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その3

さて、めでたく3人という数に増えたニート集団。
女審神者を筆頭に、歌仙兼定・へし切長谷部は今日もだらだらと日々を過ごしていた。
「あ、質問にお答えします!長谷部はどこで寝ているの?歌仙と主が一緒の部屋で寝てるって知って凄く大変だったのでは?という疑問の声があがっておりましたが、その通りです!!」
長谷部を呼んで、初めての夜が訪れた。あの日。



「長谷部の寝室はどこにしようか…」
「主が決めてくださった場所でしたら何処でも大丈夫です」
「長谷部くんもこう言ってることだし、屋根で寝てもらおうよ主」
「歌仙、圧し斬るぞ」
「やる気かい?僕の方が練度が高いけど、それでも勝負するっていうの?」←練度1
「そんなものは関係ないな。俺がすぐさまその息の根を止めてやろう」←練度1
ちなみに歌仙のゲーム練度は99になり、長谷部は20ぐらいになりました。

「うーん、長谷部も同じ部屋でいい?」
「同じ部屋、とは?歌仙と同室ということでしょうか?」
抜刀していたゲーム機(3GS)を仕舞い、長谷部は主に向き直った。
「いや、私と兼定が寝てる部屋」
「…はい?」
「兼定が私に何かあったら大変だから、って同じ部屋で寝てるのよ」
一人で寝るなんて寂しいし長谷部も同室にする?
軽い気持ちで告げたその言葉に  ▼長谷部はめのまえがまっくらになった!
「主!家臣である者と同衾なんて、なにをお考えなのです!」
「同衾って…流石に布団は別だし…」
「当たり前です!布団まで同じでしたら、今すぐこの男を折らせていただきます!」
いつの間にか持っていた歌仙の本体を掴み上げたと思うと力を込めて曲げる。
ギリギリと撓るその刀が悲鳴を上げた。
「ちょっと長谷部くんやめてくれるかい!?折れる!折れる折れる!!」
「折る!」
「やめて?!」
イヤァァアアアと雅も風流も感じられない悲鳴を上げた歌仙とマジ顔の長谷部。
審神者は悟った。このままにすると初期刀が本気で折られる、と。
「長谷部、主命を言い渡します!!」
「はい!」
その隙に歌仙が自分を奪い取った。涙目で自分を見つめている。
良かったね、折られなくて。
「私と兼定と同じ部屋で寝なさい」
「……主命ですか……」
「主命」
長谷部はがくりと膝を付いて頷いた。
「拝命致します…」
こうして、この同衾事件は幕を閉じたのであった。






この本丸にやってきて2ヶ月が経ちました。
だらだらと日々を過ごし、有意義に時間は過ぎていく。
最近になってやっと現在本丸に居る刀剣を確認したよ!
短刀と脇差は吃驚なことに全部揃っているらしい。折られた本数は短刀が多かったけれど、出現する確率も短刀は高いため、ストックがあったようで折られても新しい刀に変えていき、短刀は全て揃っている。脇差もそれなりの数折られてしまったらしいけれど、こちらも揃っている。なんといっても4振だけだしね。
打刀は折られて揃って居ない刀が多かった。初期刀に貰った歌仙も折られていたらしいし、打刀は種類が多いけど半分程しか残っていなかった。そしてなんと私が嵌っている乙女ゲームのキャラ…まあ史実に居る凄い人だけども、その人が使っていた刀もあったりで吃驚した。
太刀、これに関しては私に対して嫌悪感MAXで話しかけてきた人やらこっちを見ていた人やら、様々だったのを思い出しながら刀帳を見ていたわけだが、どうやら全部は揃っていないらしい。
太刀の比較的レアな刀が2振、揃っていないみたいだ。どっちも動物の森に居る種類でした。あと、折られたまま新しく降ろされてきていない太刀がちらほらと。
大太刀、これは全部揃っていた。大太刀の中にショタが居て二度見しました。
薙刀は居て、槍は一振だけ揃っていた。もう一振の槍は揃っていないみたいでどんな姿なのかは分からない。

「そろそろ出陣しようか…」
そう言葉を発したら兼定と長谷部が衝撃を受けた顔をした。
しかし手に持っているゲーム機は手放さない。
「なぜですか主!」
と、叫んだ長谷部くん。見たぞ…私は見たぞ…きちんとポーズボタンを押して、一時停止してから私に詰め寄ったところを見たぞ……
最近私の家の長谷部くんがゲーム>主命って感じがしてきてつらい。
「なぜって…そろそろ出陣しないとヤバいかなって」
流石にこのままニートしてたらこの小説が成り立たないきがするんだよね。なんの小説だよってなるし、何よりも君達のファンにそろそろぶっ飛ばされないか不安なんだよね。
雅な彼とか主命な彼とか、巷では超イケメンらしいけど私の刀剣の二人は何故かそんなキリッとしたイケメン具合がない。
「どうしてだい主…この離れの屋敷と通販とゲームとアニメと漫画と初期刀がいれば良いって言ってたじゃないか!!一話で!!」
「メタ発言するんじゃない!」
っていうか初期刀のところをちょっと強調するんじゃない!長谷部が凄い目で睨んでるからぁぁああ!!!この場にいる唯一の刀剣仲間なんだから仲良くしなさいよまったくもう!!

