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小ネタ集

オオガラスの迷宮、今日も探索を終えた人形兵たちは結界で守られている馬車小屋に戻ってきました。
人形兵たちの拠点は、馬車小屋内にぽつんとある、魔道具お屋敷の中。
ラミーゾラとポメ、二人はアズーフェーヌムにてバケツをひっくり返したような雨に打たれたため、上から下までびしょ濡れになっていました。
「はあー……いつまでこのずぶ濡れが続くんだか……」
「ののの」
ため息をつくラミーゾラの腕の中で、ポメはのんきな声で鳴いていました。
着替えのために自室に戻っている2人、乾いたタオルである程度拭いて、ポメをひっくり返して鎧の中の水を全て出したとはいえ衣服はしっかり水分を吸収しているため、このままだと風邪をひいていまいます。
部屋に着いた途端、ポメはラミーゾラの腕から抜け出して跳躍、見事なジャンプ力を披露した後に大きなベッドの上に着地しました。
隣には子供サイズの小さなベッドがちょこんと置いてあります。ポメのベッドです。
「とま!」
「ほら、ポメも鎧と兜脱いで……ちょっと早いけどパジャマに着替えるよ」
「やー」
「嫌じゃないの、このままだと風邪ひくから」
自分がずぶ濡れのまま、ポメを着替えさせると服を濡らしてしまうので、ラミーゾラは自分の服を脱いで上半身だけ裸になりました。
ズボンとブーツも脱ごうとした刹那、ポメが再び跳躍してベッドから飛び出してしまいます。
「あっ!こら!」
「にょい!」
どうしても鎧を脱ぐのが嫌なポメ。床に着地すると同時にベッドの下に素早く隠れました。
「ポメ!そんな所に隠れたって何も解決しないんだから出て来るんだ!」
「めー!やー!」
「あのねぇ……!」
苛立ちを隠せない様子でぼやき、今日はどうやって引きずり出すか思考を働かせた時でした。部屋のドアが開いたのは。
「おーいラミーゾラー、ミーアがホットミルク淹れたらしいからダイニングに……」
ノックもなしに扉を開けたエトスが最初に見たのは、大きなベッドの前で上半身素っ裸状態になって仁王立ちしているラミーゾラでした。
「うわぁ!?」
思わず真っ赤になって悲鳴を挙げたエトス。女性の裸体にはあまり慣れていないのでしょう、ゴシックコッペリアは中性ですが置いといて。
「わっ!?エトス!?」
ラミーゾラ本人も驚いて目を丸くさせ、
「ノックもせずにいきなり入ってくるなんて失礼じゃないか!いくら旅団の仲間とはいっても節度を持って行動してほしいね!」
「そこじゃねぇよ!?いや、そこもあるかもしれねぇけどそこじゃねぇよ!?最優先事項ズレてね!?」
「は?なんの話?」
これは本気で分かっていない時の顔です。
「なんの話って……男の前で上だけ裸でいいのかよって話だっつーの!恥女の類じゃねーだろアンタ!」
「え………………あっ」
やや長い沈黙の末気が付きましたが、恥じる様子は皆無でして。
「すまない……この体になってから自分の裸体に恥じらいをあまり感じなくなってしまって……あまり女性らしい体つきでもないし」
「ああ、そうかい……」
さすがに見ていられなくなったエトスは視線を外すのですが、気になって仕方がないためつい横目でチラチラ見てしまいます。
すると、
「にゅーにゅー」
ホットミルクという単語に釣られたのか、ポメがベッドの下から出て来てドア目指して駆けていくのが見え、ラミーゾラはすかさず、
「行かせるか!」
「にょっ!?」
さっと持ち上げて捕獲完了。ポメが必死にもがいていますが絶対に手の力を緩めたりしません。
「ぴー!」
「着替えが先!牛乳は後!」
「ぴー!ぴー!」
「ダメ!」
目の前で繰り広げられる攻防戦にエトス唖然。介入すら許されないような状況に圧倒されています。
「エトス。悪いけどポメを着替えさせてから行くってミーアに伝えてもらっていいかな?なるべく早く行くから」
「お、おお……わかった」
気迫に押されつつも頷いたエトスはそっと部屋から出て行ったのでした。
「濡れたまま過ごすと、体が冷えて風邪をひくんだよ!?魔法生物だって体調を崩す時だってあるんだ、そうなったら君は一日中ここでお留守番しないといけなくなるんだ!それでもいいのかい!?」
「やーやー!」
「嫌なら着替える!! 」
なんて声を背中に受け、静かにドアを閉めたエトス。廊下でひとり、その場でしゃがみこむと顔を覆い、
「(なんっっっっだ!アレ!)」
心の中で絶叫。
「(アイツって確か女……女、だよな!?なのに筋肉ついてんじゃん!?それなりに鍛えてる野郎並みにあんじゃん!?可愛い顔してとんでもねーもん備え着けてんじゃねーよ!?俺の密かな憧れポイントを的確に突いてきてんじゃねぇぇぇぇぇぇ!!)」



エトス・スライ。享年15歳。生前は男娼、男性経験しかない。
好みのタイプは筋肉のついてる女なので、ラミーゾラはストライクゾーンほぼ真ん中。
この憧れが後々恋心に発展していくなんて、この時の彼は思ってもいなかったのです……。
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