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冒険メシ

 森の中。
 木々の隙間からは木漏れ日が差し込み、小さな風が吹く度に葉っぱが揺れさわさわと小さな音を奏でる、静観で美しい森です。
 しかし、豊かな自然で生活しているはずの動物はおらず小鳥の鳴き声すらもありません。森に響く自然の小さな音は、不気味さを彩るだけの不快な音と成り果てています。
 原因はひとつ、美しい自然とは不釣り合いの魔物が歩いているからです。
 全長四メートル近くある巨大な魔物。牛のようなという比喩を通り越して牛そのものとも言える頭部、体は人間に近く腹筋はしっかり六つに割れていて、腰から下は全て赤黒い毛皮に覆われており足は蹄。右手には木を切り倒して作ったのであろう棍棒が握られていました。
 その魔物が歩くだけで小さな地響きが地面を襲い、遠くにいる動物たちは振動と異様な気配に怯え、住処を忘れて一目散に逃げてしまいます。
 森を異質な雰囲気に包んでしまった張本人は地響きを繰り返しながら歩いていき、足を止めました。
 目前に人間が立っていたからです。
「……」
 白髪に水色の瞳を持つ、少し珍しい風貌の少年でした。
 赤いジャケットに白い半ズボンに赤いブーツと紅白なファッションに腰のベルトにはポーチを下げ、右手には自身の武器である槍を持って魔物の前に立ち塞がっています。年齢は十代前半ほど。髪型はポニーテール。
 ごく普通の子供であれば一目散に逃げ出すでしょうが、彼は踵を返すどころか魔物を睨み、槍を構えて臨戦体制を整えるではありませんか。
「お主の悪運もここまでじゃ」
 外見の割に古風な喋り方の少年は魔物に向けて言い放ちました。
 魔物がそれを理解したのかは定かではありませんが、目の前の獲物を叩き潰そうとして右手に持っていた棍棒を振り上げ……、
 その手の甲に矢が刺さりました。
「グガア!」
 痛みのあまり魔物が悲鳴を上げ、持っていた棍棒から手を離してしまいます。
 かなりの質量を持った棍棒が地面に叩きつけられ、ずしんと重圧的な音が響くと同時に少年は駆け出しました。
 地面を蹴って軽く飛べば槍を振り上げ、振り下ろすと同時に手を離します。
 槍は勢いよく少年の手から飛び出して行き魔物の足、人間で言えば踵の少し上辺りを貫通。
 その肉を貫いたまま地面に突き刺さり、魔物の足と地面を無理矢理繋ぎ合わせてしまいました。
「ギャゲェ!」
 なんとも表現し辛い汚い悲鳴が出て、
「今じゃ!」
 少年が空に向かって叫べば、木々の間から人間が降ってきました。
 剣を持った人間は魔物の左肩に刃を突き立てると、落下する勢いを利用したまま股下まで刃を落とします。
 そのまま地面に着地した人間は返り血がかからないように下がると、魔物が動かなくなったことを確認してから剣を振って血を払い、腰に下げた鞘に納めます。
 完全に切断とまではいかなかったものの上から下まで切られた魔物は大量の血を噴き出すと、悲鳴を上げないまま動かなくなってしまいました。
「討伐完了じゃな。うまくいったのう、アヤノ」
 白髪の少年が人間に向かって歩いていけば、アヤノと呼ばれた人間の若い女性はすぐに振り向いて、
「うん!」
 とびっきり可愛らしい笑顔を見せてくれました。
 赤い長髪に青い瞳、耳には白いイヤリングをしており、紺色の長袖上着を着ているものの首元から下はレオタードのような服装をしています。
 それだけではなく、胸元が大きく開いているため平均よりも大きな胸がこれでもかと強調されており目のやり場にやや困ってしまいますね。
 余談ですがこの服は背中がとても広く開いている露出スタイルなので、この服装は実は下着なのではないかと物議を醸しているとか。
「ヤトちゃんも囮役ご苦労様、怪我はなかった?」
 白髪の少年を“ヤトちゃん”と可愛らしく呼ぶものの、彼は不機嫌になる様子もなく、
「問題はないぞ。ワシもちゃんと役割を完遂したわい」
 腕を組んで満足げに頷いていました。
 その様子がとても可愛らしかったのかアヤノはヤトを撫でようと手を伸ばしますが、寸前のところでするりと横に回避されてしまいました。
「むう」
 頬を膨らませてちょっとだけ不満そうになっていると、
「アヤノさん、ヤトさん」
 落ち着いた青年の声が二人の名前を呼びました。
 声の主は慣れた様子で木から降りてきて、二人の近くまで足を進めます。
 紺色を主体とした整った服装はまるで貴族のようで、上から下まできっちり着込んでおり露出は非常に少なめ。腰に下げた矢筒と手に持っている弓からして魔物の手に矢を打ち込んだ張本人であることは間違いありません。
