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冒険者珍道中

第7迷宮、畏怖の山

アオニ「高い」
キキョウ「キモい」
ナギット「不気味」
クロ「ここがラスダンでよろしいのでしょうか?」
アオニ「えーでもさーなんというかここ、ラスダンというよりラスダン越えた先に現れた阿鼻叫喚トラウマ多発地獄みたいなBGMしてるよ?」
ナギット「世界樹に辿り着いたとしてもダンジョンがないとは限らないのでは?」
クロ「確かにそうですね。アスラーガも世界樹の中にダンジョンがあったと聞きますし」
アオニ「それに、世界樹に到達してもナディカの件が解決するかどうかわからないんだし、最後だって思うには気が早いよ」
キキョウ「ホントどこ行ったんだろうなー妖魔族」
アオニ「ま、いない奴の話をするより今いるモノの話をしようか……例えばあちこちにある溶岩とか」
キキョウ「暑そう!」
ナギット「鎧が熱吸収して熱いっつーの……」
クロ「だから私は暑いのが苦手って言ったじゃないですかーもー」
アオニ「文句を言わない野郎供!踏んだらダメージだから踏まなきゃいい話!」
キキョウ「溶岩踏んで20前後のダメージとか絶対嘘だろ。即死レベルだろ」
クロ「炎属性の魔物はともかく、そうじゃない魔物も踏んでるんですよね」
キキョウ「アホなの?」

とりあえず進むと機械の獣がいた。

地獄の番犬「わんわん」
アオニ「わあー可愛い……ワケあるか!どっかで見たことあるデザインだし!」
クロ「赤いですし氷属性が効きそうですねぇ」
キキョウ「って言いながらなんで炎の印術してんの?」
クロ「AIのせいです♪」
地獄の番犬「エネルギーチャージ完了だワン!」
アオニ「え」
クロ「へ」
ナギット「は」
キキョウ「お」

地獄の番犬は放出を使った!周囲にいた一行にダメージ!

4人 『あっつい!!』
キキョウ「至近距離で炎飛ばすのやめろ!髪の毛チリチリになる!」
ナギット「知るかそんなもん!あークソッ!やっぱり炎属性の攻撃してきやがったな!後でファイアガードのスキルレベル上げねーとまずいな!」
クロ「私、爆発はドジっ子乙女が料理で失敗した時のお約束展開しか許さないって決めてるんですよ。なので本気で殺りに行きます」
アオニ「どーでもいいこだわりはさておいて、その意気だよクロ。でも体力ゴッソリ減ってるから無理しないでよね」

番犬に炎は厳禁と覚えた所で、進む一行は通路で羊と遭遇した。

沈黙の夢食い「めぇめぇ」
アオニ「わあー可愛く……ないわ!」
クロ「タルシスの羊はもっと巨大でしたよ!?それこそDOEクラスの!」
ナギット「へぇ」
キキョウ「つまりジンギスカン食べ放題って事か!すげーいいなー!」
ナギット「お前のそのお気楽思考回路見習いたいわ」

羊はまどろむ視線を使った!アオニは眠ってしまった!

アオニ「スヤァ」
クロ「フカ子!こんなところで寝ないでくださいよ!」
キキョウ「こりゃアカン、熟睡しとる」

羊はさておき、砦を建てたワケだか

アオニ「およ、すぐ下の階にDOEがいる」
キキョウ「こっちから行くよりここで迎え撃って待機してる奴等と一緒にボコった方が早くね?」
アオニ「それ採用。強制的に時間を進めまーす」
クロ「これ使うとお腹がすいてしまうんですよねー厄介なことに」
アオニ「そう思ったからお弁当を食べよう。爆発うま味弁当だからバーストゲージもたまっていいことずくめだよ」
キキョウ「うめぇうめぇ」

強制的に時間を進めたがDOEは来ない。

アオニ「あれ」
キキョウ「すぐに来てくれないパターンか?」
クロ「お弁当を食べて余裕ありますし、もう少し待ってみましょうか」

強制的に時間を進めたがDOEは来ない。

ナギット「クソうぜぇぇぇぇぇぇ!!2回も待ったんだからさっさと来いや!!
アオニ「野生の本能的な奴でここに上がると危険だと察知してるのかもね……」
クロ「もう1度降りてからおびき寄せますか」
キキョウ「その方が早そうだな」

一階降りて遭遇してから砦に戻るというおびき寄せ作戦で倒した。

アオニ「よーしよし順調!大きなDOEも毒の水葉があれば怖くない!」
クロ「じゃあ、下へ行きましょうか」
キキョウ「へーい」

DOE、森の破壊者が現れた!!

