☆クリスマスが今年もやってきて
日は流れて12月24日、深夜。
壊れた馬車小屋内(穴の開いた床は塞いでいる)には。
「そんなこんなパンナコッタで!いつも大人に交じって一生懸命頑張ってるお子様たちに日頃の感謝をこめて、サプライズサンタプレゼントキャンペーンを始めるわよ!」
『おぉ―――!!』
サンタのコスプレをしたアルスティ(ミニスカ)と同じくラミーゾラ(ミニスカ+スパッツ)とオディロン(ノーマル)が高らかに雄たけびを上げていました。それぞれ大きさの異なった白い袋を後ろに置いています。
彼らのすぐ近くでは、トナカイスーツに身を包んだレグとニケロがいるのですが、双方目が死んでいます。楽しみにとっておいたプリンの賞味期限が過ぎていた時のような絶望に染まった目つき。
ニケロはともかく、アルスティのコスプレ姿という貴重な場面に遭遇しているレグが気落ちしているのは中々レアな光景です。
「珍しく大人しいわね?どうかした?」
てっきりハイテンションのレグにウザ絡みされると思っていたアルスティはきょとん。ラミーゾラとオディロンも黙って頷き同意見。
「どうしたの?って、あーたん……」
「おじさんたちは深夜まで麻雀してたら急に拉致られてトナカイスーツ無理矢理着せられてよくわからんイベントに強制参加強いられたんだぞ?あーたんのおみ足を拝めるのは嬉しいけど、ちゃんと説明してもらいたい」
テンションは低くても通常運転だったこの男「勝ってたのになぁ」と非常に残念そう。テンション低めの理由はそれにあったようです。
2人の苦情など気にも留めず、アルスティは豪語します。
「麻雀はいつでもできるけどクリスマスは今日しかないでしょ!?」
「おじさんが勝ってるのは今日しかなかったんだぞ!?知りたいおじさんの勝率!?」
「明日の天気よりも有益な情報にしか興味ないわ」
「天候以下!!」
レグが膝を付いて床を殴っている場面はどうでもいいのでさっさと視界から外します。アルスティ含める全員が。
バンバンと木材を殴る音が響いていますが、無視の方向を貫くので誰1人触れないまま、話はどんどん進みます。
「あーたんたちはクリスマスの深夜にるーくんたちにプレゼントを配るつもりなんでしょ~?サンタさんの代わりに~」
「そうだよ」
同意の返答をくれたのはラミーゾラ。彼女はそこそこ大きな袋を背中に担いで出発準備を整えていました。
「昼間のあの話を聞いたら誰だって同情するよね~」
歳を重ねた大人の発言だったらここまで大がかりな事はしないでしょうが、発言者が12にも満たない子供です。良心という良心が痛いほど刺激されてしまい、大胆な活動をするに至ったのです。ニケロでも分かります。
「ぶっちゃけ3人共、人としての大切な心を失って外道化しつつあるなーって思ってたんだけど、そういう優しい気持ちはまだ消えてなかったんだね~安心したよ~」
「君がそれを言うのかい?」
台詞からして人の事を言えませんがちゃんと言うのがニケロです。ラミーゾラがため息をつく音が聞こえました。蛇足ですが床を殴る音が止みました。
「闇の王たる我が同情という安い感情に動かされるワケがなかろう!」
「じゃあなんでサンタのコスプレしてんの。台詞と格好がとっても矛盾してるぞ」
立ち直ったレグの冷めた目。ニケロも同じくコキュートスな眼差しをオディロンに向けており、
「眼帯したままなのに妙に似合ってるのが絶妙に腹立つよね~」
ご覧のとおり毒舌モードですが、闇の王たる彼はこの程度の挑発には噛み付きません。冷静に対処します。
「奴は我の力を取り戻すために助力しているからな……たまには労ってやろうと思っただけだ。上に立つ者として下で働く者の面倒を見たり、モチベーション管理をするのは当然の務めだからな」
「思った以上に真面目だわ」
「やっぱりまともな思考を持ってんだよな、オディロンって」
「設定さえなければもっとよかったのに……勿体ないなぁ」
「それってただの口実だよね~」
「は?」
本気で意味が分からない時のリアクションをしてもらった所で、
「ちびっ子ズの枕元にプレゼントを置くだけなら、俺らは別に必要なくね?あーたんたちで事足りると思うんだけどなあ」