 短い黒髪で右の前髪だけ長く伸ばしており右目にかかっています。瞳の色は青色で目つきはやや鋭いですが精悍な顔つきのお陰でそこまで気になりません。
 俗に言う美少年に分類されそうな彼ですが、
「一発で成功してよかったですよ、あの特性矢は作るのがクッソ面倒くせえので……何度も作り直す羽目にならずに済んで」
 ご覧の通り口は悪いですしそれを隠す様子もありません。
「ヘヌンシア……そういうことを軽々と口にするでない」
 ヤトはヘヌンシアと呼んだ青年を嗜めるも、
「わかってますよ。だからこうして全部終わった後にぶちまけたんじゃないですか」
 彼は面倒くさそうに目を逸らすのでした。
「ヘヌくんだったら全部終わってなくても言ってそうだけどね」
「さすがアヤノさん、俺の性格をよく理解しておられる」
 信用がないと受け取れるような台詞ですがヘヌンシアは肯定的に受け取るのでした。
「お主のう……」
 またもや呆れ果てるヤトですがその直後、立ったまま絶命していたであろう魔物がぐらりと動きます。
「ん?」
 ふと上を見れば魔物がこちらに向かって倒れそうになっているではありませんか。
「マズイ倒れるぞ!」
 アヤノとヘヌンシアに向かって叫び、事態に気づいた二人が顔を青くさせた刹那、
 魔物の額が爆発しました。
 正確には魔物の額に衝突した火球が爆発して魔物の頭部を軽く焼きました。
 爆発の衝撃で魔物は後ろに倒れていきます。
 重量がある分ゆっくりと倒れていき……やがて、背中と地面が衝突して軽い地響きが生まれました。
「…………」
 三人がぽかんとしている中、近くの草むらから少女が顔を覗かせます。
「危なかったね」
 そのまま全身ごと姿を表し、オレンジ色のツインテールについた枝や葉っぱを払います。
 明るい紫色で丈の短いワンピースのような格好、スカートの下からは黒いスパッツがチラリと見え、腰に巻いたベルトには大きな赤いポーチが左右それぞれ二つぶら下がっています。小手についたハートマークがチャームポイントだと本人談。
 少女は緑色の双眸を三人に向けます。仏頂面にも取れる表情で。
「とっさにファイアアローを撃ったけど流れ弾とか当たってないかい?」
 三人が黙って首を振ると、少女はホッと胸を撫で下ろします。
「よかった……作戦にはなかったアドリブ行動だったからもしもが怖くてね。みんなに怪我がなくてよかったよ」
「あ、ありがとうございます。ミケリィさん」
 ミケリィと呼ばれた少女は満足そうに頷きました。



 アヤノ、ヤト、ヘヌンシア、ミケリィの四人は冒険者をしています。
 冒険者というのは未開の地を探索したり、魔物を退治したり、商人を野盗から護衛したり、街の治安維持に貢献したり……簡潔にまとめると報酬さえ与えれば大抵のことをしてくれる「何でも屋さん」です。
 もちろん「何でも屋さん」という生き方をせず、探索を専門にしたり魔物退治だけに拘ったりとそれぞれのルールを決めている冒険者も存在しますが今は割愛しましょう。
 この四人は元々、各自ソロで冒険者活動をしていましたがとあるダンジョンで遭難したところ偶然か運命か……とにかく出会ってしまい、紆余曲折あってダンジョンを脱出した後もこうしてパーティを組み、冒険者活動に勤しんでいました。
 帰る場所も行く宛がない四人にとって冒険者は「生きるために必要不可欠な手段」だからです。
「私は帰る場所があるけどね」
「ミケちゃんどうしたの?」
「なんでもないよ」
 討ち取った魔物のすぐ横で、アヤノとミケリィは火を起こしてキャンプの準備を始めていました。
 一行が本日請け負った依頼はピオーネ近くの森に住み着いてしまった牛の魔物を討伐すること。
 牛の魔物と聞いてカトブレパスのような可愛らしい魔物を想像していたアヤノは意気揚々と依頼を受けたのですが、討伐対象の魔物はご覧の通り巨大な牛人間モドキだったため……詳細を聞いた時に幻滅した彼女の表情を仲間たちはしばらく忘れることはないでしょう。
「可愛い魔物がよかったなあ、テンション上がるのになあ」
「仕方ないよ。ここはもう封印の地じゃない、多種多様の魔物や凶暴な獣が跋扈する現実世界なんだから」
「わかってる、わかってるもん……でも最近可愛い魔物が見れてないからちょっと憂鬱」
 魔物に可愛さを求める酔狂な人間をミケリィは無言で眺めていれば、
「で、この魔物はどうするんですか? 一部だけ持ち帰って土に還すのか、面倒だけど全部持って帰るのか」
 魔物の死骸を眺めながら言うヘヌンシアの表情は非常に憂鬱、これ以上労働したくないと言わんばかり。