アオニ「!?」
キキョウ「おおう遭遇」
ナギット「倒しますか?」
アオニ「いや、きっと砦目掛けて行くんだし先に階段見つけちゃったし先に進んでしまおう……」

下に降りたがDOEがついてきた!しかも2体のDOEと鉢合わせした!DOE合計3体!

4人 『わぁぁお!!?』
アオニ「アラート!アラート!アラート!アラート!緊急事態発生!緊急事態発生!!
クロ「DOEは冒険者に付いていく仕様を完全に忘れてましたね」
キキョウ「なんか1匹赤いモヤモヤじゃなくて黒いモヤモヤになってる!ボス!?」
クロ「オーベルフェ観光ガイド~ラフレシア級~によりますと、結晶体フロアでひと暴れを終えたDOEはパワーアップするとか」
キキョウ「あーそういや結晶体フロアを破壊してパワーアップしたとかいうナレーションが聞こえたよーなー?」
ナギット「そういうことは早めに言え!ほうれんそうは社会人の基本だろ!」
アオニ「ほうれんそうって?」
キキョウ「ほう→砲丸を
れん→連続で投げたら
そう→総スカンされた」
クロ「天才スポーツマン故の悲劇が想像できますねぇ」
ナギット「真面目に現実と向き合え」

1匹で単体行動している熊から倒した。

森の破壊者「くまー(断末魔)」
アオニ「めっちゃ今更だけどなんで山ダンジョンなのにDOEの名前が森の破壊者なの。森なんてないじゃん」
キキョウ「もともと森があって木を根こそぎ刈ってったんじゃね?」
クロ「こんな溶岩地帯に森があるとは思えませんが」
ナギット「魔物の考察は帰ってからにしてください。それより、残り2体のDOEはどうするんですか?」
アオニ「さすがに無理、もう毒の水葉ないもん。一旦戻って準備しよう。というか素直にカースメーカー連れてこよ」
クロ「えっカスメ?いたんですか?」
アオニ「うんいたよ。教えてなかっただけ」
クロ「私に教えないと言うことは女性ですね!カースメイカーの乙女!」
ナギット「そう解釈するんですね」
キキョウ「それしかねーッスよ」

DOEの面倒臭さが身にしみた所で、一行はダンジョンを進む。

アオニ「うげ、超ヨウガンジュウまたいるし」
キキョウ「熱風鬱陶しいんだよなーナギットさーんガードー」
ナギット「急速に庇いたくなくなったわ」
クロ「いつも通り遠くから凍牙の印術で攻撃でいいですね」
アオニ「そーだねーアタシもリンクフリーズするしクロよろしくー」
キキョウ「じゃあ俺らほぼ見てるだけだな。アイツ氷属性以外の攻撃全然通らないもん」
ナギット「氷の印石もないですしね」
クロ「では、いつも通りという事で……」

クロは鉄球の罠を踏んだ!

クロ「あ」

鉄球に吹き飛ばされたクロは超ヨウガンジュウと衝突した!

クロ「熱い!!」
アオニ「クローーーーーー!!」
キキョウ「溶岩の塊にぶつかったのに被ダメ5っておかしくね?」
ナギット「システムの都合だろ」
クロ「熱い!被ダメ5でもメチャメチャ熱い!!」
アオニ「消火!消火!」
クロ「リンクフリーズで消火を試みないでくださいよ!」
キキョウ「とりあえず超ヨウカンジュウどうするッスか?律儀に待っててくれてるみたいッスけど」
ナギット「一時しのぎの印石でどっかに追いやるしかねぇな」
キキョウ「はーいッス」

