番外編2
あなたが行く本丸にはない刀剣がこの3振となります。
目の前には3振の刀剣で、2振の刀剣が少し遠い場所に置かれていた。
きっとその2振はすでに本丸に顕現しているんだろう。
「加州清光、山姥切国広、歌仙兼定」
3振の名前を教えてはもらったけど、日本刀なんて興味がなく、普通に過ごしていた自分にはピンとは来なかった。
これから自分は元ブラック本丸であるという本丸に落とされるらしい。
そしてそこでの唯一であろう味方となる刀を選ぶ権利を与えられた、ということだ。
政府の人間に「どれにするかね」と言葉を投げかけられるもののそんな簡単に決められるものでもない。そもそもなんで私がブラックなところへ行かないといけないんだ。
真っ赤な鞘を持つ刀を手に取って見てみるけどよく分かりはしない。説明ぐらいくれたっていいのに、ちらりと政府の人間を見ても黙したままこっちを見るだけだった。
「えっと…この刀で…」
結局最初に手に取った赤い鞘の刀は元あった場所に置いて、薄紫のような綺麗な鞘の刀を手に取った。単純にこの鞘の色が気に入っただけだ。
それだけの理由で刀を選ぶなんて不敬かと思ったがどうしようもない。
「歌仙兼定か、ではゲートを開ける」
打刀といわれるその刀はやっぱり自分には少し重たく感じた。なによりこの刀に命を預けているようなものだ。この刀が私の味方だ。
「…よろしく、歌仙兼定」
ぽつりと呟いてゲートに足を踏み入れた。
淀んでいる空気に眉を顰めてその本丸に足を一歩踏み入れた時に目の前に突きつけられたのは美しい刀だった。
その刀の持ち主である男の瞳は憎悪に塗れていて、少し遠くでこちらを見ている刀達だってお世辞にも友好的な視線を送っているとは言い難い。
ああ、本当に自分の味方はこの刀しかいないのだと、もう一度強く初期刀を握り締めた。
この後彼は、一週間忘れ去られるのであった。