ページ頭の時点で疑問に思っていた事をようやく口にできましたが、サンタコスプレ3人衆は真顔で、
「いやいるわよ」
「いるいる」
「来れば分かる」
淡々と返し、一緒に踵も返しました。向かう先はミニチュアお屋敷です。
『…………』
今すぐローストチキンを食ってそのまま寝てしまいたい……そんな衝動に駆られながらも、ニケロとレグは渋々ついていきます。逃げた所でどうにもならないので。
お屋敷は2階建ての無駄に広い建物です。クリスマスパーティでほとんどの人形兵がはしゃぎ疲れて寝静まった今、物音1つ聞こえません。防音完備されているという理由もありますが。
人形兵の居住スペースでもある2階の廊下、ランプ灯りは弱く、薄暗さに包まれていました。
そのど真ん中で、大の大人がサンタのコスプレとトナカイスーツを着込んで小声で話している様はとんでもなくシュールでした。
「それじゃあ、ここからは3手に分かれてそれぞれの仕事をしましょう」
探索時と同じくアルスティが仕切り、サンタの2人は静かに頷きトナカイの2人は明日の晩御飯も豪華になるのかと話し込んでいます。
「私はルテューアの部屋に行ってプレゼントを置いてくるわ」
「僕はニケロを連れてポメを探す」
ラミーゾラは白い袋を担ぎ、ニケロの肩を掴みます。
「えっ」
「我はおっさんを引きつれてシモベの部屋へ直行する」
オディロンは淡々と発した直後にレグを指したのでした。
「アンタもおっさんって呼んじゃう系?地味にブームなの?おじさんって呼ばれるのは慣れたからいいけどおっさんは嫌だってムープにも言ったんだけどなー?」
呼び名に対して細かいこだわりを持つ男の意見は無視されるモノでして、サンタ3人はそれぞれ踵を返して背を向けあう形となり、
「それじゃあそういうことで」
「打ち合わせ通り各自解散だよね」
「心得た」
サンタたちはそれぞれの目的地へと歩み始め、説明すらされなかったトナカイのレグとニケロはそれぞれ引きずられるように連れて行かれるのでした。
「あぁ~拉致されるよ~」
「トナカイはサンタの奴隷じゃねぇぞ~」
壊れた馬車小屋内(穴の開いた床は塞いでいる)には。
「そんなこんなパンナコッタで!いつも大人に交じって一生懸命頑張ってるお子様たちに日頃の感謝をこめて、サプライズサンタプレゼントキャンペーンを始めるわよ!」
『おぉ―――!!』
サンタのコスプレをしたアルスティ(ミニスカ)と同じくラミーゾラ(ミニスカ+スパッツ)とオディロン(ノーマル)が高らかに雄たけびを上げていました。それぞれ大きさの異なった白い袋を後ろに置いています。
彼らのすぐ近くでは、トナカイスーツに身を包んだレグとニケロがいるのですが、双方目が死んでいます。楽しみにとっておいたプリンの賞味期限が過ぎていた時のような絶望に染まった目つき。
ニケロはともかく、アルスティのコスプレ姿という貴重な場面に遭遇しているレグが気落ちしているのは中々レアな光景です。
「珍しく大人しいわね?どうかした?」
てっきりハイテンションのレグにウザ絡みされると思っていたアルスティはきょとん。ラミーゾラとオディロンも黙って頷き同意見。
「どうしたの?って、あーたん……」
「おじさんたちは深夜まで麻雀してたら急に拉致られてトナカイスーツ無理矢理着せられてよくわからんイベントに強制参加強いられたんだぞ?あーたんのおみ足を拝めるのは嬉しいけど、ちゃんと説明してもらいたい」
テンションは低くても通常運転だったこの男「勝ってたのになぁ」と非常に残念そう。テンション低めの理由はそれにあったようです。
2人の苦情など気にも留めず、アルスティは豪語します。
「麻雀はいつでもできるけどクリスマスは今日しかないでしょ!?」
「おじさんが勝ってるのは今日しかなかったんだぞ!?知りたいおじさんの勝率!?」
「明日の天気よりも有益な情報にしか興味ないわ」
「天候以下!!」
レグが膝を付いて床を殴っている場面はどうでもいいのでさっさと視界から外します。アルスティ含める全員が。
バンバンと木材を殴る音が響いていますが、無視の方向を貫くので誰1人触れないまま、話はどんどん進みます。