 魔物討伐依頼の場合、口頭での報告は原則として認められておらず、指定された魔物の死骸かその一部を証拠として持ち帰らなければギルドが依頼の完了を認めてくれません。
 証拠である魔物の一部は魔物によってまちまちで、ギルドが指定した複数の候補の中からひとつ以上を持ち帰ることが決まりになっています。
 魔物の大きさによっては運搬が困難にあることもあるため、それを考えてできた制度なんだとか。
「もちろん全部持って帰るよ! ここで解体して持ち運びやすいようにしてミケちゃんの氷結魔法で固めて、森の外に待機させてある馬車に詰めるだけで詰めて持って帰る!」
「だからいつもより大きな馬車で来たんですね。めんどくさいなあ……」
 アヤノの提案にヘヌンシアは怪訝な顔「アタシも手伝うから」と言われても表情が緩むことはありません。
 助け舟を出したのはミケリィでした。
「まあまあそう言わずに。いつもより大きい魔物だから解体作業に時間かかって億劫だっていう気持ちはわかるけど、私の風魔法もあるんだし切断はそこまで大変じゃないはずだ。運ぶのだってみんなでやればすぐに終わるよ」
 なんて言いながら組み上げた薪に魔法で火を灯し、焚き火を完成さえたら次の作業に向けて腕まくり。
 その言葉に折れたのかヘヌンシアはため息を吐いて、
「分かりましたよ……でも、やっぱりもうちょっと高性能な解体道具買いましょうよ」
「はいはい。今日の報酬を貰ったらね?」
 子供を嗜めるように言うアヤノの横で、
「…………ワシの槍、魔物に押し潰されて使い物にならなくなっておるんじゃが」
 ヤトが力無くつぶやいていました。


 先述しておきますと、四人はこの世界の人間ではありません。
 というかそもそも人間ですらない。アヤノを除いて。
 アヤノは勇者です。人間の勇者です。
 別の世界で魔王を倒すために召喚されたものの、厄介払いとしてこの世界に追放されてしまった元勇者。生まれは地球という惑星の日本という国なんだとか。
 ヤトは大昔、豊穣を司る神様でした。
 色々あって別の豊穣神の眷属になりましたが、務めを頑張りすぎた結果仕えていた豊穣神が堕落、罰と見せしめとして力を奪われ、神になりたかった人間のなれ果てである「神人」に転生させられてしまい、この世界に追放されてしまいました。
 ヘヌンシアは魔族であり、魔王の子のひとりでした。
 強者こそが絶対正義という魔界のルールに耐えられず自ら罪を犯した結果、人間の世界に流刑されこの世界に辿り着きました。
 ミケリィは宇宙人です。
 人間が普段から口にする食物について研究するためにこの世界に来て調査と研究を続けています。今は人間の少女の姿をしていますが本来の姿はとても……恐ろしいものです。
 住んでいた世界も生まれの種族も全て異なる四人がこの世界で出会い、絆を深め、冒険者としてパーティを結成したのは他にはない奇跡と称しても過言ではありません。
 そんな四人は今、まさに、
「完成したよ。今日はシンプルに焼いてみた」
 誇らしげにミケリィは言いました。
 フライパンの上には食べやすいようにサイコロ状に切られたお肉たち並び、じゅうじゅうと音を立てながら肉汁を吹き出し、香ばしい匂いを発していました。
 どこをどう切り取っても「美味しそう」という感想しか出てこないであろうサイコロステーキたちを見て、焚き火の周りで料理の完成を待っていたアヤノとヤトとヘヌンシアの目が輝きます。
「美味しそう! ミケちゃんすごい!」
「まるで高級なレストランにありそうなサイコロステーキじゃのう!」
「焼くだけでここまで魅せるとは……さすがミケリィさん」
「どやあ」
 口で誇らしげに言った後、トングを使ってステーキを各自のお皿によそっていきます。
「中まで十分火は通っているはずだけど、もう少し焼きたかったら言ってね。加熱するから」
「もう一回焼くの?」
「私のファイアボールで」
「わお」
 魔法を使った調理もすっかり慣れっこでアヤノたちもそこまで驚きません。
 なお、宇宙人であるミケリィが魔法を使える理由としましては「通信教育で頑張って覚えた」なんだとか。
 全てのサイコロステーキを配膳し終えると、もう一度フライパンを焚き火に乗せて、
「これからフライパンに残った油でソースを作ろうと思うけど、別の付け合わせがよかったら遠慮なく使ってくれていいよ」
「本格的ですね。俺はソースができるまで少し待ちますよ」
 ヘヌンシアが羨望の眼差しをミケリィに向ける側で、
「アタシはお塩で食べよっと」
「ワシはレモン果汁でさっぱり食おうかのう」