「あと、やっぱり自分達で拾った資材で鍛刀したほうが御利益ありそうだし」
私の言葉ににらみ合っていた二人がはたりと収まり、こっちを見てきた。
「新しく鍛刀するのかい?」
「まあね、手入れ部屋も使えるようになったし、刀剣を増やして審神者業もそろそろ頑張ろうかと」
それでもたぶん審神者業とニート業の対比は1:9になりそうだけど。
そして私は叫ぶ。

「イマーーージーーーン!!!
きっとニートでしかないお前達に告げる!資材を集めてくるのだ!!」
ビシィっと二人に向かって指を指す。
「刀剣鍛刀、しましょうか」


「僕達がこんな生活を送ってるのは主が原因だからね」
どきっ




「はい、金玉持ってね」
「もっと雅に言ってくれ、君は女子なのだから…」
「だって…金色の玉だし金玉じゃんか…」
掴もうぜッ!ゴールデンボールッッ!!って歌ってるわけじゃないし、大目に見てくれたっていいじゃないか。ぶつくさと文句を言う兼定と仰々しく受け取る長谷部。お前ら正反対だけどゲームでペア組んだときの息の合いようは一体なんなの?戦もそのぐらいの仲の良さ見せてくれよ頼むから。
「では行って参ります」
「それじゃあ行ってくるよ」
「はい、行ってらっしゃい」
私はといえば、本丸の中にある神鏡が置いてある一室へと赴いて、二人の様子を眺める。
練度1のあいつらだからと思って一番弱い場所に送り込んだけど…
ざくざっくと敵をなぎ倒していく様子を見て私は杞憂だったか、と頷いていた。
ニート生活を満喫していたから、思うように体が動かない!とかならなくて本当に良かった。腐ってもあいつら刀剣の付喪神だったわ。

戻ってきた二人は刀装に少し傷が入った程度で、本人たちは無傷だった。
「おつかれさま」
「はい、お土産だよ」
「お、資材だ」
最初の場所だったから資材の量は少ないけど、二人がとってきてくれた初資材だ。大事に使おう。
「とりあえず今日から少しずつ進軍していって練度をあげていこう。
資材が溜まったら鍛刀ね」
また打刀あたりが来てくれるといいなー…と思っていたけど、まあ…フラグってやつでしたよねぇ…





「……大倶利伽羅だ。別に語ることはない。慣れ合う気はないからな」
「なん…だと…?」
この人もしかして、ゲームやってくれない系男士…?そんな、そんなのってないよ…!!



「ってことで、いま私達は離れの屋敷で過ごしてるの。
大倶利伽羅には悪いけど、本丸にはあまり近付かないでね、知り合いの刀剣も本丸に居るとは思うんだけど…あまり交流する機会はないと思う」
「別に構わない。俺は一人で戦う、それでいい」
……なんかとっつきにくい子がきたなあ。
でも刀帳には確か記載されてあった筈だし、たぶん折られちゃったんだろうな…
「それで、ここが私達が住んでいる場所ね。ええっと、寝る場所はそろそろ空いてる部屋に移ってもらって…何か分からないこととかある?」
「べつに」
ツーンとした態度にちょっと心折れかけの審神者。待って長谷部、抜刀しないでくれ。主に仇なす者は斬る!じゃなくて、やめて。折角四人になったんだから!
…でも、一人で戦うって……

そして私はピンときた。


「大倶利伽羅、これやろう」
「なんだ?俺はお前達の下らない遊びになんて付き合ってる暇はない」
それに馴れ合う気もないと言ったばかりだ。そう突き放されるけど、私はめげないよ!
「大丈夫、大倶利伽羅は一人でも大丈夫だから!!」
ジャーンと取り出したのはパーティーマリオ。もう一個のコントローラーを注文して、よいしょっと差込み渡す。
操作を一通り教えて、ミニゲームと書かれた所を選択し、【3vs1】を選ぶ。
「あ、主…?!それは…あまりにも非道だ…!」
「いや、主にあんな態度をとった。これは当然の報いだ」
そう。やったことある人なら分かるだろう。4人プレイしていて、自分だけがミニゲームで1人になってしまう、あの恐怖を。
皆がわいわい指示を出し合って遊ぶ中、1人だけ彼らを潰そうと躍起になる、あの虚無感。
『はあ??別に1人のほうがスムーズだしwwwwお前ら3人で頑張れよwwwww』そう強がっていた時期が、私にもありました…
だけど結局、チームワークには勝てない。
「さあ、大倶利伽羅。やろうか」