「あーたんたちはクリスマスの深夜にるーくんたちにプレゼントを配るつもりなんでしょ~?サンタさんの代わりに~」
「そうだよ」
同意の返答をくれたのはラミーゾラ。彼女はそこそこ大きな袋を背中に担いで出発準備を整えていました。
「昼間のあの話を聞いたら誰だって同情するよね~」
歳を重ねた大人の発言だったらここまで大がかりな事はしないでしょうが、発言者が12にも満たない子供です。良心という良心が痛いほど刺激されてしまい、大胆な活動をするに至ったのです。ニケロでも分かります。
「ぶっちゃけ3人共、人としての大切な心を失って外道化しつつあるなーって思ってたんだけど、そういう優しい気持ちはまだ消えてなかったんだね~安心したよ~」
「君がそれを言うのかい?」
台詞からして人の事を言えませんがちゃんと言うのがニケロです。ラミーゾラがため息をつく音が聞こえました。蛇足ですが床を殴る音が止みました。
「闇の王たる我が同情という安い感情に動かされるワケがなかろう!」
「じゃあなんでサンタのコスプレしてんの。台詞と格好がとっても矛盾してるぞ」
立ち直ったレグの冷めた目。ニケロも同じくコキュートスな眼差しをオディロンに向けており、
「眼帯したままなのに妙に似合ってるのが絶妙に腹立つよね~」
ご覧のとおり毒舌モードですが、闇の王たる彼はこの程度の挑発には噛み付きません。冷静に対処します。
「奴は我の力を取り戻すために助力しているからな……たまには労ってやろうと思っただけだ。上に立つ者として下で働く者の面倒を見たり、モチベーション管理をするのは当然の務めだからな」
「思った以上に真面目だわ」
「やっぱりまともな思考を持ってんだよな、オディロンって」
「設定さえなければもっとよかったのに……勿体ないなぁ」
「それってただの口実だよね~」
「は?」
本気で意味が分からない時のリアクションをしてもらった所で、
「ちびっ子ズの枕元にプレゼントを置くだけなら、俺らは別に必要なくね?あーたんたちで事足りると思うんだけどなあ」
ページ頭の時点で疑問に思っていた事をようやく口にできましたが、サンタコスプレ3人衆は真顔で、
「いやいるわよ」
「いるいる」
「来れば分かる」
淡々と返し、一緒に踵も返しました。向かう先はミニチュアお屋敷です。
『…………』
今すぐローストチキンを食ってそのまま寝てしまいたい……そんな衝動に駆られながらも、ニケロとレグは渋々ついていきます。逃げた所でどうにもならないので。
お屋敷は2階建ての無駄に広い建物です。クリスマスパーティでほとんどの人形兵がはしゃぎ疲れて寝静まった今、物音1つ聞こえません。防音完備されているという理由もありますが。
人形兵の居住スペースでもある2階の廊下、ランプ灯りは弱く、薄暗さに包まれていました。
そのど真ん中で、大の大人がサンタのコスプレとトナカイスーツを着込んで小声で話している様はとんでもなくシュールでした。
「それじゃあ、ここからは3手に分かれてそれぞれの仕事をしましょう」
探索時と同じくアルスティが仕切り、サンタの2人は静かに頷きトナカイの2人は明日の晩御飯も豪華になるのかと話し込んでいます。
「私はルテューアの部屋に行ってプレゼントを置いてくるわ」
「僕はニケロを連れてポメを探す」
ラミーゾラは白い袋を担ぎ、ニケロの肩を掴みます。
「えっ」
「我はおっさんを引きつれてシモベの部屋へ直行する」
オディロンは淡々と発した直後にレグを指したのでした。
「アンタもおっさんって呼んじゃう系?地味にブームなの?おじさんって呼ばれるのは慣れたからいいけどおっさんは嫌だってムープにも言ったんだけどなー?」
呼び名に対して細かいこだわりを持つ男の意見は無視されるモノでして、サンタ3人はそれぞれ踵を返して背を向けあう形となり、
「それじゃあそういうことで」
「打ち合わせ通り各自解散だよね」
「心得た」
サンタたちはそれぞれの目的地へと歩み始め、説明すらされなかったトナカイのレグとニケロはそれぞれ引きずられるように連れて行かれるのでした。
「あぁ~拉致されるよ~」
「トナカイはサンタの奴隷じゃねぇぞ~」