 アヤノは岩塩を削って作った塩、ヤトはあらかじめ作っておいたレモン汁が入った小瓶を出すとそれぞれ自分のサイコロステーキにかけてます。
「ミケリィさん、ソースってどれぐらいでできるんですか?」
「材料を入れて一煮立ちさせたらすぐにできるよ」
 持参してきた調味料を手早くフライパンに入れてヘラで混ぜれば、熱々油を元にしたソースはすぐに煮立ってきたので、火からさっと離します。
 フライパンを傾け、ヘヌンシアと自分のサイコロステーキにソースをかけて、今度こそ完成です。
「できたよ」
 空になったフライパンを調理台代わりにしている木の板に置いて、全員の手元に完成したサイコロステーキが届きました。
 一行を代表してアヤノが両手を合わせます。三人も一緒に両手を合わせれば、
「いただきま〜す!」
 全員で食事の前の挨拶をして食べ始めました。
 フォークでサイコロステーキを刺し、熱々なのを気にせずそのままひとくち。
「美味しい!」
 アヤノは宝物を見つけた子供のように青い瞳をキラキラと輝かせ、フォークを持ったままの手でほっぺたを抑えました。
 まるで「美味しすぎてほっぺたが落ちる」という言葉を信じている子どものような愛らしい姿にミケリィは鼻を鳴らし、
「焼き加減にコツがあるのさ。私だけが熟知しているやり方がね」
「いつも思うんだけどミケちゃんってその焼き加減のコツを教えてくれないね? どうして? なんで?」
「特許申請がいるからだよ」
 真顔で言いましたが嘘です。純粋に信じてしまったアヤノの羨望の眼差しが止まらなかったそうな。
「あんな筋肉質でガッチガチの魔物だというのに肉は意外と柔らかいのう、ミケリィの調理のお陰とも言えるじゃろうが」
「中身が柔らかくて傷付き易いから外皮は硬質になっているだけかもしれませんね。アヤノさんが上空から飛び降りて勢い任せてないと斬れなかったぐらいには」
「あれぐらい大胆なことしないとアイツは倒せないって思ったんだもん」
「まあ大胆でしたね、アホと紙一重ですけど」
「あれれ?」
「そのアホに文句ひとつ言わずに協力するお主もお主じゃがな」
「俺がアヤノさんの命令に逆らうワケないじゃないですか、文句は言いますが」
「あれだね! 口は反抗しているけど体は正直なやつ! 昔友達が持っていた同じ……漫画で見たことある!」
「どーゆー漫画なんじゃそれ」
「ろくでもない内容だったんですよきっと」
「……それはちょっと否定できない」
「サイコロ肉はたくさん作っておいたからどんどん焼いていくね。皆が嫌と言うほど……違うな、嫌と言っても私は肉を焼き続ける」
 空になっていたフライパンに追加のサイコロステーキ肉を置いて焚き火の上に置けば森の中に肉が焼ける音と香りが漂います、二度目です。
「焼くのはいいんですけど食べ切れる分を焼いてくださいよ」
「残っても持って帰るから平気」
「確かにキューハさんがいれば無限に持って帰れますけどねえ……」
「ミケちゃん、焼く前のお肉って残ってる?」
「肉屋に卸せる以上には」
「じゃあこれで明日の晩御飯を作るね! お肉を甘辛く煮て白いパンで挟んで食べるやつ! すっごく美味しいんだ!」
「それはいいね、この肉もきっと肉屋が買い取ってくれないから出来る限り自分達で消費してしまわないと」
「やっぱり駄目なのか? ミケリィのせーるすとーく? というのを駆使してもか?」
「逆に怒られたよ“こんなゲテモノを置いたらウチの店が潰れるだろうが!”って、美味しいのになあ」
「また魔法使いや魔女が買い取ることになるんでしょうね、これ」
「アタシずーっと聞きたかったんだけど魔女や魔法使いってお肉をどうしているの? 食べてるってワケじゃないよね?」
「魔法的な技術の発動や魔術の実験材料として使われるらしいよ、見たことはないけどね。美味しいのに勿体無いなあ」
「調理法が確立されておらん上に大抵の人間は嫌悪感を持つから難しいのう」
「ふーん……でも、いいんじゃない? 美味しいものを独り占めしているっていうのも悪い気がしないし、むしろ気分良いし」
「言えてますね。その気持ちはよーく分かりますよ、俺」
「美味いものは分け合うべきじゃが、皆が拒否するなら押し付けるのも罪じゃし……」
「サイコロステーキのおかわりができるよ。いる人は誰?」
「アタシ!」
「ワシ!」
「俺」
 賑わいながら食事をとる一行の背後で、腹部を綺麗に切り取られた魔物の死体がそよ風に撫でられているのでした。





 ピオーネの街。
 街のシンボルとも言われている冒険者ギルドは夜になっても賑わいと活気を失いません。
