クリスマスであれやこれ

 クリスマス会が終わったその日の深夜。
 オズは自室で、プレゼント交換会で貰ったプレゼントを開けてみました。
「おっ! チョコレートじゃん」
 蓋を開けた瞬間に顔を覗かせる小さいチョコレートたち。オズはすぐに目を輝かせますが、チョコレートたちの上に乗っているメモを見て顔をしかめました。
「って、チョコレートボンボン!? なんでこんなもんをプレゼント交換会で寄越してんだ!?」
 驚愕の声を上げた直後、ドアを叩く音がしました。
「ん、誰だこんな時間に」
 大した疑念も抱かずにドアを開けて。
「突撃! 隣のコバエの部屋!」
 ニッコニコ笑顔のスイミーを見ると同時にドアを閉めようとしましたが、即座に足を引っ掛けられて阻止されてしまいました。
「帰れや!」
「クリスマスの夜をひとりサビシーク過ごしているコバエの元にわざわざ遊びに来てやったのにさーそう追い出すことないじゃん」
「知らねーし余計なお世話だっての! 自分の部屋に入ってさっさと寝てろ!」
「ふふ、いいのかな? こんな夜中に廊下で大声を出して大騒ぎをしたらサンタ……いや、教師に見つかって叱られるのは他でもない君なんだよ?」
「なんで自分優位でドヤってんだテメェ! ペナルティを受けるのはテメェも一生だろうが!」
「死なば諸共!」
「帰れっつってんだろ!!」
 いくら怒鳴っても帰る気配は無く、無理に締め出しても部屋に入れてくれるまで永遠と居座ってくる気配しか感じられなかった為、オズは渋々スイミーを部屋に招き入れたのでした。
「クッソ……敗北感……」
 壁に額を引っ付けて虚しい気持ちに浸っている間にも、スイミーは初めて入るオズの部屋をじっくり観察していました。
「ほんほん。けっこーフツーな部屋だよね? 面白みがないなー」
「人の部屋に面白み求めてんじゃねえよ」
「あっ! これってもしかして、クリスマス会でのプレゼント?」
「そうだけど……」
 机の上に置きっぱなしだったチョコレートボンボンでも見つけたのでしょう、ゆっくり振り返ると、
「もぐもぐ……おいしい……」
 なんの遠慮も躊躇いもなく食べていました。
「食ってんじゃねえよ! 人のプレゼントを!!」
 絶叫しながらも取り返そうと手を伸ばしますが、その速度よりも素早く箱をひょいっと持ち上げたスイミーはほくそ笑みまして。
「何をそんなに必死になってるのさ〜? たくさんあるんだからちょっとぐらい食べてもいいでしょ?」
「よくねーよ馬鹿! 食ったんだから分かるだろ! これはな……」
「チョコレートボンボンだよね。さっすがネネイちゃん、お酒の風味とチョコレートの甘さがマッチしていて美味しいおいしい……」
 そのまま躊躇いもなく二つ目のチョコレートも口の中に放り込み、チョコレートとお酒の風味を堪能し始めました。
 ちなみにチョコレートボンボンはお菓子に分類されるので飲酒とはみなされていません。よって合法。
「さてはテメェ、ネネイが作ったお菓子を食うために来やがったな!」
「コバエには勿体無いよね〜? だから僕が全部食べてあげる!」
「食うなボケぇ! 人の好物奪いやがって! さっさと返せや!」
 チョコレートを取り返そうと手を伸ばしますが、やはり寸前のところでひょいっと回避されてしまう始末。それがしばらく、何度も繰り返されてしまいます。
 回避の合間にもスイミーはチョコレートをひょいひょいと摘んでいってしまったため、やっとのことでオズが取り戻した時には、半分以上が食べ尽くされていました。
「クッソ……あいつ、本当にほとんど食いやがった……チョコレート……」
 悲しみに暮れつつチョコレートを一口食べて。
「…………」
 何故か言葉と動きを止めてしまったスイミーを見てしまいました。
「……急に黙りやがって。お前が静かだと気持ち悪いっての」
