ついてた。僕達がカナハルタ王国から来たというのは嘘なんだよ。本当は……僕やネッドは精霊族」
アオニ&クロ&ナギット『ナーンダーーッテェェェェェ!!?』
ネッド「誰も世界樹に近寄らせてはいけないという神々からの言い伝え……これを我ら精霊族は太古の昔よりずっと守ってきていた……ビクトル達が冒険者に妨害を加えていたのもそのためだ……」
ナギット「じゃあ前の瓦礫も、イルコフさんの銃を盗んだのも、冒険者に危害を加えていたのも神々からの言い伝えを守るため……?」
アオニ「あやゆくアタシ、瓦礫で頭部強打して死ぬ所だったんだけど!」
ビクトル「そんなこと言われてもこっちも仕事なんだよ!」
エミル「ま、実際には神々がどんな存在なのか僕達もわからないし、世界樹の麓にも行ったことがないんだ。だから、世界樹の麓についてビクトルから聞いた時は驚いたよ」
ナギット「そんな曖昧な存在のために俺たちは……」
ネッド「妖魔族の女、ナディカ。その目的は、神々への復讐だ」
クロ「そりゃまた物騒な話ですねぇ。一体何があったのやら」
ネッド「今回、妖魔がオーベルフェに入ったとの情報を聞き……それを止めるために私と若はこの街へとやって来たのだ……」
ビクトル「なんとかしたかったけど、あの女はお前達にベッタリだったからな……人間の前では能力を晒してはいけないオキテもあるし、そうこうしてる内にお前達が世界樹まで到達しちゃうからこっちも必死だったぜ」
アオニ「あー……そういう事だったのかー……なんか、ゴメンね」
ビクトル「ゴメンで済んだらサツはいらねぇよ」
アオニ「よろしい、ならば戦争だ」
ナギット「落ち着いてくださいよアオニ!どうしてこう敵意むき出しにしてるんですか!」
クロ「一度殺されかけてますからねぇ。戦うというのなら加勢しますよ。天雷の大印術でいいですか?」
ナギット「すんなよ!」
エミル「今は内輪揉めしてる場合じゃないでしょー?今回は例外だらけだったんだから、ビクトル達に世界樹の麓へ行ってもらったのも、人間に能力を見せたのもさ」
ビクトル「ええっ!?白障壁晒しちゃったのバレてんの!?」
ネッド「当たり前だ。オキテ破りだからな……族長には帰って報告するからそのつもりでいろよ」
アオニ「ごしゅーしょーさまー」ニヤニヤ
ビクトル「畜生……!ちくしょう!よりによってこんな奴らのために……!!」
ナギット「可哀想になってきた……」
エミル「それにしても、ここから見えてた世界樹が実は蜃気楼だったとはね。驚きだよ」
アオニ「うっ……そういやそうだった。ナディカの件で気が動転して忘れてたけど、世界樹がないって事実には変わらないんだよね……うぐぐ……」
クロ「もうそこのダンサー野郎をいたぶって憂さ晴らしするしかありませんねぇ」
ビクトル「オイコラ」
エミル「それはともかく、これから僕達は族長へ報告しに里へ帰らなくちゃいけない。パレッテもギルドに戻ってトラオレさん達に事の顛末を話すといいんじゃないかな」
ナギット「ええ。そうさせてもらいますよ」
ネッド「ただし、ナディカには気をつけられよ……妖魔であると知られた以上、これからもお主達の命を狙ってくると思われる……街からもなるべく離れた方がいいぞ……」
エミル「じゃあねパレッテ♪」
アオニ「うん。じゃあねエミル。お互い気をつけて」
エミル「もっちろん♪」
アオニ「君は月のない夜には気をつけることだな」
ビクトル「なんだよこの差」

街の広場まで戻って来ると、トラオレやアントニカ、他の冒険者達がすでに待っていた。
世界樹へのアタックが成功したのかどうか、気になって仕方がなかったのだろう。

「で?どうだったの?世界樹!?」
アオニ「ああ、いや、その……」
ナギット「ここは正直に話すべきでしょう。誤魔化したっていい事なんてありませんよ」
アオニ「そうだよねぇ……実は……」