 冒険者たちが行き交い、併設された酒場で飲み食いしたり掲示板を見て依頼を受けたり、冒険者仲間と情報交換をしたりと各々が目的を持ったり持たなかったりしながら過ごしていました。
 そんなギルドの依頼受付場にアヤノはいました。
「はい、鑑定魔法にも異常は見られなかったので討伐対象魔物の角と蹄を確認したことになります。こちらが報酬です」
 受付の女性が報酬の入った袋をトレイに乗せて差し出します。
「ありがとうございます」
 アヤノは小さく会釈して報酬を受け取りました。
「角と蹄の売価額も報酬の中に入っているのでご確認ください。あと、お持ち頂いた魔物の死骸ですが大きさが大きさなので鑑定額は明日以降のお渡しとなります」
「分かりました」
「ところで、その……ギルドに持ち込んで頂いた魔物の死骸なんですけど……」
「はい」
 受付の女性の顔色が悪くなり、アヤノから目を逸らしてしまいます。
 見るからに体調が悪い様子ですが彼女は貧血持ちだと聞いているアヤノ、嫌な顔ひとつしないで優しく声をかけてあげます。
「大丈夫ですか? 今日のお仕事も大変だった……とか?」
「いえまあ、そうですけど……ええと、話を戻しますと魔物の死骸の肉や内臓がごっそり抜かれてたのって……やっぱり……」
「美味しかったですよ!」
 笑顔で答えました。
 隣の窓口で聞き耳を立てていた別の冒険者と受付がすごい顔をしてアヤノを凝視していますが、当人は知ったこっちゃないので興奮気味に続けてしまいます。
「ギルドに死骸を丸ごと持って帰って換金してもらえるのが一番かもしれませんけど、やっぱり戦闘した後の腹ごしらえって必要ですしご飯代もちょっとだけ浮くし何より美味しいので! 解体した死骸を持ち帰る際には細心の注意を払って安全かつなるべく清潔にしているつもりだったんですけど……どこかに不備がありましたか?」
「いえいえ!? むしろ倒した魔物の死骸をなんの処置もせずに持ち帰る冒険者さんより丁寧な仕事をしていると解体班の間では評判ですよ!? 私が気になるのは……えっと、これは、受付としてではなく私個人の疑問なんですが……」
「なんですか?」
「アナタたちは四人パーティを組んでいる冒険者さんですが生活に困窮しているわけでもない、私からすると一般的な冒険者としての生活をしていると思います。あくまでも私個人の感想ですが」
「ふむふむ」
「それにピオーネにも、いや、ピオーネだけではなく他の国や地域にも美味しいものは沢山あります。なのにどうして? 世間一般的にはあまり好まれていない魔物を食べるんですか? 魔物を食べないといけないぐらい生活に困ってるワケでもないしこの世界には美味しいものは沢山あるのに、どうして……?」
 顔を青くさせながらも女性は尋ねました。
 いつの間にか周囲の注目をすっかり集めてしまっていたのか隣の冒険者や受付だけでなく、通りすがりのギルドスタッフ、脇で見ていた野次馬冒険者、アルバイトの少年少女諸々……皆が答えを待っています。
 それらをちらりと一瞥してから、アヤノは答えます。
「美味しいからです!」



「お待たせ〜報酬受け取ってきたよ!」
 依頼が張り出されている掲示板の前にやってきたアヤノを待っていたのはヤトとヘヌンシアの二人でした。
「ご苦労じゃったの」
「お疲れ様ですアヤノさん、何か話し込んでませんでした?」
「ちょっと世間話をね」
 淡々と答えてからアヤノは二人の間に並んで立つと、掲示板を見上げます。
 冒険者ギルドにはピオーネの街内外から多くの依頼が寄せられていて、掲示板には常に人々の願いや悩みが張り出されています。冒険者の街と称されていることもあって、ギルドの掲示板が空になることはまずありません。
「何を見てたの?」
「明日の仕事の下見じゃ。今の内に何にするか決めておいても良いと思っての」
「なーるほど」
 それならばとアヤノも明日の仕事を探すために依頼を吟味……する前に、
「って、ミケちゃんは?」
「また酒場のマスターと料理談義ですよ。魔物を料理することに肯定的な同士だからとか言って」
「あーらそっかあ、じゃあ仮でいくつか押さえておいてミケちゃんの意見も聞きつつ受けるって感じの方がいいかなあ」
 と言い、改めて掲示板に張り出されている依頼を見ます。
 街道付近に現れた魔物の討伐、最近見つかったダンジョンの探索、大型ダンジョンを探索したまま帰ってこない冒険者の捜索、民家の屋根の修理、弱い魔物と出会った際の対処法の講習……。
 多種多様な依頼がある中、アヤノはひとつの依頼に目を留めてます。
「あれ……」
