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その5

彼は「やっちまった…」という顔で燭台切光忠が居なくなった方を見ていた。

「ふう…踊り疲れちまったぜ…」
どうやら現在練習している踊りが一段落したらしく、審神者が汗を拭きながら大倶利伽羅の近くにやってきた。
因みに、練習しているものは大倶利伽羅は既に完璧に踊れるため、一人涼しいところでゲームをしていた次第である。
「大倶利伽羅どうかした?」
「…いや……」
「誰か来てたの?」
「ぴか…光忠が来ていた」
「まさかとは思うけどピカチュウだなんて呼んでないよね?」
「かろうじて」
「呼ぼうとはしたのね?!」
審神者はピカチュウを光忠って書くんだよ!と教えたことを今更ながら後悔していた。
だけど間違えてピカチュウと呼んでしまって羞恥に震える大倶利伽羅も見てみたい!と心の中は乱舞している。
神妙な顔つきで何かを考え込んでいる大倶利伽羅に少し不安を覚え、審神者は控えめに言葉を発した。
「なにか、燭台切に言われた?」
「ああ」
「なに言われたのさ」
こんな顔をするなんて只事ではない、と審神者は聞いてみたが…
「覚えてない」
「…え」
「ミクやってて覚えてない」
「…う、うわあ……」
感動の再会ってやつをゲームがぶち壊したようだ。なんてこった。
「なにか聞かれたのは分かったが、なにを聞かれたのか分からなくて適当に頷いた」
こ…これは……!
最近嵌ったゲームが楽しすぎて、お母さんに「今日はどうだった?」とか「今日の晩御飯何がいい?」とか聞かれて、でもゲームが楽しいから返事するのもめんどくさくて「うん」とか「あー…」とか適当に返事をしてしまう現象だ!!!!いまそれが!起きている!!!

「どうすんのさ、審神者ぶっ殺していい?とかいう質問だったら」
「その時はその時だろ」
「ちょっと!私の命の危機!主様の命の!危機!!」
「大丈夫だ」
「なにが」
「お前は俺達が守る」
「…大倶利伽羅……」
真剣な目だった。どきん、と胸が脈打つ。


「せめてゲームから目ぇ離して言えよ」






「俺は浦島虎徹!ヘイ!俺と竜宮城へ行ってみない?行き方わかんないけど!」
「ショタァァァアアア」

新しく仲間入りした浦島虎徹くんは、ショタだった。




「って、いうこともありまして、私たちの住居はこの離れの屋敷になってるんだよ」
「うーん、よくわかんないけど…あるじさんと一緒に居ればいいか!」
きらきらと輝く金色の髪と緑色の瞳。
眩しい…なんて眩しいの…なんて純粋なる少年…!
それに比べて…こいつらは……

「なんだい主。その顔は」
「いや…この男臭い離れにも漸くショタ枠が来てくれて嬉しいなあって」
「そうだね、ここには可愛い短刀勢はいないしね」
「でもこの紅一点である私が居るからそんなむさ苦しくはないよね!」
「この世は地獄です…」
「オイコラ、江雪。なんで目逸らしたの?ねえ???」
「気のせいです」
本当にお前ら可愛くないな!!見ろよこの浦島くんの可愛さを!!!

「あるじさーん、これ何?」
「ゲームです」
「これは?」
「漫画」
「読んでみてもいい?」
おや?


「浦島くんはゲームより漫画のほうが好みのようで」
あの後ちょっと大乱闘とかパーティーマリオとかしてみたけど、どうも浦島くんはゲームよりも漫画を読むほうが好きらしい。
カートマリオで亀繋がりでノコノコを操作しようとして、大倶利伽羅(ノコノコ使い)が衝撃を受けた顔をしてた。
だがしかし、年下には弱いのか結局ノコノコを譲っていた。
そして彼はデイジー使いにジョブチェンジ。なんでデイジーにしたのお前。


「あるじさん、俺、万事屋開く!!」
「お、おう」
浦島くんはとても漫画に影響されやすい刀だったようで、なにかの漫画に嵌ると、それを真似しだす。前回は確かマフィアになる!と叫んで、その前がテニスしてみたい!だった。
その前は自分で刀を振り下ろすときに「流星ブレード!」とか「ファイアトルネード!」って叫んでました。サッカーもテニスも超次元の世界でのお話だからね?無理だからね?
「決めた!俺の刀の名前は洞爺湖だ!!」
「待って。君が持ってる刀ってそれ君自身だから。浦島くんじゃなくて洞爺湖くんに改名するってことだから!落ち着いて!!」
自分が銀さんになりたい気持ちは分かった!でも自分の名前を銀さんに改名するのではなくて、洞爺湖にするのはどうかと思うんだ!!