無事に鎮火させた所で、一旦階段を登って砦に避難した。

クロ「ふー。もう少しで火だるまになる所でした……ありがとうございます」
アオニ「無事ならよかったよ」
キキョウ「大変だなー暑いの苦手な癖に厚着で溶岩にぶつかるとか」
クロ「もう慣れましたし砂漠の時のようなヘマはしません。ホラそこに湯船に浸かっている美女達が」
ナギット「バリッバリに幻覚見てるんじゃねーか」
キキョウ「やっぱクロさーもうちょっと薄着になろう?もっと身軽な格好した方が絶対いいって!俺みたいにさ!」
クロ「貴方の格好は少々軽やかすぎます。上着とか特に」
アオニ「本当に女の子だったらクロ歓喜だったのにね」
クロ「いやあ……」
ナギット「絶対褒めてないですよそれ、嫌味ですよきっと」
アオニ「マサカ」
キキョウ「厚着で困らなくないか?」
クロ「困りませんよ」
キキョウ「クロがないって言っても俺はあるって思う!大体お前変なんだよー暑いの苦手とか言いながら長風呂だし薄着にしないしーなんで?」
クロ「そ、それぐらいいいじゃないですか。私がどういうライフスタイルで生きようが」
ナギット「……止めないんですか?言ってくれたらアイツにゲンコツ落として来ますが」
アオニ「やーもう潮時だと思うし、このままでいいよ」
ナギット「?」
キキョウ「じゃあもう俺が脱がしてやる!身ぐるみはぎはぎ」
クロ「ギャー!無理矢理脱がすのはヤメテー!乱暴しないでー!
ナギット「本当に止めなくていいんですか?」
アオニ「うん」
クロ「しくしく……野郎に乱暴されてしまいました……もうお婿に行けない……」
キキョウ「じゃあお嫁さん貰えよ……っていうかお前……その痣どしたん?」
クロ「あっ」
ナギット「えっ」
アオニ「あーあ」
クロ「……バレてしまいましたか」
アオニ「そだね」
ナギット「そだね。ってアナタ……」
キキョウ「どしたん?」
クロ「いや、それは……」
ナギット「おい」
キキョウ「えーだって気になるじゃないですかー」
クロ「私は別に構いませんが、とりあえず服を着させてください、ダンジョン内で半裸ってちょっとキツいんで」
キキョウ「俺の衣装全否定された?」
クロ「マッサカー」