あれからパーティーマリオの3vs1で、大乱闘のチーム戦の3vs1で彼をぼっこぼっこにしてやった。ゲーム練度カンストをしている、私・兼定・長谷部で。もうぼっこぼっこにしてやった。
「大倶利伽羅、これでも一人で良いと言うつもり?」
「…俺は…お前らと共に戦う……」
4人でやるゲーム、2vs2でやるゲームに大乱闘、人の温かみを憶えた大倶利伽羅くんは目尻を押さえていました。そんな彼を労わるように、兼定と長谷部が両側から肩を叩いた。
そして一緒になって顔を俯かせ、その目には微かにだが、涙の跡が見えた。

「よく頑張ったじゃないか、あの3vs1の苦痛…よく耐えたよ君は」
「ああ。大倶利伽羅、主に対してのあの言動は正直我慢ならなかったが、お前の勇姿、しかと見届けた。俺達は友だ。」
二人の言葉に大倶利伽羅は片腕を目元にやって顔を隠した。
震えている肩に、小さなしゃっくりの声、彼はいま泣いていた。
昨日の敵は今日の友。その言葉が当て嵌まるような、そんな確かな友情が3人に宿った気がした。

「心配すんな、大倶利伽羅。独りぼっちは、寂しいもんな……」
私はそう言って、三人にコントローラーを投げ渡した。
「みんな、ゲームやろうぜ!!」
コントローラーを掲げて笑えば三人は頷いた。そう、ゲームは世界を救う!
キスより凄いゲームってあるんだよ!!!!



「大倶利伽羅は大乱闘で使うキャラいつも違うけどお気に入りとかっていないの?」
戦うたびにキャラを変える大倶利伽羅。
私達はすぐに固定のキャラを見つけてそれをずっと使っているけど、大倶利伽羅はとくにそういうものがいないらしく、一戦一戦キャラクターを変えているらしい。
「とくにない」
「ふぅん……あ!これは?」
「…なんだこの黄色い生物…」
「ピカチュウ」
「ぴ…?」
首を傾げる彼を見て、私の悪戯心に火がつきました!!
「そう。漢字で書くとね、こうなるんだよ」
「これは、みつただ?」
書いてあげた漢字は光忠。そう、巷で有名なキャンドルカッターピカチュウさん。
オンラインゲームでよく出てくるCCPの文字。よく分からなくてギルドメンバーさんに教えてもらったのはつい最近。刀帳を見て吹き出したのもつい最近。
燭台切光忠さん、通称CCPさん。
「大倶利伽羅って燭台切光忠?と同じ主を持った仲なんでしょう?だったらこのピカチュウさんを使わないと!」
「光忠、と書くのか…この黄色い生物は…」
嘘です。ごめんなさい。
「分かった。俺はこいつを使う」
こうして、ピカチュウ使いが生まれたのです。



様々なゲームをとりあえず渡して、その中でも相性が良かったのが意外にも音ゲーだった。
リズム感も問題ないらしく、初音ミクの消失とか裏表ラバーズとか、高難易度の譜面を軽々とこなす彼の顔は本気そのもの。何より動かしている指が怖い。なんであんな動きができるの。
そして、赤いヘッドフォン(大倶利伽羅愛用)をつけて音ゲーをしている彼の邪魔だけはしてはいけない。
主命で兼定と長谷部にフライグゲットを覚えてもらって、それをドタバタと踊っていたら近くに居た大倶利伽羅に衝突した。
大倶利伽羅は衝撃でPSBを手から落としてしまった。そしてゆらりとぶつかってきた二人に近寄ったかと思うと、抜刀した。
「フルコン逃した…」
「ちょっと待て!話せば、話せばわかる!」
「大倶利伽羅くん落ち着いて!」
「「アッーーーーー!!!」」
私はフライングゲットの曲を流していたものを切って、ヤラナイカを流しておいた。いい仕事したよ。




「はい、そこで1000%のポーズをして!」
せーんぱい全裸!HEY!!

三人に教え込んでいたキスより凄い歌の振り付けが完璧になった。
なんという達成感。なんという高揚感。
踊りきった三人は汗を流し、握手をしていた。
「いい踊りだったね」
「ああ」
「主命ならば当然のこと」
私は撮っておいたビデオで動きの確認をする。やはり完璧だ。これは凄い完成度…
リズム感のある大倶利伽羅にも指導の手伝いをしてもらってついにここまできた。
だけど、人はより完璧を求めてしまう。欲深く、浅ましい生き物なのだ。
「完璧にするために、あと三人揃えてスターリッシュを完成させよう」
「主、それは鍛刀をする、という方向でいいんだね?」
「うん。どの刀が来ても私はそれを受け入れる。そして、完璧なスターリッシュを揃えてみせる」
「主命であれば」
「馴れ合うつもりはない…だが、ゲームと振り付けなら別だ」
三人は私の言葉に頷いてくれた。三人もスターリッシュを完成させたいんだ。
その気持ちがあれば、大丈夫。私達はどこまでも羽ばたける!

「とりあえず、資材おねがいしまーす!」
金玉を各自持たせて、笑顔で送り込んだ。
戻ってきたら皆で大乱闘しようぜ!だから無事に戻って来いよ!



ブラック本丸で楽しい審神者生活3

(4人でゲームできるようになったけど、踊るには男6人欲しいよね!

    スターリッシュを揃えることが次の目標です)

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