クリスマスであれやこれ
クリスマス会が終わってもネネイは帰路につかず、雪が降り積もる極寒の校庭にいました。
「かっまくら♪ かっまくらっ♪ でっかーいかっまくーらつーくるーのでーす♪」
自作ソングまで口ずさみながら雪玉を転がし上機嫌、周囲に他の生徒など誰もいない孤独な作業にも関わらずテンションは最高潮に達していました。
幸せそうに雪と戯れている彼女を、震えながら見つめるセレスティアがひとり。
「……寒い」
黒羽のセレスティアことリーヤ。厚めのコートを着てマフラーを深く巻き、少し大きい手袋までしているにも関わらず、小刻みに震えていました。
寒さに凍えながらも視線は雪玉を転がしているネネイに向け続けています。何かを訴えるように、言葉にしない言葉が伝わることを夢見ながら……。
「かまくらー!」
夢は夢で終わりそうです。痺れを切らしたリーヤは深くため息をついてから、ネネイに向けて声をかけました。
「ちょっと……ネネイ……」
今にも消えてしまいそうなほどか細い声でしたが、耳が良いネネイにはしっかり届いていたらしく、足を止めてリーヤを見てくれました。
「なんです? リーヤちゃんもかまくら作るのです?」
「……なんで、かまくらなんて作るのよ……」
「冬といえばかまくらなのです! だから作るのです!」
「答えになってない……」
ため息をつく中、ネネイは雪玉を転がしながらリーヤの元に戻ってきました。
「リーヤちゃん、寒いなら帰ったらいいのです」
「帰らないわよ……ただでさえ、クリスマスとか訳わかんないイベントに参加させられてストレスだったのに、ネネイという癒しの存在まで手放したらたまったもんじゃないわ……」
「ストレスって言う割にはご馳走たくさん食べてたのですね」
「アナタが作った料理なら食べるに決まってるでしょ……美味しいんだもの」
「えへへへへ〜」
どんな状況でも料理を楽しんでくれたことが嬉しくて、照れながら後頭部をかきました。
「というか、リーヤちゃんクリスマス知らないのですね?」
「知ってるわけないでしょ……他の神の誕生日なんてどうでもいいわ……」
「じゃあサンタさんも知らないのです?」
「何それ……サタン……?」
「悪魔の王様じゃないのです。サンタさんは良い子にプレゼントをくれる妖精のおじいさんなのです! ま、正体はお父さんですけど」
「アナタの父親ってフェルパーなんじゃないの……?」
「そうなのですよ? 何を言っているのです?」
「は?」
ここで話が噛み合わないことに気付きましたが、寒さにより気力を失っているリーヤは言及できません。どうでもいいこととして聞き流す決断をしました。
「もういいわ……とにかく、寒いんだから寮に帰りましょうよ……魔力で暖房つけてくれてるから暖かいわよ……」
「えーまだ遊ぶのです」
「遊びたい盛りの子供すぎるわね……」
「リーヤちゃんって寒いのダメなのですね? 意外なのです」
「なんだっていいでしょ……アナタはなんでそんなに元気なのよ……」
「私はいつでも元気なのです!」
「あっそ……」
このおバカで純粋で真っ直ぐで可愛いフェルパーをどうすれば寮に連れ戻すことができるのか、寒さでうまく機能しない脳を回転させて考えますが、当然良い結果など出ません。相手がオズではないので暴力もあまり意味を為しませんし。
黙って悩んでいる最中、ネネイはリーヤの手袋に視線を移します。
「リーヤちゃんあったかそうな手袋してるのですね」
赤色の毛糸で編んだであろうクリスマスらしい手袋をじっと見て言いました。
リーヤは震えながら答えます。
「プレゼント交換でもらったのよ……誰が寄越したか知らないけど、結構ブカブカなのよね……」
「フリーサイズってやつなのですね。しょーがないのですよ、多種族混合の会であげるプレゼントならそーなっちゃうのです」
「そうね……でも、ないよりはマシ……」
ぼやくと同時に、ネネイはリーヤの手袋の中に右手を突っ込んできたではありませんか。
「ふぇっ!?」
思わず変な声が出てしまいましたが、ネネイは気にせずハイテンション。