ちゃんと服を着直したところで

クロ「イチから話した方がわかりやすいと思うので、最初から話しますね」
ナギット「はい」
キキョウ「うん」
クロ「実家が大きな病院で、私はその跡取り息子……」
キキョウ「おおースゲーじゃん!金持ち!」
クロ「だったのですが継ぐ気はさらさらなかったのでとっとと実家を捨てて冒険者してます」
キキョウ「え」
ナギット「何があったんですか?」
クロ「跡取り息子と言っても、父と愛人の間に出来た子供だったのですよー。とはいえ正妻はいつの間にか亡くなっていたそうですし、男の子なら丁度いいというフワッとした理由で引き取られました」
ナギット「所々に不穏な空気が漂っているのですが」
アオニ「いつ聞いてもヤバいよね、クロの実家の話」
クロ「そんな事はあるかもしれませんねぇ」
キキョウ「否定してー?」
クロ「話を戻して、引き取られた私は愛人の子とはいえようやく出来た跡取りとして周囲の人達に大切にされました。快く思っていない人もいましたが、ほとんどの人は優しかったですし、幼かった私も何の不満もなかったのですが」
キキョウ「が?」
クロ「母の方はそうでもなくって、周囲から後ろ指を指されてとても辛かったようです。だから、私を立派な跡継ぎにして自分を否定する人達に一泡吹かせてやりたくて、自ら教育係に志願したんです。普段は優しかったんですが私が少しでも問題を間違えたりすると……」
アオニ「ヒドイ事されたと」
クロ「執拗に背中だけでしたね。理由は聞きそびれてしまいましたし、聞きたくもありませんが」
ナギット「いや、その、えっと……大人になっても痣が残ってしまうほどの虐待だなんて……」
クロ「異常ですよね。それぐらい昔の私だって分かっていましたが、母の境遇や心境を考えるとこうなるのも仕方がないと納得してました」
ナギット「な、納得できるですか、それ……」
キキョウ「かーちゃんのこと嫌いになれなかったんだなー」
クロ「そうですね。普段の母を見てると自分がどうにかしなきゃという使命感が込み上がって来ましたし、何より自分を産んでくれた人をそう簡単に嫌いになれませんよ」
キキョウ「あれ?じゃあなんで跡継ぎにほっぽり出したんだ?かーちゃんのために後を継ぐんじゃなかったのか?」
クロ「その話もします?」
アオニ「アタシはいいよ。周りに魔物もいないし長話しても問題ないでしょ」
クロ「ではお言葉に甘えて……痛みを伴う教育の甲斐もあって有名な医術学校に入って、そこで必死に努力して、首席で卒業するのがほぼ確定だと言い渡されました」
キキョウ「よかったじゃん!」
クロ「卒業する年の初めに母が亡くなりましたが」
ナギット「」
キキョウ「」
アオニ「知ってた」
ナギット「どうして亡くなったんです……?」
クロ「それが分からないのですよ」
ナギット「はいぃ?」
クロ「色々な人と聞いたのですが原因一切不明。たぶん病気だの一点張り。なんの病気なのか、病気だったのならどうして治せなかったのか、教えて欲しいと懇願しても聞いてくれませんでした」
キキョウ「それって、さあ?クロが学校を首席で卒業するから教育係お役ご免!もう用済み!ってコトなんじゃね?だからコッソリ処分したんじゃね?」
ナギット「うおい!だからお前!」
クロ「やっぱりそう思いますー?私もそうなんじゃないかなって疑ってたというかほぼ確信しているというかそんな感じなんですよね!いやーすぐにそう言ってくれた方はキキョウが2人目ですよー」
キキョウ「やった俺2番目!トップ3に入ってる!」
ナギット「…………」
アオニ「ごめんよこういう所あるから」
クロ「私がこれまで頑張ってきたのは母のためであって、家の人達のためではありません。だから母の葬儀が終わってからなんというか、家のコトとか医者のコトとかどーでもよくなってきちゃいまして、卒業式当日にバックれました♪」
ナギット「えええ……亡くなったお母様のために家業を頑張ろうとか思わなかったんですか……?」
クロ「ナギットさん。死者は喋りませんし泣きもしなければ笑いもしませんよ?」
ナギット「…………」
アオニ「死んだお母さんもある意味喜んでる可能性もあるって、きっと」
クロ「そう言ってくれるのはフカ子と先輩だけですよ」
キキョウ「先輩って?」
クロ「同じ医療学校に通っていた2つ上の先輩で、私の恩人です。今はタルシスで薬品の研究をしていますね」
キキョウ「へー」
ナギット「はあ……まあ、事情はよく分かりました。ありがとうございます。すみません、話しにくい事をわざわざ……」
クロ「いいんですよ。別に過去の事とか痣の事とかそこまで気にしてませんから」
ナギット「え?」
キキョウ「じゃあなんで背中隠してたの?」
クロ「だってこんなえげつない傷跡、他人に見せたらきっと気分を害してしまうでしょう?だから頑張って隠してたんですよ……」
アオニ「アタシは気にしないけどね。宿の温泉に入るのやめといたら?って言ったのに入らなかったら逆に怪しまれるって聞かなくって」
クロ「まあ結局バレてしまいましたけどね。申し訳ありません、不快なモノを見せてしまって」
ナギット「いや、俺は、気にして、ないので、謝る、必要、ない、デスよ?」
キキョウ「ナギットさんテンパって喋り方変になってるッス」
アオニ「想定外の事が起こりすぎてパニックになってるんだろうね」
クロ「このギルドの中で一番純粋な方ですからね、ナギットは」

仲間の複雑な事情を知り、互いの理解が深まった……かもしれない。

B29Fにて
迷宮のヌシ、ゲシュペンストが現れた!