 魔物退治の依頼。内容と報酬額の情報を頭の中に取り入れた途端には、
「これ!」
 それはそれは嬉しそうに掲示板から剥がしました。
 すぐ隣で仲間二名が別の依頼を剥がしていることに気付くのはこの三秒後です。



「というワケでミケちゃん!」
「どれに行くべきかミケリィさんが選んでください!」
「ワシらだけでは埒があかんのじゃ!」
 場所を変え、冒険者ギルドに併設されている酒場。
 酒場のマスターとの料理談義を終えたミケリィは四人がけテーブルに座り、夕食でも頼もうとした矢先に明日の仕事を選んで戻ってきたアヤノたち三人に詰め寄られていました。
 ぽかんとしていたままの彼女の前に置かれたのは、それぞれが選んできた依頼。
「アタシはこれがいい! このラフレシアウッドとかいう植物系の魔物に実ってるフルーツがめっちゃくちゃ美味しいって聞いたことあるの! コンポートにして食べてみたい!」
「西の海岸でヴェルズフィッシュの大量発生ですよ! あの魚の内臓って美味しいんです! 行くべきです!」
「この鼠の魔物は魔物として分類されておるがその爪を粉末にしたモノは魔除け効果が期待される神聖なアイテムにもなるそうじゃ! ワシはそれに興味がある!」
 それぞれの意見を熱弁する三人に対しミケリィは取り乱すことなく、
「おーけーわかった。とりあえず一旦座ろうか、座って落ち着いて話をしよう」
 丁寧に宥めるとアヤノはミケリィの正面、ヘヌンシアはミケリィの隣、ヤトはアヤノの隣の席に着きました。
 座ったところで落ち着きを取り戻せるワケではありませんが、ミケリィは小さく咳払いをして話を再開します。
「それぞれに行きたい依頼があるけど誰ひとりとして譲ろうとしないから、パーティの料理担当である私に決めて欲しいってことだね。現地で魔物を調理するのは私の担当であり、数多い楽しみのひとつでもあるから」
 見解にアヤノたちは大きく頷き、ヘヌンシアが真っ先に訪ねます。
「単刀直入にお聞きしますが、ミケリィさんはど魔物を調理したいと思いましたか?」
「そうだなあ……何も深いことを考えずにアヤノが選んだ依頼を……」
「ホントに!?」
 喜びのあまりアヤノが席から立ち上がりますが、
「と、言いたいところだけどこれでも料理研究家としてプライドがある。私情で仕事を選ぶことは私にはできない」
「なあんだ……」
 がっくりと肩を落としてもう一度座りました。
「仕事に関係なかったらアヤノさんが選んだ依頼を受けてたんですね」
「当然」
 「他に何かあるとでも?」という内なる声が聞こえてきそうなほど、自信に満ち溢れた表情でした。
「どっかの性格が悪い奴と違ってミケリィがプライドのある奴で良かったわい。しかし、だったら誰の依頼を選ぶんじゃ?」
 ヤトがミケリィに尋ねると、ヘヌンシアがすごい形相でヤトを睨みつけました。少年は知らん顔で無視ですが。
「そうだなあ」
 男二人のくだらない小競り合いは無視の方針で、ミケリィはまずヘヌンシアが選んだ依頼文を手に取ります。
「ヴェルズフィッシュ……封印の地で何度も食べたことはあるから調理法はある程度分かる。でも内臓にちゃんと手をつけたことがなかったから、内臓が美味しいというヘヌンシアの意見を確かめたい」
 次にヤトが選んだ依頼文を手に取り、
「神聖な鼠とは初めて聞いたよ。ヤトは最近こういった神秘的な言い伝えがある魔物に目をつけることが多いね、そういう魔物を調理する機会は滅多にないからチャンスを無駄にしたくないなあ」
 最後にアヤノが選んだ依頼文を手に取って、
「ラフレシアウッドは最近見かけたことはあった。その時は実じゃなくて花を多くつけていたからそれが果実になったってことだね? 魔物が作るフルーツ、とても興味があるなあ」
 感想を述べた後、依頼文をテーブルの上に置き直してから肘をついて両手を組み、顎を乗せました。
 そして、
「……決められない」
 最悪の一言を口にしました。
「どれもこれも興味があるからひとつに絞ることができない」
「散々焦らしておいてそれですか!?」
「食に貪欲すぎて全てに興味関心を抱いてしまうから選択できんということか……」
 ヘヌンシアとヤトが呆れる中、アヤノは両手をぽんと叩き、
「じゃあこうしよう! 全く事情を知らない人に直感で選んでもらうの! それなら誰も文句は無いでしょ?」
 聞こえによってはただの丸投げですが、途方に暮れかけている一行にとってはこれ以上にない名案でした。
「なるほど! 採用じゃ!」
「さすがアヤノさん、アホなのに時々有益な発言をしますね」
「も〜ヘヌくんったら、褒めても依頼を譲ったりはしないんだからね?」