「おおぉ〜確かにあったかいのですね! あったかい毛糸なのです! そしてめちゃブカブカです! 私とリーヤちゃんの手がすっぽり収まるのですー!」
率直な感想を述べるネネイを、リーヤは信じられないようなものを見る目で凝視していました。
「あれ、リーヤちゃん? どうしたのです?」
「……冷たいんだけど」
「さっきまで素手だったのですから、そら冷たいのですよ」
言いつつも気を遣って手を引っ込めようとした時、リーヤは手袋の中でネネイの手をしっかりと掴みました。
「みっ!?」
「捕まえた♪」
凍えていた弱々しい声はどこへやら。一気に上機嫌になったリーヤは嬉しそうに微笑んでいるではありませんか。右手にすごい力を込めたまま。
「ちょちょちょっと!? は、離して!? 離してほしいのです!」
「嫌よ。こうでもしないとアナタ、永遠に雪遊びをし続けるじゃないの」
「だって雪で遊んでかまくら作りたいのです!」
「なら離さないわ。寮に帰るまではね」
「うー……」
これでも前衛職としてバリバリに敵を倒しているため力に自信があるネネイ、掴まれている手に力を込めて抜け出そうとしますがびくとも動きません。まるで接着剤でくっついたよう。
セレスティアに腕力で負けている現実を突きつけられ、尻尾と耳が落ち込んだように垂れ下がってしまい。
「…………しょーがないのですね……帰るのです」
渋々敗北を受け入れたのでした。
「ふふ。素直でよろしい」
「帰るにしても。手袋の中で手を繋いでたら歩きにくいのですよ」
「私は構わないわ」
「私は構うのですー! 離されて逃げたりしないのですから、離すのですー!」
「嫌」
「ここは素直に離すところなのですよ!」
「私がアナタの言うことをすんなり聞くと思ってる?」
「そこは聞いて欲しかったのです」
「嫌♪」
「なんで絶妙に上機嫌なのです!? 意味わかんねーのです! はなせー!」
「ああ楽しい」
すっかり機嫌を直したリーヤは寒さも忘れ、暴れるネネイを楽しそうに眺め続けるのでした。
2025.12.25
「かっまくら♪ かっまくらっ♪ でっかーいかっまくーらつーくるーのでーす♪」
自作ソングまで口ずさみながら雪玉を転がし上機嫌、周囲に他の生徒など誰もいない孤独な作業にも関わらずテンションは最高潮に達していました。
幸せそうに雪と戯れている彼女を、震えながら見つめるセレスティアがひとり。
「……寒い」
黒羽のセレスティアことリーヤ。厚めのコートを着てマフラーを深く巻き、少し大きい手袋までしているにも関わらず、小刻みに震えていました。
寒さに凍えながらも視線は雪玉を転がしているネネイに向け続けています。何かを訴えるように、言葉にしない言葉が伝わることを夢見ながら……。
「かまくらー!」
夢は夢で終わりそうです。痺れを切らしたリーヤは深くため息をついてから、ネネイに向けて声をかけました。
「ちょっと……ネネイ……」
今にも消えてしまいそうなほどか細い声でしたが、耳が良いネネイにはしっかり届いていたらしく、足を止めてリーヤを見てくれました。
「なんです? リーヤちゃんもかまくら作るのです?」
「……なんで、かまくらなんて作るのよ……」
「冬といえばかまくらなのです! だから作るのです!」
「答えになってない……」
ため息をつく中、ネネイは雪玉を転がしながらリーヤの元に戻ってきました。
「リーヤちゃん、寒いなら帰ったらいいのです」
「帰らないわよ……ただでさえ、クリスマスとか訳わかんないイベントに参加させられてストレスだったのに、ネネイという癒しの存在まで手放したらたまったもんじゃないわ……」
「ストレスって言う割にはご馳走たくさん食べてたのですね」
「アナタが作った料理なら食べるに決まってるでしょ……美味しいんだもの」
「えへへへへ〜」
どんな状況でも料理を楽しんでくれたことが嬉しくて、照れながら後頭部をかきました。
「というか、リーヤちゃんクリスマス知らないのですね?」
「知ってるわけないでしょ……他の神の誕生日なんてどうでもいいわ……」