一行は、ナディカが妖魔族だったこと、エミル達が精霊族だったこと。
そして、世界樹は蜃気楼だったことを包み隠さず全て話した。

「ウッソー!蜃気楼だったなんて!?」
「ええーガッカリ……」
クロ「ああ……そう気を落とさないでください美しい方々……せめて私が慰め」
アオニ「見よう見まねシールドスマイト」
クロ「ぎゃん!!」
キキョウ「クロは相変わらずコレだなー」
ナギット「無理矢理叩き起こしてやったが、お前もう大丈夫なのか?」
キキョウ「はいッス。ちょっと気絶したらちゃんと現実飲み込めたッス、ありがとうッスナギットさん」
ナギット「そりゃよかった」
「まあ、世界樹が蜃気楼でもさ、そこに辿り着いた事がすごいっていうのは変わりないじゃん!」
「すごーい!パレッテすごーい!」
アオニ「ああ、うん。ありがと……アハハ……」
クロ「フカ子」
アオニ「うん大丈夫、もう大丈夫だよ、クロ」
アントニカ「さあ行くぞ!今夜は祝杯だー!」
ナギット「話聞いてたんですかアナタ。俺達は妖魔族に命を」
おおーーーーーー!!
ナギット「えええ……」
キキョウ「もう止められないッスね!ワクワク」
アオニ「この流れは読めてたさ!さーあ!今はとにかく祝杯だぁーーー!!」
クロ「美人のお酌でしたら喜んで!」
ナギット「……ダメだこいつら……」

例に及んで黄金の麦酒場で祝杯をあげることなり……その席で話を聞きつけた者達が起点となりまた別の者へと伝わり……世界樹到達という歴史的ニュースはあっという間に街全体へと広まるのであった。

次の朝

コヌア「おはようございます!パレッテさん!」
アオニ「んあーおはよー」
クロ「おはようございますコヌアさん。今日も素敵な朝ですねぇ」
コヌア「聞きましたよ!世界樹まで到達したんですって!?本当にすごいです!」
アオニ「えっへん!まあね!」
コヌア「あれ?そういえばナディカちゃんは?今日は一緒じゃないんですね」
クロ「……」
コヌア「……?ともかく、本当におめでとうございます!街では今朝からみんなもバタバタしてて忙しそうで……世界樹到達を記念してお祝いを考えているみたいですよ?お祭りとかやるんでしょうかね!」
アオニ「おお!お祭り!お祭り大好き!!」
ナギット「ふあ……朝から騒がしいですね皆さん……」
アオニ「やっほーナギットおはよー。君にしては遅かったねぇ」
ナギット「おはようございます……いや、お恥ずかしい話、いつ妖魔が攻めてくるかと思うと中々寝付けなくて……結局少し寝過ごしてしまったんです。一番警戒しておいてこんな様じゃあいけませんね」
クロ「あんな事があったんですから警戒するのも無理ありませんよ。ところで、キキョウは?」
ナギット「クロ達も知らないんですか?アイツ今朝からいなくて……」
アオニ「え、まさか、妖魔……?」
ナギット「なっ!?」
キキョウ「ただいまー!!」
アオニ「うおあっ!?びっくりした!」
ナギット「テメェ!勝手にどこ出歩いてたんだよ!」
キキョウ「おおっ!?ナギットさんどうしてそこまで怒ってるんスか?俺は昨日飲み会抜け出してガラク工房行って、折れた刀を直してもらってただけッスよ!?」
ナギット「え?は?かた、な……?」
クロ「前回、じゃなくて昨日ぽっきり折られた刀でしたよね?直ったんですか?」
キキョウ「いやーやっぱりくっつけて元に戻すのは無理だーって言われてさー。折れた刀を打ち直してもらうことにした!しばらくしたら短刀になって帰ってくると思う!」
アオニ「そっか。よかったじゃん」
キキョウ「いやー心配かけてゴメンなー」
ナギット「……まあ、よかったな」
キキョウ「アレアレェ?ナギットさんってば心配しちゃった?俺が妖魔族に襲われたんじゃないかって心配しちゃってた?ねえねえねえねえねえ??」
ナギット「うっざわボケ!!」
キキョウ「ギャフン!アッパー!」
アオニ「わーナギット照れてるーかわいい〜」
クロ「なんだかんだ言いつつキキョウが大切なんですねぇ」
ナギット「言わなくていいから!」