「んー……」
「あん?」
 また突っかかってくるなら受けて立ってやると、心の中で敵対心を燃やしつつ警戒している中、スイミーは口を開きます。
「あのさあオズ」
「なんだよ、珍しく名前で呼びやがって」
「オズって僕のこと好き?」
「知らねーし」
「僕はね〜オズのこと大好き〜」
 箱が手から落ち、床の上に着地すると同時にチョコレートが箱から飛び出して床に散らばりました。
「……え、お前、どうし、た……?」
 隠しきれない驚愕を披露しながら、もしや見ていない隙に偽物とすり替わったのでは……と疑い始めますが、
「どうもしないし〜? なんか頭がぼやぽやするだけだし〜?」
 頬を染めてニコニコしているスイミーを見て考えが次元の彼方へ吹き飛びました。
「は……はっ!? えっ!? お前まさかチョコレートボンボンで酔ったのか!? あの程度のアルコールで!? どんだけ酒弱いんだよ!」
「オズ〜」
「なんだなんだやめろやめろ! ひっつこうとしてんじゃねえ!」
「い〜じゃ〜ん。減るものじゃないし〜」
「俺のメンタルが削られるわ!」
 抱きつこうとしてくるのをなんとか阻止しようと相手の額を抑えて妨害。油断すると強制接触から逃れられそうにないので本当に必死。
 押し問答が続くと思われましたが、スイミーが腕を下ろしたのを見て、オズもそっと手を離してあげました。
 再び静かになるスイミー、オズは依然として警戒を続けます。そして、
「いつもごめんね、変に突っかかってさ」
 スイミーからポツリと出た言葉は謝罪でした。
「な、な、なんだよ突然……」
「僕、本当ね〜? オズのこと大好きなんだよ。前はともかく今はさ〜? 僕のことをちゃんと受け入れてくれたでしょ? マジで、全部」
「お……おお、そうだなそうだな」
「……等身大の僕のことを見てくれて、その上で肯定してくれた大人って、オズが初めてだから」
 心当たりしかない言葉。
 オズは頬をかいて、目を逸らしました。
「あー……確かにな」
「だから僕はオズのことが好き〜大好き〜大人は基本的に信用ならんけど、オズは別〜」
「あーはいはい。そうかよそうかよ。じゃあなんで普段はしょーもないことばっかして俺を怒らせるんだよテメェ」
「アレルギー的なやつだよ〜本当は大好きだから、嫌いにならないでね〜?」
「それはお前の努力次第だろ。普段からこんだけ素直に好意を示してくれるなら俺だって怒らねえよ。俺、売り言葉には買い言葉の性分だからな」
「でもリーヤちゃんには逆らわないよね」
「急にマジレスすんな!」
 絶叫した刹那、スイミーは膝から崩れ落ちて床に倒れました。
「え!?」
 驚愕したオズの耳に届いたのは、微かな寝息。
「寝るな馬鹿!!」
 結局、今日は仕方なく部屋に泊めてやったオズなのでした。



 その翌日、オズはネネイにチョコレートボンボンをほとんど食べれなかったことと落としてしまったことを含めて、謝罪に向かいまして。
「私のチョコレートボンボンでスイミーくんが酔うなんてあり得ないですよ? あのお酒は香り漬け程度に使ってるだけですし、そもそもスイミーくんはアルコールに強いのです! 前にお水と間違えてお酒を飲んじゃった時もケロリとしてたのです! バムくんはぶっ倒れたですけど……あれ? オズくん?」
 衝撃の事実を知り、しばらく絶句していたといいます。



「スイミーくんご機嫌だね。サンタさんきたの?」
「僕は遠回しに努力をしないと素直になれない悪い子だからサンタさんは来ないよー? 何言ってるのさことりちゃん」
「ああ、オズくんだね」
「やだやめて瞬時に読まないで怖い」


2025.12.25
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