クリスマスであれやこれ

 怒涛のクリスマス会を終え、ことりはルンルンの部屋を訪れていました。
 恋人同士が聖なる夜を過ごす……という甘い理由ではなく、現在のことりの部屋は汚部屋を超えた汚部屋と成り果てており滞在するのは非常に難しいからです。どうしてこうなるのか、理由は不明。
「楽しかったね、クリスマス会」
「はい! もちろん! ことりさんがいますから!」
「他にもあると思うな」
 淡々と述べた言葉はルンルンには届きません。ことりと一緒にクリスマスを過ごしているという夢のような状況で有頂天となっているため、都合の悪い雑音をシャットアウトしている状態です。つまりはいつものルンルン。
 さて、クリスマス会で行った一大イベント……プレゼント交換でことりが手に入れたのは背中に抱えられるほどの大きな袋です。
 赤色でラメが入ったギラギラした袋、開けないと中身が全く見えない代物。
 ことりは何も言わず、袋を床に置くとリボンをほどいて開けみて、プレゼントの中身を取り出します。
「おお」
 思わず関心の声が出ました。袋から出てきたのは赤色が主体、襟や袖だけ白い布をあしらっているサンタクロースを意識した衣装なのですから。ご丁寧に帽子もついてます。
 ルンルンもそれを見て、
「まあ、ことりさんはサンタの衣装を貰ったんですね! きっとお似合いになるかと!」
 歓喜の声をあげている最中もことりは衣装を取り出していきます。
 完全に姿を現したのはサンタクロースを意識した赤と白のワンピース。ことりは早速自分の体に合わせてみますが、どこをどう合わせてもスカートの丈が短すぎます。
「ちょっとパンツ見えるかも」
「た、確かにそれを着るのは破廉恥になってしまいますね……ズボンの類はありますか?」
「なかった」
 淡々と答え、ルンルンの部屋にあったスタンドミラーの前に立って衣装と合わせてみますが、やはり制服のスカート丈よりも短く、タイツやズボンなどの隠すものがなければただの変態と成り果てるでしょう。
「ダメそう」
「そ、そうですね……」
 何故か気まずそうに目を逸らしているルンルン。頬は赤く染まっており、時折「ダメです! そんな破廉恥なことなど!」と大きな独り言を発しています。
 全てをスルーしたことりはルンルンに向き直り、
「バハムーンじゃなくてクラッズとかドワーフとか、背が低い種族用の衣装だったのかな。でも、それだと逆にブカブカになりそう」
「しっ、真意は分かりませんが!? きっとそうなのでしょう! ええ!」
「どうして慌てているの?」
「なんっ、でも!? なんでもありませんよ!?」
 ことりは首を傾げてしまいました。これほど慌てていて何もない訳がないことぐらい、感情の起伏がほとんどないことりにでも分かります。
 そこで、ほんの少しだけ考えて。
「何か隠してる?」
「まさか! こ、ことりさん相手にやましいことなどちょっとしか考えていませんよ! ええ!」
「ちょっとはあるんだね」
 素直なことりは素直に受け取りました。
「ふう……ことりさんは相変わらず大胆ですね……これでは私の心臓がいくつあっても持ちません」
「これ着るのが大胆なの?」
「え……あ、はい……は、破廉恥ですし……」
「パンツ見えるもんね」
 サンタクロースの衣装を畳んで袋に戻し、ルンルンがホッと一息ついたところで。
「そうだ。ルンルンちゃんに聞きたいことがあったんだ」
 突然話題を変えたことで、ルンルンの表情がパッと明るくなります。
「はいなんでしょうか! ことりさんからの質問でしたら聡明かつ博識な私がなんでも答えてみせましょう!」
「クリスマスって恋人たちの特別な夜だってよく言うよね」
「もちろん!」
「具体的には何をするの? ルンルンちゃんとそれをしてみたいな」
 素朴かつ純粋な疑問を聞き届けたルンルンは……真っ赤になって固まってしまいました。
「あれ?」
 再度首を傾げたことりが声をかける前に、我に返ったルンルンはそれはそれは慌てていまして。
「そ、そそそそそそそそそそそれは!? ちょっと!? その! 早いといいますか! あのっ!」
「何が?」
「じ、じ、時期というか……」
「時期? 時期って?」
「私たちはその、まだ、先の話と言いますか……ま、まだ早いです! その時じゃないんです!」
「どうして?」
「やっ、そ、ええと、み、未成年……ですし……」
「……」
「いやその、将来的にはこうなるといいますかなるべきであると言いますか、しかしことりさんの精神年齢を考えるともう少し……いやかなり先でも良いような気がしてしまいますかなんというかあのえと」
「ルンルンちゃん」
「はいっ!」
 名前を呼ばれ、ルンルンは背筋をしっかり伸ばしてことりを見てくれました。
 いつも通り、表情筋をあまり動かしていないことりは、彼女の目を見て言います。
「ルンルンちゃんは将来、私とどうしたいの?」
「白くて大きくて素敵なスイートホームで未来永劫愛し合って過ごしていきたいです!」
「うん。じゃあ、ずっと一緒にいるってことだね。だったら、隠し事は少ない方がいいと思うな」
 ルンルンは言葉を止めました。
 ことりは続けます。
「誰かに聞かれたくない、知られてほしくない絶対に譲れない何かがあるっていうのは仕方ないと思うし、そういうのは私にもあるよ? でもね、今日のルンルンちゃんは私に言えないことがちょっと多い気がする。そういうのは寂しいし、嫌だな」
 表情変化が少ないことりが珍しく見せる、悲しげな顔。
 ルンルンは、クリスマスの特別な夜に感じたくなかった後悔を覚えるのと同時に、言葉が飛び出していました。
「ご……ごめんなさい、ことりさん……私、アナタのことを愛しているというのに信頼しきれていなかったんですね……」
 罪悪感により視線を落としてしまった彼女の手を、そっと取ります。
「大丈夫、すれ違いなんてどんな関係であってもたくさんあるんだから気にしちゃダメだよ。すれ違う度に、違っていた道を戻してあげればいいだけだから」
「ことりさん……! はい!」
 感激して顔を上げるルンルンの目尻には涙が滲んでいましたが、その表情は幸せそのものでした。
「それで、クリスマスの恋人たちって何をするの?」
「あ……で、では教えますね。私たちではできない理由も含めて……あまり大きな声では言えないので耳を貸してください」
「こうかな?」
 ルンルンはことりに耳打ちをし始めました。そして終わりました。
「……………………あー……えっと」
「…………そういうことです……」
「………………ごめんね」
 お互い真っ赤になっていて、目も合わせられなくなってしまったのでした。


2025.12.25
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