刀の件も解決した所で一行は冒険者ギルドへ。

アントニカ「やっ!昨日はお疲れさん。お互いしこたま騒いだな」
アオニ「やっほーアントニカー昨日は激戦だったねー」
アントニカ「次する時は絶対負けないからな!」
クロ「何の話ですか?」
キキョウ「昨日アオニとアントニカの飲み比べ大会があったんだよ。俺は途中で抜けちゃったから勝負の結果は見てないんだけど、やっぱアオニが勝ったんだ」
クロ「な、そんな……美女と美女の酒飲み対決があっただなんて……!嗚呼……私は今なんということを……!」
ナギット「飲めない酒を飲んで真っ先に寝るからそういうことになるんですよ」
クロ「ぐぬぬ」
トラオレ「まあ歴史的な快挙なワケだしみんながはしゃぐのも無理ないさ」
キキョウ「でも世界樹はなかっ」
ナギット「黙ってろ」
キキョウ「あい」
トラオレ「さあ、第7迷宮の報酬だ。受け取ってくれ」

5000エン、聖なる守護の巻物、白の水薬を受け取った。

アオニ「どもども」
キキョウ「そういやさ、お祭りの準備があるって聞いたけど?アントニカ達は知ってるのか?」
アントニカ「ああ!街でも結構盛り上がってるぞ!」
トラオレ「ていうか、みんな商魂たくましいんだよな。世界樹到達記念まんじゅうとか、世界樹の麓そばとか…」
ナギット「完全に便乗商売じゃないですか」
クロ「観光地がよくやる手ですよね」
キキョウ「ちゃっかりしてるなーいっそのこと、俺達が到達したんだから分け前ぐらいよこせーってゆすりに行く?多分何人かは素直に出してくれるぞ?」
アオニ「やめてよクロの女癖のせいでただでさえ変な噂立ってるのに」
クロ「えへ」
ナギット「エヘじゃねぇ」
アントニカ「これから世界樹に挑もうとする冒険者はまだまだ沢山いる。私はトラオレと協力して世界樹までのルートをより確実にするつもりだ。昨日の宴で第7迷宮の情報もバッチリ教えてもらったしな!」
ナギット「いつの間に……」
アオニ「エヘ」
キキョウ「知ってた」
アントニカ「で?アンタ達はこれからどうするんだ?」
トラオレ「とりあえず、これで目標は達成したんだよな。この街を離れるにしても今すぐというワケじゃないのなら……いつものようにクエストを手伝ってくれたりすると助かる」
アオニ「うん、ま、そだね」
クロ「目標は達成しましたけど問題は解決していませんからね」
トラオレ「ああ、ナディカにだけは気をつけた方がいい。いつ襲ってくるかわからないしな」
キキョウ「じゃーいつも通りクエストだなー」
アントニカ「人手が足りなくってさ、こなしてくれると助かるよ」
アオニ「久しぶりのクエスト期間だね。ダンジョン探索が終わったからってのんびりしてるワケにはいかないもん」
ナギット「街に長居して襲撃を受ける可能性もありますし……」
キキョウ「ナギットさんそれシーッス!」