「思っクソ馬鹿にしたつもりなんですけどねえ」
 嫌味を嫌味として受け取らない女は周囲を見回し、話を聞いてくれそうなお人好しがいないか探します。場合によっては犠牲者ですが。
 周囲を五秒ほど見た後、鎧を着た男がテーブルの近くを通りかかろうとしていたので、
「ねえねえ! そこの鎧のお兄さん!」
 とっさに声を掛ければ男は足を止め、アヤノを見ながら自分を指します。
「そう! お兄さん! ちょっと時間いいかな?」
「え、あ……はい、僕でよければ……」
 やや緊張しながら返事をする男。
 可愛くて美人で色気のある服装をした女の子からまるでナンパのような言い草で声をかけてもらったのです、期待と希望を抱かない方が珍しいというもの。
 男は若干の下心を抱きながらアヤノたちに近づきますが。
「お兄さんは食べるとしたらラフレシアが作るフルーツかヴェルズフィッシュの内臓か鼠の爪のどれがいい?」
 常人が聞けば正気を疑うような台詞により夢と下心は砕け散りました。
「ゲッ!? あ、は、えぇ? はいぃ?」
「アヤノ、慣れてない人間にいきなりその質問はまずいぞ」
 ヤトが静かに嗜めるとアヤノはとっさに口を塞ぎましたが手遅れです。
「……しまった、訓練されてない人が聞いたらビックリしちゃって当然だもんね。ごめんねお兄さん?」
「え、はあええ……気にしないで……」
 動揺が抜けきってないまま社交辞令を返す男。なお、ヘヌンシアが顔を伏せたまま声を殺して爆笑しているのが見えましたが誰も気にせず話は続きます。
「とりあえずフルーツと内臓と爪のどれがいいか選んで欲しいな? 深いこと考えないで」
「さっきの質問を聞いた後にその質問されたら嫌でも深く考えるんだけど!?」
 男絶叫。さらに、
「というかなんでそんな普通じゃない物を食べるとか聞くんだい!? 罰ゲームか何か!?」
「罰ゲームとは失礼だね。私たちは常に真剣に食物と向き合っている」
 とっさに答えたミケリィはそう言い返して男を睨み、彼は少したじろぎました。
「す、すまない……でも、植物系魔物の果実にヴェルズフィッシュの内臓に鼠の爪? って一般の感覚だとあまり口にしないと思うぞ、そもそも美味しいのかそれ……?」
 なんて口にすれば最後、全員から「とんでもない!」と唾を吐かれそうな迫力で言われて、
「ラフレシアウッドのフルーツはまだ食べたことないけど、植物系の魔物に実っている果物とか木の実はどれも美味しいんだよ! 甘かったり酸っぱかったり苦かったり味はまちまちだけど味に応じてタルトにしたりドレッシングにも加工できるから用途はいっぱいあるしどれも美味しくできるんだよ!」
「確かにヴェルズフィッシュは市場であまり流通しませんし見た目もキモいし味もそこまでよくないかもしれません。それにあれの内臓は独特な苦味があって普通の人なら食べられないものかもしれませんが、俺はそれこそがあの食材の最大の魅力だと感じているんです! もう少し受け入れてもらえるような調理も今後調べていく予定です!」
「ワシはそこの二人のようにこの食材が好物というワケではないが、生まれと育ちのお陰で神聖な力を持っている食物に興味と関心があるんじゃ。神に似た力を肉体に取り込んでいるような気分になれるからのう、あの感覚がかなり好きなのじゃ、最近のまいぶーむというやつじゃ」
「魔物を食材とした料理はゲテモノに見えてしまうかもしれないけど、適切な手順と味付けで調理をすれば大抵の魔物は美味い料理になるんだ、どんな高級料理にも負けないぐらいにね。私たちは多くの経験をした中でそれに気づいたんだ」
「うええぇ……ああ、はい、なるほど……」
 それぞれの熱弁を一身に受けてしまい、男は美人に釣られて関わったことを後悔し始めた刹那、
「あのさー、さっきから見てたんだけどさー」
 突然視界の外から声をかけられ、全員の視線は自然とそちらへ向けられます。
 声の主は女の子でした。ミケリィほどの年頃の。
 男の後ろにどこか気怠そうに立っている彼女も冒険者なのでしょう。平らな胸元を薄い布で隠し短いズボンを履いている軽装着で、アヤノが昔プレイしたRPGゲームで例えると「盗賊」という表現が一番適切かもしれません。
「アンタらさっきから話が何も進まなくてチョーだるいし見ててつまんない、いっそのことこれ受けちゃえば?」
 と言って依頼文を差し出しました。
 一番近い席にいたミケリィが受け取ると、早速目を通します。
「白い、鳥の討伐……?」
「そー。受けよっかなーって思って持ってきてたんだけど、アンタらがやったほうがいいでしょ。アンタら向けっしょ」