キキョウ「今回はイベント挟まずフツーに来たな!久しぶりにそーゆーの見た気がする!」
アオニ「そーゆーのはいいんだけど!なにこの初期位置!おかしくない!?どうなってんのこれ!?」
クロ「文章で説明するのは難しいので実際に見てくださいとしか言いようがないんですけどこれは酷いですね。初期位置ランダムの可能性が出て来ました」
ナギット「初手はどうします?そろそろ開幕状態異常にも頼れなくなってきましたけど」
アオニ「麻痺とかにする前提はちょっと諦めて、まずは自分の強化を優先的に進めよう。アタシはクイック軟膏で移動速度上げて、ナギットはディバイト、キキョウとクロはルーンの輝きで。あとディバイト来るまで攻撃飛んでもなるべく死んじゃダメだよ」
キキョウ「防御紙職にとっては難しい話!だなあ!」
クロ「やれるだけやってみますか。幸い今回私とナギットの位置は近いですし問題なくディバイトの恩恵は受けられます」
ナギット「なら、ディバイドしてからエナジータンゴでサポートして、時々アイテムも使いますね」
キキョウ「すでに俺、一度殴られて死にそうッス……」
ナギット「すぐ行ってやるからもう少し我慢しろ」
キキョウ「うえーい」

ゲシュペンストは極炎を使った!ナギットは全て庇った!

ナギット「そんな攻撃が効くかよ」
キキョウ「うひゃーファイアガード無しなのに1ダメージしか喰らってないッス〜ナギットさん堅〜い」
アオニ「おお?実は意外と楽勝だったりするんじゃない?」
クロ「そういう所で油断していると……」

ゲシュペンストは闇霧を使った!
アオニは毒と鈍足になった!
キキョウは頭封じとスキル封じになった!
ナギットはスキル封じにになった!

クロ「はいこうなります」
キキョウ「モゴモゴ」
アオニ「うおぇあ」
ナギット「どうしてクロだけ大丈夫なんですか……」
クロ「装備のお陰と言っておきましょうか。またカニカニ弁当の出番ですね」
キキョウ「もぐもぐ……ぷはー!生き返ったー!」
アオニ「美味しいのはいいんだけど全員で食べた後部屋がとてもカニ臭くなるんだよねぇ」
キキョウ「よくもやったなこのヤロー!」

ゲシュペンストを倒した!

キキョウ「やったぜ」
アオニ「よっしゃ!これで先に進める!この先がきっと世界樹だよ!」
クロ「思えば長い道のりでした……!」
ナギット「ようやく親父を……」
ナディカ「あっ!パレッテさん!あっちから光が……!」
キキョウ「おお!あそこから出られそうだな!」
ナディカ「早く行ってみよっ!」