クエストのためダンジョンへ挑み、特に問題なく仕事をこなしてから湖の湖畔へ戻ってきた。

アオニ「ナディカは現れなかったね」
ナギット「現れなかったとはいえ、まだまだ油断は許されない状況ですよね……」
キキョウ「…………」
クロ「どうかしましたか?」
キキョウ「あのさ、エミル達はこの街を離れろって言ってたじゃん。結局、俺達、これからどうするか具体的に決めてないだろ?だったらさ、出てくのもありなんじゃないか?」
アオニ「う……ま、そうだよ、ね。いつまでも街の人達に甘えているワケにもいかないし」
ナギット「まあ、世界樹のダンジョンを踏破してしまったんですし、そういう選択もありますね」
クロ「しかし、出て行くとしてもどこへ?ナディカに狙われているという危険があるのですから行き先は慎重に選ばなければなりませんよ」
キキョウ「じゃあ俺達の故郷に帰省するのはナシだな!みんなを巻き込むワケにはいかない!」
ナギット「ええ。クソ親……じゃなくて、父も病気の身ですしあまり無理させたくはありません」
キキョウ「アオニのトコは?タルシスだっけ?」
アオニ「実際はタルシスより北にある帝国だけど……ま、それはいいとして……タルシスならいいんじゃない?」
ナギット「いやにあっさりしてますね……もしナディカが襲撃してきても問題ないという事ですか?」
アオニ「うん」
ナギット「即答!?」
アオニ「だってセフリムの宿には……ねえ?」
クロ「美しいお方ですが……まあ」
ナギット「?」
キキョウ「?」
アオニ「あの人がいればタルシスは一生安泰だからナディカが来ても大丈夫だよきっと。パレットは解散しちゃったみたいだけど凄腕の冒険者はここに負けないぐらいいっぱいいるんだし、オーベルフェよりは安全だって言い切れる」
クロ「しかし、問題はここからタルシスまでかなりの距離がある事です。飛行艇や馬車を乗り継いで来ましたが、それでも半月以上はかかってしまうんですよねぇ」
キキョウ「そりゃあちと長いなぁ」
ナギット「移動中に狙われたらひとたまりもありませんね……とは言っても、それに怯えていてはオーベルフェから出られなくなってしまいますし、行動は早い方がいいでしょう」
キキョウ「じゃあさ、ギルドに行ってトラオレに報告しに行くか。なるべく早くここを発つって」
アオニ「すぐじゃないの?」
キキョウ「だって俺の刀を預けたままだもん」
クロ「それなら出られませんねぇ」
アオニ「しょーがないか!オーベルフェから出るまでお祭りムードを楽しんで、心残りがないようにしよう!本当はナディカに言いたいことあったけど、出くわす=死ぬって状況なんだし逃げるしかないか!」
クロ「そうですね」
ナギット「……しかし、今回の件は驚くことが多かったな。精霊と思っていたナディカが妖魔で、妖魔と思っていたビクトル達が精霊で……まるっきり逆だった」
アオニ「逆だったね。でもさ、不思議と後悔してないんだよね、何故か」
クロ「それは、フカ子が自分の正義に従って行動していたからじゃないですか?結果は残念でしたが、自分を信じて突き進めただけでもよかったのかもしれません」
アオニ「うん……だよね」
クロ「泣かないでくださいね?」
アオニ「な、泣かないよ!もうっ!」
キキョウ「む、逆……逆?」
ナギット「どうした?」
キキョウ「逆って、逆ってさ?逆なんだよな?」
ナギット「今度はどうした」
キキョウ「目に映っているものが全部逆だったとしたら……さ、俺達の目には今、何が見えてる?」
アオニ「何って、蜃気楼の世界樹だ、け……ど……?」
クロ「……湖にも、世界樹が映っていますね。まるで、本物のように……クッキリと」
ナギット「……おい、まさ、まさか……」

その時、世界樹が波紋のように歪み始めた。

アオニ「ああっ!?」
ナギット「な、今のは、何だ?」
キキョウ「一瞬!一瞬だけど歪んだぞ!世界樹が!」
クロ「湖面に映る世界樹はそのままでしたよ?しかも一瞬光ったような……」
キキョウ「あっ!また光った!」
アオニ「というか空間が歪んでなかった?バグ?」
ナギット「そんなワケないでしょう!」
アオニ「あっあっあっ!空間がどんどん歪んででででででででで」

なんと!世界樹が下に……そして湖中に映る世界樹が上に……!まるで天地がぐるっとひっくり返ったような世界に変わってしまった!