「これがどうしてワシら向けなんじゃ?」
 ヤトからの問いかけに対し、女の子は退屈そうにあくびをしつつ答えてくれました。
「その鳥さー出現した集落ではとっても神聖な生き物って扱いなんだってー」
「なにっ!?」
 ヤト、女の子を二度見。
「でも最近村人たちを襲うし作物は荒すしで手に負えないんだってー、神聖な生き物だけど殺しちゃダメってことはないらしいよ? 肉とか内臓とか美味しいらしくて珍味って感じで有名なんだってー」
「内臓珍味!?」
 ヘヌンシア、女の子をガン見。
「昼間に穀物とか果物とかを巣に集めて夜にまとめて食べる習性があるから、巣を調べたら美味しい果物とかよくあるんだってさー」
「ええっ!? 美味しい果物!? 食べたい!」
 アヤノ、女の子を三度見。
「そ。だからそれアンタらに譲るね、まだ正式に受理してないからヨユーで受けられるってー」
 軽く言い放つ女の子を尻目にミケリィ、ヤト、ヘヌンシア、アヤノの四人は席から一斉に立ち上がります。俊敏な動きに男がちょっとビビる。
「ありがとう名も知らない少女、恩に着るよ」
「この借りはいつか絶対に返すぞ!」
「下心しかないそこの男とは違って有益な情報を提供してくださってありがとうございました」
 足早に去る三人。ひとりから最悪な悪口が飛び出しましたが疲労困憊になっている男は深く考えませんでした。
 すっかり置いて行かれてしまったアヤノは、女の子の前までやって来ると、
「ありがとう!」
 元気よく礼を言ってからニッコリ微笑みました。
「……」
 なぜか絶句する女の子ですがアヤノは気にせず続けます。
「今度お礼しなくちゃね、お名前はなんて言うの?」
「……キャナル」
「キャナルちゃんだね? アタシはアヤノ、よろしくね」
「……うん」
 軽く握手を交わしてから「それじゃあアタシは行くから!」と言い残し、手を振りながら去ってしまいました。
 酒場を彩る喧騒のひとつが無くなっても賑やかさにさほど変化はなく……この場には男とキャナルが残されました。
「……噂通りの変人だったな……」
 一行が立ち去った後を眺めながら男がぼやいた次の瞬間、キャナルは男を見て、
「ねえ見た!? 今の見た!?」
「なにを?」
「でっっっっっっっっっっっっっっっっっっかかった! マジでおっぱいでかかった! なにあれヤバくない?! チョーやばくない!? マジヤバじゃん! 何食ったらあんなにでかくなんの!?」
 そりゃあもうテンション高く、目をキラキラさせながら興奮気味に感想を伝えました。
「女性の胸のことは僕には何とも……というか彼女たちとファーストコンタクト後の感想がそれ?」
「遠くから見てもやばかったけど近くで見たらマジでヤバかった……! マジヤバじゃん激ヤバじゃんあれじゃん! いいなあいいなあ羨ましいなあ! アタシも魔物食ったら巨乳になれっかな!?」
「それだけは本当にやめて」





 封印の地に封じられている邪神ヴェルズ。
 邪神はダンジョンに迷い込んでしまった哀れな冒険者たちに呪いをかけました。
 ダンジョンから脱出するために呪いを解きたい冒険者たちは邪神に捧げ物を贈り、解呪を願いました。
 人間を酷く恨んでいる邪神ですが、四人は自分を陥れた人間とは完全に無関係であることと、勇者であるアヤノに恐怖を抱いたことからあっさり呪いを解いてくれたのです。
 ただし、解いた呪いは「魔物となり永久にダンジョンを彷徨い歩く」ことだけで、副作用として発生した悪食の呪いは解除されてなかったのです。
 理由は明白「そこまで祈ってなかったから」
 ヤトは聖なる力を秘めていそうな食物ならどんなものでも食欲をそそられること。
 ヘヌンシアは内臓なら何でも食べたいという欲求が生まれること。
 ミケリィは食物に関することならどんなことでも興味を持ち理性を保ちにくくなること。
 アヤノはどんなゲテモノでも非常に美味しく食べられること。
 この呪いの非常に厄介な点は呪われている本人たちにその自覚が全くないことです。
 周囲がその異常さに気付いたとしても、一行は「封印の地でうっかり遭難してしまい、餓死寸前まで追い詰められるという壮絶な経験をした」と認知されているため、食べ物に関する異常なこだわりに関しては納得されてしまうのでした。
「白い鳥の手羽先美味しい〜! アタシこれ好き〜!」
 満面の笑みで魔物の肉を頬張る一行は、呪いを呪いだと自覚しないまま冒険者として生き続けることになるのです。
 今までも、これからも。

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