番外編2
「(うーん、喉渇いた…)」
むくりと起き上がって欠伸を一つ零す。
ちらりと両脇を見れば兼定と長谷部がすやすや寝ている。
起こすのも悪いしこっそりと抜き足差し足忍び足で襖に手を掛ける。
襖を開ければそこは居間に繋がっていて、居間から台所に行かないと水を飲むという任務は完遂されないのだ。
「(たしか麦茶あったはず…)」
すすすーと極力音を立てないように開けると仄かに光が見える。
ん?誰かが起きてるのか?光のほうへとフラフラと歩いてみればそれはテレビの光だった。
しかしテレビの前には誰もいない。あれ?テレビ消し忘れて寝ちゃったのかな。
リモコンを取ろうと机の上にあるそれに手を伸ばした時、耳元で声が響いた。
「見ましたね…?」
「…?!ぴぎゃあああああああ!!!!」
「敵襲ですか、主?!」
「雅じゃない叫び声だね」
「…うるさいぞ」
「あるじさーん、俺眠いんだけど…」
「心配してるの長谷部だけじゃねえか!もっと主心配しろよこの野郎!!」
「で…ホラーゲームしてるときに喉が渇いて台所に行ってた所、私が起きてきたから後ろから声をかけた、と」
「はい」
私の耳元で囁いた人物は江雪左文字だった。
画面はホラーゲームである。確か零とかいうゲーム。ホラーゲームは私あまりやらないから全然わからないんだけどね。
「ゲームやるのはいいけどさ…なんで真っ暗でやってるのさ」
「そのほうが雰囲気が出ると思ったので」
「お前は鋼の心でも仕込んでんのか」
無理だ。そんな恐ろしいことできない。
「いま気になっているのは…ブルーベリー、ですかね」
ブルーベリーという言葉。そして頭の中に流れてくるのはあの鬼が追いかけてくるときのチャンチャンチャンという怪しい曲。
「江雪…君にはパソコンを貸したことなどない、どこでそのゲームを知った…?」
あれはPCゲームである、なぜそれを…
ゴクリ、と喉を鳴らして江雪を見据えればそっと懐に手を伸ばしたかと思うと私に見せてきたのだ。そう、この離れに居る刀剣全員に配っているもの…
「電子辞書…?!」
そうだ、あの電子辞書は云わば持ち運べるウィキペディア…!ゲームや漫画の情報が詰め込まれている優れもの…
「っく…それが仇となったか…!」
「そういうことで主、」
「何が望み…?」
「パソコンを、所望します」
そういうことでリビングの隅っ子にパソコンが導入されました。
江雪用の水色ヘッドフォンをしながら彼は今日も夜な夜なブルーベリーから逃げているようです。
「主、次はコレをダウンロードしてください」
「まさかのIb」
内番衣装の時に貴様が持ってる花千切っていいっすか。