4人『わあーーーーーーーーーーお!!』
アオニ「せっせっせっせっ!世界樹!?こんな所に世界樹が!?」
ナギット「なんだよこの文章だけじゃ表現するのムズイ空間!」
クロ「見渡す限り透き通った水色の空間……といったところでしょうか?まるで湖の中に飛び込んだような、幻想的な場所ですね」
キキョウ「つまり摩訶不思議空間ッスよナギットさん!キレーッス!」
クロ「しかし、どうしてこの場所に引きずりこまれたんでしょう?第7迷宮を踏破したからでしょうか?」
アオニ「アタシたち全員が、世界樹も逆だったって気付いたからじゃない?本体は、湖面に映る方だったって気付いたから……!」
クロ「だから世界樹に呼ばれたんでしょうか、私達は」
キキョウ「世界樹って呼べんの?人を?」
アオニ「どうだろ?神秘の力を秘めていることに間違いはないから、あり得るっちゃあり得る話だね」
ナギット「あっ!あそこに入り口らしき場所があります!もしかするとダンジョンへの入り口なのかもしれません!」
キキョウ「真の世界樹へ続く道なんだろうな!ワクワクしてきた!」
アオニ「冒険は……アタシ達の冒険は……まだ終わってなかったんだ!世界樹だってある!アタシの夢はまだ終わってないよ!」
クロ「その通りですよフカ子!フカ子の伝説はこれから始まるんですから!」
ナギット「本物の世界樹に到達できてねぇなら、親父んトコには帰れねぇなあ」
キキョウ「そうッスね!」
アオニ「よし!行こう!最後のダンジョンへ!今度こそ!本物の!世界樹に行くんだ!」
クロ「はい!」
ナギット「もちろん!」
キキョウ「頑張るッス!」

第8迷宮、湖中の回廊

アオニ「わあ、すごい……」
クロ「外の空間のように、空のような、水のような、そんな壁面に囲まれた迷宮なんですね」
キキョウ「湖中ってだけあって魚の魔物が多いなぁ」
アオニ「さっきソードフィッシュにボコボコにされてたけど大丈夫だった?」
キキョウ「世界樹の葉がなきゃ即死だった」
ナギット「倒れてんじゃねぇか」
クロ「途端に魔物が丈夫になった気がするのは何故でしょうねぇ」
アオニ「なんとも言えないよ。もうちょっと進んで魔物素材手に入れてから一旦帰って装備を……」

ぴたっ

ナギット「アオニ?」
クロ「どうかしましたか?」
アオニ「………………」
キキョウ「む?この先の部屋に何かいるのかー?」
サウロポセイドン「のっしのっし」
クロ「…………」
ナギット「…………」
キキョウ「…………」
アオニ「……人間って本当に驚くと無言になるって聞いたことあるけど、まさか実際に体験することになるとは」
キキョウ「えっと、DOE?」
クロ「オーラがないので通常魔物かと。大きさは間違いなくDOEですが」
キキョウ「人類が喧嘩売っていいサイズじゃなくね……?」
アオニ「今までのボス戦だって規格外サイズだったでしょーが。まあこんなのが通常魔物として出てくるってだけでかなり異質な……」

サウロポセイドンはハードスタンプを使った!
周囲にいたアオニ、キキョウ、レッドフィッシュは部屋の奥にワープ!アイテムも落とした!

アオニ「ごふぅ」
キキョウ「ぐえ」
クロ「ああっ!?ちょ、フカ子ー!」
ナギット「ディバイド貫通したぞ今……」
アオニ「さ、さすがラスダンの魔物……一筋縄でいくわけない……か……」
キキョウ「メディカ飲んでなかったら即死だった」
レッドフィッシュ「ぴっちぴっち」
アオニ「さらっと変なの混じってるんだけど!」
キキョウ「敵味方区別しないのかー」

ボス並の巨大な魔物の恐ろしさを痛感したところで先に進む

アオニ「時々見かける二足歩行の魚ってさ、跳ねることしかできないのかな」
クロ「ジャンピングはカエルの特権だというのに、変な話ですよね」
キキョウ「変な話をしてるのはお前らだと思う」
ナギット「雑談しないで目の前の魔物に集中してください」
ノコギリ魚「うろうろ」
アオニ「なにあの魚始めて見る」
ナギット「ソードフィッシュとはまた違う種類のようですね、姿形は似ていますが」
キキョウ「じゃあまた単体攻撃して俺をザックザクに切り刻むやつされんの?」
クロ「うーむ、始めて見る魔物ですしなんとも……」

ノコギリ魚は鋸刃薙ぎを使った!
直線上にいたクロとキキョウにダメージ!