一行は急いでダンジョンを抜ける。
この先には、いつも湖畔から眺めていた美しい世界樹が現れる……

アオニ「あ……れ……?」

はずだった。

クロ「こ、これは……?」
ナギット「一体……」
キキョウ「どーなんてんの!?」

広がっていたのは一面の荒野だった。

ナディカ「ここが……世界樹の麓……?」
ナギット「か……神々の国の入り口どころか、世界樹すらねぇぞ……?」
キキョウ「なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?」
クロ「全部、幻だったと言うんですか?私たちが見て来た世界樹は、蜃気楼か、幻影だったと……?」
ナディカ「そ、そんな……」
アオニ「……なんで……どうして……あ、アタシ、世界樹を目指して、ここまで頑張って来たのに、夢だったのに、パレットみたいにすごいギルドになれるって、思ったのに……」
クロ「……フカ子」
アオニ「は、はは……幾多の冒険者がロマンを求めて挑んだ世界樹のダンジョンで、アタシ達がその頂点に立って、最初の踏破者になったハズだったのに……結局、全部夢幻で……これじゃあただのピエロみたいなもんだよ……馬鹿みたいですっごく滑稽だよね……笑える」
クロ「……笑い事なんかじゃありませんよ」
アオニ「だって!しょうがないじゃん!だってないんだもん!世界樹!ないんだもん!ない……もん……」
クロ「……」
アオニ「うう……えぐっ、えぐっ……」
クロ「泣かないでくださいよ、フカ子。私は紳士、女の子を泣かせないようにするのが紳士の務め、だから……女の子の涙の止め方なんて、わからないんですよ……」
ナギット「2人共……」
キキョウ「…………」
ナディカ「ううっ……ううううっ……」
ナギット「ナディカ……」
キキョウ「………………」
ナギット「(クソッ!こういう時、どうしたらいいのかわかんねぇ……!大人しく帰るのがいいのか?安っぽいセリフでもいいから慰めてやるべきなのか?黙っておいた方がいいのか……?ああもう!俺は……なんて無力で、誰も守れないパラディンなんだ……!)
キキョウ「……………………あれ?」
ナギット「どうした?」
キキョウ「なんか、おかしいッス。おかしいッスよナギットさん!」
ナギット「ああ?確かにこの状況はおかしいけどよ……」
キキョウ「そうじゃないッス!やっぱり鈍いッスね!」
ナギット「そんなに殴られててぇか……?」
キキョウ「違うッスよ!ホラ、世界樹の麓に神々の国の入り口があるって言ったのは、ナディカじゃないッスか!街の噂にもなってたけど!ナディカがハッキリ言ってたじゃないッスか!精霊の!ナディカが!」
ナギット「んん……?」
キキョウ「おかしくないッスか!?人々の噂ならともかく精霊がハッキリ言ってたんスよ!?なのにこの結果って変ッス!おかしいッス!」
ナギット「言われてみれば……確かに……おい、ナディカ……」

その時、肩を震わせていたナディカから声がする。

ナディカ「クククククッ……クハハハハッ……!」
ナギット「え?」
ナディカ「そんなハズはない……そんなはずはないのだッ……!」

ナディカが振り向いた時……!雷鳴と共にその姿は豹変していた!

ナギット&キキョウ『ギャーーーーーーーーーーーーーー!!』
アオニ「えっなに?」
キキョウ「泣いてる場合じゃないぞアオニ!緊急事態だあ!!」
アオニ「何が……ふわあああああああおおお!?
クロ「なんて禍々しい美女!!
ナギット「お前は元に戻るなよ」
ナディカ「グガガガガガガ……!アレ?あれ……?しまった、うっかり体が……」
ナギット「なんだよ本性表したとかじゃなくて凡ミスかよ!」
キキョウ「このうっかりさん!」
アオニ「このデザインってどう考えても妖魔族なんじゃないの!?どう考えても精霊じゃなくない!?」
クロ「感情が高ぶると元に戻るんですかね?いやあ仮の姿も愛らしかったですけどこれはこれで……」
アオニ「さっきのアタシのときめきを利子付けて返せ」
ナディカ「出ちゃったものは仕方ないか……正体を見られたからには……生かしてはおけないっ!」
キキョウ「なんてこった!ナディカと戦うことになるなんて!」
アオニ「ちょっ!?まだ状況がちゃんと飲み込めてないんだけど!まず1から5まででいいから説明プリーーーズ!!」
ナギット「ダメです聞く耳持ってくれません!というか持つワケないでしょう!」
キキョウ「うげげ……!俺の攻撃が全く通らない……!なんつー強さだ……!」
クロ「女性に手を上げるなんて紳士のすることではありませんが、この状況ですとそうも言ってられませんね……!」
ナギット「ぜぇぜぇ……なんつーパワーだ……防ぐだけでやっとだぞ……」
アオニ「もー!何がどうなってるのさー!」
キキョウ「今だ隙あり!」
ナディカ「させるかっ!」

ガキン!

ナギット「キキョウ!」

ポキッ

アオニ「ぽき?」
キキョウ「ギャアアアアアアアアア!!刀が折れたぁぁぁぁあぁぁ!俺の刀ぁぁあぁぁぁ!!
クロ「刀ぐらいまた買い直せば……」
キキョウ「やだー!ご主人様に買ってもらった大切な刀だったのにー!やだー!!」
アオニ「いつも装備してる武器に混じって持ってたの!?三刀流だったの!?」
キキョウ「そうだよーーーー!!悪いかーーーーー!!うあーーーーーーー!!」
アオニ「さっきのアタシより泣いてる……」

キキョウは戦意喪失している!

