その2
「燭台切、女審神者は本丸へ移動することに頷いたのか?」
新しい主となるあの審神者を鍛刀部屋へと案内して、僕はその場から離れた。あのままあそこに居たら変に警戒をされそうだったし、僕達が彼女を信じようと思っても、彼女が僕達のことを信じてくれなければ何も変わらない。
そう思ってここは見張るかのように一緒に居るよりも、少し目を離して君の事をもう疑っていないということを示すことにした。
そうして夕食の支度をしようと厨に向かおうとすれば声をかけられた。
振り向けば声の持ち主である三日月宗近がゆったりと歩いてきた。
「本丸に住むことはしないらしいけど、時々顔を出すっていう事になったよ」
「ふむ、そうか…」
「三日月さん、刺激しないでくれよ?折角あの子と話す機会が出来たんだから…」
ずっと離れの屋敷に居て気が滅入ったのかもしれない。やっぱり外の空気を吸いたくなって、この本丸に少しだけだけど顔を出す、という条件で僕達の提案を呑んだのかも。
「僕達の怪我を一生懸命治してくれたのに、あんな仕打ちをしたなんて格好悪いよね」
離れへと連れて行かれる彼女を僕は黙って見ていた。大倶利伽羅を前の審神者に破壊された事が脳裏に焼きついていて、また仲間を壊されるのかもしれない、という恐怖があったからだ。
でも彼女は文句も言わずに刀剣達が出した条件を呑んでひっそりと離れで暮らしていたんだ。
途中から歌仙くんを人の形にしたようだけど、彼女も悩んだのかもしれない。僕達に彼を折られる事を恐怖しながらも、一人で居る寂しさに耐え切れず、顕現させたのかもしれない。
そう考えるだけで胸が痛んだ。僕達は、女の子に対してなんて仕打ちをしていたんだろう。
「分かっているさ。俺だって少し、やりすぎたと思うておる」
あんな細く、白い女子が、俺達に何が出来たというのか。彼女の霊力を感じる鍛刀部屋のほうを見ながら、天下五剣と名高く、最も美しいと云われる刀の付喪神は後悔の色をその三日月が浮かぶ目に滲ませながら、呟いた。
「いつかあの女審神者を主と呼ぶ日が来ると良いな」
「うん…そうだね」
そしていつか僕と薬研で作った食事も美味しい、と言って食べてくれると嬉しいな。
「主は厨に立つ事も出来るのですね…主命とあらばこの長谷部、主のために包丁を握りましょう!」
「やっぱり君の手料理は美味しいね。僕にも料理を教えてくれるかい?」
「お前らにはそろそろ、コントローラーでもマウスでも漫画でもなく、自分自身を握ってもらいたいかもしれない」
新しい主となるあの審神者を鍛刀部屋へと案内して、僕はその場から離れた。あのままあそこに居たら変に警戒をされそうだったし、僕達が彼女を信じようと思っても、彼女が僕達のことを信じてくれなければ何も変わらない。
そう思ってここは見張るかのように一緒に居るよりも、少し目を離して君の事をもう疑っていないということを示すことにした。
そうして夕食の支度をしようと厨に向かおうとすれば声をかけられた。
振り向けば声の持ち主である三日月宗近がゆったりと歩いてきた。
「本丸に住むことはしないらしいけど、時々顔を出すっていう事になったよ」
「ふむ、そうか…」
「三日月さん、刺激しないでくれよ?折角あの子と話す機会が出来たんだから…」
ずっと離れの屋敷に居て気が滅入ったのかもしれない。やっぱり外の空気を吸いたくなって、この本丸に少しだけだけど顔を出す、という条件で僕達の提案を呑んだのかも。
「僕達の怪我を一生懸命治してくれたのに、あんな仕打ちをしたなんて格好悪いよね」
離れへと連れて行かれる彼女を僕は黙って見ていた。大倶利伽羅を前の審神者に破壊された事が脳裏に焼きついていて、また仲間を壊されるのかもしれない、という恐怖があったからだ。
でも彼女は文句も言わずに刀剣達が出した条件を呑んでひっそりと離れで暮らしていたんだ。
途中から歌仙くんを人の形にしたようだけど、彼女も悩んだのかもしれない。僕達に彼を折られる事を恐怖しながらも、一人で居る寂しさに耐え切れず、顕現させたのかもしれない。
そう考えるだけで胸が痛んだ。僕達は、女の子に対してなんて仕打ちをしていたんだろう。
「分かっているさ。俺だって少し、やりすぎたと思うておる」
あんな細く、白い女子が、俺達に何が出来たというのか。彼女の霊力を感じる鍛刀部屋のほうを見ながら、天下五剣と名高く、最も美しいと云われる刀の付喪神は後悔の色をその三日月が浮かぶ目に滲ませながら、呟いた。
「いつかあの女審神者を主と呼ぶ日が来ると良いな」
「うん…そうだね」
そしていつか僕と薬研で作った食事も美味しい、と言って食べてくれると嬉しいな。
「主は厨に立つ事も出来るのですね…主命とあらばこの長谷部、主のために包丁を握りましょう!」
「やっぱり君の手料理は美味しいね。僕にも料理を教えてくれるかい?」
「お前らにはそろそろ、コントローラーでもマウスでも漫画でもなく、自分自身を握ってもらいたいかもしれない」