アオニ&ナギット『一直線攻撃!?』
クロ「ぎゃん!」
キキョウ「おうえ、壁から壁までが攻撃範囲とか聞いてなーい……」
ナギット「言ってねーし。飛んでくる方向が読みにくいから挑発よりディバイドの方がいいな」
アオニ「離れすぎないように気を付けてよねー?特にクロ」
クロ「わかってますとも」

B19Fに砦を建てるとアオニはあることに気づいた。

アオニ「……あれ」
キキョウ「どしたん?」
アオニ「砦によるとこの先さ、B21Fで行き止まりになってるの」
クロ「B21Fで終わりってことですか?ラスダンだからB40Fまであると思っていたのですが、案外早かったんですね」
アオニ「つまり、この先に世界樹があるってこと、だよね?」
ナギット「今度こそ、本物の世界樹のハズです、何事もなければ……よいのですが」
キキョウ「あーナディカなー世界樹に近づくために長期間芝居売ってた粘着性ある性分してるし、実はこっそり後からついてきたりしてな」
アオニ「うーむあり得る。この会話をこっそり聞いててビクッとしてるのかもしれない」
クロ「女性を疑うのは紳士としてあるまじき行為ですが、禍々しい美しさがあっても命を狙ってくるとなると、まあ」
ナギット「念のため聞きたいんですけど、この前はワケも分からないままナディカと交戦するハメになってましたが、次はちゃんと対峙できるんですか?」
アオニ「うん」
クロ「はい」
キキョウ「刀の仇ッス!」
ナギット「よかった安心した」
アオニ「あの演技力はアッパレだって称賛したいけど、こっちの命を狙うなら話は別だもの。抵抗がないってワケでもないけどさ、一番大切なのは自分の命なんだからいざとなったら自分の命を守れる行動をとれって、パレットのリーダーに教わったからね。それに、ナディカには言わなきゃいけないこともあるから逃げるワケにはいかないよ」
クロ「女性に手を上げるのはいささか抵抗がありますが、フカ子がそれを望むなら話は別です」
キキョウ「俺は純粋に刀折られた恨み!ナギットさんはどうッスか?」
ナギット「俺は……」
アオニ「まさかナギット、まだ踏ん切りがつかなくて……」
ナギット「よくも騙しやがったなあのアマという怒りしか混み上がってこないので大丈夫です」
アオニ「よし行こう」
クロ「ですね」
ナギット「人を騙しておいてヘラヘラしてんのが一番ムカつくんだよ俺は。アイツは許さん」
キキョウ「なるほどー」

一行はB21Fへ辿り着いた。

アオニ「おっしゃー!最下層!!どっからでもかかってこ」

一行はダンジョンを抜けた!

4人『ズコーーーーーーーーーーーーー
アオニ「ボス戦なし!?なに!?身構えたアタシ達がバカみたいじゃん!」
キキョウ「折角町に戻ってめっちゃ準備したのに……」
クロ「戦闘がないだけ楽だったと思いましょうよ。ホラ、出口が見えてきましたよ」
ナギット「外に出たな……そして、あれが……」

ダンジョンを抜けた一行は真の世界樹を目の当たりにする……
とうとう、世界樹の麓までやってきたのだ。

アオニ「これが、本物の、世界樹……!」
クロ「おお……なんて美しい……!タルシスやアスラーガの世界樹とはまた違った美しさがありますね!」
ナギット「世界樹……ここまで近くで見たのは始めてだ……すげぇ……」
キキョウ「迫力が違うなぁ!」
アオニ「よかった……諦めないで、よかった……」
クロ「ええ、本当に……」
キキョウ「うんうん……んえっ?根元になんかあるぞ?」
ナギット「根と根の間に隙間があるな……入り口みたいだ……」
アオニ「えっ?ってことは、世界樹の中に入れるってこと?神々の国にお邪魔できちゃうの?」
キキョウ「スゲー!突撃隣の神様ご飯しに行こうぜ!しゃもじ持って!」
クロ「どれくらい前の世代の人がわかるんですかそれは」
ナギット「……とりあえず、行ってみます?ダンジョンになっているようですし」
アオニ「そうだね!折角なんだし世界樹内のダンジョンも踏破して神様達にご褒美もらおう!」
9/17ページ