「じゃあサンタさんも知らないのです?」
「何それ……サタン……?」
「悪魔の王様じゃないのです。サンタさんは良い子にプレゼントをくれる妖精のおじいさんなのです! ま、正体はお父さんですけど」
「アナタの父親ってフェルパーなんじゃないの……?」
「そうなのですよ? 何を言っているのです?」
「は?」
ここで話が噛み合わないことに気付きましたが、寒さにより気力を失っているリーヤは言及できません。どうでもいいこととして聞き流す決断をしました。
「もういいわ……とにかく、寒いんだから寮に帰りましょうよ……魔力で暖房つけてくれてるから暖かいわよ……」
「えーまだ遊ぶのです」
「遊びたい盛りの子供すぎるわね……」
「リーヤちゃんって寒いのダメなのですね? 意外なのです」
「なんだっていいでしょ……アナタはなんでそんなに元気なのよ……」
「私はいつでも元気なのです!」
「あっそ……」
このおバカで純粋で真っ直ぐで可愛いフェルパーをどうすれば寮に連れ戻すことができるのか、寒さでうまく機能しない脳を回転させて考えますが、当然良い結果など出ません。相手がオズではないので暴力もあまり意味を為しませんし。
黙って悩んでいる最中、ネネイはリーヤの手袋に視線を移します。
「リーヤちゃんあったかそうな手袋してるのですね」
赤色の毛糸で編んだであろうクリスマスらしい手袋をじっと見て言いました。
リーヤは震えながら答えます。
「プレゼント交換でもらったのよ……誰が寄越したか知らないけど、結構ブカブカなのよね……」
「フリーサイズってやつなのですね。しょーがないのですよ、多種族混合の会であげるプレゼントならそーなっちゃうのです」
「そうね……でも、ないよりはマシ……」
ぼやくと同時に、ネネイはリーヤの手袋の中に右手を突っ込んできたではありませんか。
「ふぇっ!?」
思わず変な声が出てしまいましたが、ネネイは気にせずハイテンション。
「おおぉ〜確かにあったかいのですね! あったかい毛糸なのです! そしてめちゃブカブカです! 私とリーヤちゃんの手がすっぽり収まるのですー!」
率直な感想を述べるネネイを、リーヤは信じられないようなものを見る目で凝視していました。
「あれ、リーヤちゃん? どうしたのです?」
「……冷たいんだけど」
「さっきまで素手だったのですから、そら冷たいのですよ」
言いつつも気を遣って手を引っ込めようとした時、リーヤは手袋の中でネネイの手をしっかりと掴みました。
「みっ!?」
「捕まえた♪」
凍えていた弱々しい声はどこへやら。一気に上機嫌になったリーヤは嬉しそうに微笑んでいるではありませんか。右手にすごい力を込めたまま。
「ちょちょちょっと!? は、離して!? 離してほしいのです!」
「嫌よ。こうでもしないとアナタ、永遠に雪遊びをし続けるじゃないの」
「だって雪で遊んでかまくら作りたいのです!」
「なら離さないわ。寮に帰るまではね」
「うー……」
これでも前衛職としてバリバリに敵を倒しているため力に自信があるネネイ、掴まれている手に力を込めて抜け出そうとしますがびくとも動きません。まるで接着剤でくっついたよう。
セレスティアに腕力で負けている現実を突きつけられ、尻尾と耳が落ち込んだように垂れ下がってしまい。
「…………しょーがないのですね……帰るのです」
渋々敗北を受け入れたのでした。
「ふふ。素直でよろしい」
「帰るにしても。手袋の中で手を繋いでたら歩きにくいのですよ」
「私は構わないわ」
「私は構うのですー! 離されて逃げたりしないのですから、離すのですー!」
「嫌」
「ここは素直に離すところなのですよ!」
「私がアナタの言うことをすんなり聞くと思ってる?」
「そこは聞いて欲しかったのです」
「嫌♪」
「なんで絶妙に上機嫌なのです!? 意味わかんねーのです! はなせー!」
「ああ楽しい」
すっかり機嫌を直したリーヤは寒さも忘れ、暴れるネネイを楽しそうに眺め続けるのでした。
2025.12.25