ナディカ「なんかよくわからんが1匹仕留めたぞ!」
クロ「あああ、まずい展開ですよこれは……!」
ナギット「おいキキョウ!しっかりしろ!刀ぐらい街で直してもらったらいいじゃねぇ!」
キキョウ「うっうっ……」
アオニ「ぐぬぬ……せめて攻撃が通らない原因がわかれば……!」
クロ「恐らくですが、あの黒い霧が原因ではないでしょうか?ナディカを守るように動いていますし、その可能性が……」
アオニ「充分ある!けど、どうすりゃいいのさー!」
ナディカ「グオオオオオオオーーーーー!!」
アオニ「ぴぎゃ!」
クロ「ぎゃん!」
ナギット「ぐあっ!」
キキョウ「刀……刀……」

ナディカの激しい攻撃により、一行は追い詰められてしまった!

アオニ「うぐぐ……このままじゃあ全滅しちゃう……」
クロ「何もわからないまま死ぬなんて御免ですよ……」
ナギット「クソックソッ……!ここまでなのかよ……!」
キキョウ「かたな……」

その時!一行とナディカの間に割って入る者がいた!

ナディカ「ウグッ!」
アオニ「何?今の……白い、光?」
ダンサー風の男「おい!大丈夫か!」
ナギット「お前はいつぞやの……!ナディカを追いかけ回してた!」
クロ「貴方が噂の!?だったら、一体どういう風の吹きまわしで……」
ダンサー風の男「細かい話は後だ!今はここから立ち去るぞ!」
アオニ「ええっ?わああっ!?」
キキョウ「ぽきっとぽきっとぽきっと……」

彼らは目くらましを使い……ナディカを怯ませその隙に、一行を連れてその場を離れるのであった。





【次回予告】
アオニ「第7迷宮を越え、世界樹に辿り着いたアタシ達を待っていたのは衝撃の事実だった!」
ナギット「まさか世界樹が幻だったなんて……って、今回はまともに次回予告するんですか?」
キキョウ「世界樹に到達したし、終わりが近そうだなー」
クロ「終わりが近いというか終わってるんですけどね。もう迷宮はありませんし」
アオニ「世界樹到達はできなかったけど、オーベルフェの歴史に名を残せてこれはこれですごい冒険者になって事だし、アタシは満足してるよ」
ナギット「そうでしょうか……?」
アオニ「やることは終わったんだし冒険者は一旦おしまい!」
ナギット「……え?」
アオニ「楽しかった冒険、ひっかかったトラップ、上がってこないDOE、よく死ぬキキョウとクロ……これらの出来事はぜーんぶ素敵な思い出になって、アタシの中で溶けていく……」
クロ「本当に長くて、素敵な時間でした。こんなに楽しい冒険は久しぶりでしたね」
キキョウ「色んな人と出会えて楽しかった!ねーナギットさーん」
ナギット「え、あ、まあ……これで親父も認めてくれるんだと思えば……」
アオニ「さようなら、オーベルフェ。沢山の思い出と出会いをありがとう、これからはアタシ……アタシ……」
ナギット「アオニ……その、やっぱり」
アオニ「銀河系勇者になって銀河の平和を守ります☆
ナギット「だああああああ!!やっぱりいつもの次回予告かぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
アオニ「不思議のダンジョンを踏破した次は宇宙の平和を守るよ!帝国の技術者達が腕によりをかけて作った対無重力空間機能搭載気球艇で銀河系に飛び出す!目指すは銀河全てを支配しようと企む超暗黒魔王の討伐!」
クロ「新しい冒険はいつでもワクワクするものです。可愛い女の子がいれば特に!」
キキョウ「深緑銀河系第53惑星ヘカトンに眠ってる伝説の剣“日向之興里”がないと魔王は封印できないから。まず目指すのはそこだよな」
ナギット「え、ひむかいの……なんだって?」
アオニ「次回!銀河勇者アオニ!第1話!“銀河戦の夜明け”!大丈夫……アタシが全部守るから……」
ナギット「世界樹がなかったショックで気が動転しているのか……」
キキョウ「通常運転ッスよ?」
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