さて、今日も今日とて台所に立つわけです。
自分含めて6人となったご飯の支度はそれなりにめんどくさい。
今日は晩御飯なににしようかなーと思っていたら、
「手伝う」
「…大倶利伽羅が?」
頷いてるけどこいつ料理できるの・・・?だって今までノータッチだったじゃん。
「オンラインゲームしてるときに良く燭台切光忠は料理上手いぜ!とか聞くけど、大倶利伽羅はどうなの?それよりも今までなんのアクションも見せなかった君がいきなり台所に立つとか恐ろしい」
「俺の前の主は、光忠と一緒だ」
「……ああ、伊達政宗」
そういえば料理する人だったんだっけか。
その影響もあって燭台切光忠さんも料理ができるとかなんとか。
…そうだよ。大倶利伽羅も同じ主だったなら料理出来るのか。
「なんで今まで黙ってたの!!」
「ゲームが楽しかった」
「ですよね」

大倶利伽羅に試しに大根の桂剥き頼んだらスルスル剥いてくれた。すげえよ。
包丁捌きがプロなんだけど、私が今まで一人で頑張っていた苦労とはなんだったのか。
因みに、「桂剥きよろしく」って言った時に浦島くんが「桂じゃない!ヅラだ!!」って叫んでた。落ち着け。今回のそのブームはいつ終わるんですかね。
なんか不良っぽいキャラが何故かEDの絵で桂剥きをやっていて、ファンに戦慄が走ったアニメがあることを、皆は覚えているか?そうだ、超次元サッカーだ。超次元サッカーのモヒカン野郎が料理上手だったという謎のステータスを備えていた事が分かったあの事件である。あれは凄かったですね。
「大倶利伽羅って…いろいろと可能性を秘めてるよね」萌え的に。
「は?」
あとで大倶利伽羅にふりふりのピンクのエプロン買ってあげようと思う。



「歌仙と長谷部と大倶利伽羅と江雪と浦島」
「いきなりどうしたんだい」
「いや…」
そろそろ立ち位置を決めないとな、と思ってだな…

浦島くんは完全に翔ちゃん枠でしょ?
江雪は心のダムならぬ、心の和睦で。
「しかし…音也枠とかトキヤ枠とか……いねえよ」
天真爛漫☆みたいな音也くんって浦島くんしか居ないけどもう既に翔ちゃんだよ?一人二役?踊りでそれは難しすぎるし浦島くんがたぶん死ぬと思う。筋肉痛かなにかで。
トキヤ枠は歌仙に頼むとして、初期組で仲の良い長谷部を音也?確かに犬っぽいところは似てるかもしれないけどさぁぁああキャラ違いすぎんよぉぉぉおおお!!!
となると、空き枠であるレン様となっちゃん枠のどちらかに大倶利伽羅が入る。
どっちも似合わねぇぇえええ!!無口なレン様か無口ななっちゃん。どっちも嫌だ。
「お前らにスターリッシュは早すぎたんだ……
踊りは誰がどこのポジションになっても良いように教えたけど、お前たちがこんなにもスターリッシュと掛け離れているとは思わなかった…お前たちは刀であってアイドルじゃないんだよ!!」
「誰もアイドルになりたいだなんて言った覚えもないよ」
兼定ちゃん冷たい。


「部隊ってもう一人入れられるんだよね」
六人編成らしい。歌仙一人だけだったのに随分と賑やかになったもんだ。
やっぱりスターリッシュ部隊を作るしかないみたいだな!キャラ違いはご愛嬌ってことで!!
「今は脇差と打刀2太刀2か…」
本丸側には短刀と脇差と大太刀と薙刀が全部揃ってるから、打刀・太刀・槍の誰かを入れられるんだな。でも槍なんて残り1振だけどそれがドンピシャで来るとは限らないし。
やっぱり狙うは打刀か太刀だよね。
「皆は別にこの刀が良い!みたいなの無いの?あ、勿論本丸に居る刀は諦めてもらうけど」
「はーい!」
「はい、浦島くん」
「蜂須賀兄ちゃんはあっちに居るみたいだし、長曽祢兄ちゃんがいいでーす!」
「……検非違使……?」
ちらりと長谷部を見れば長谷部は無言で頷いた。
「無理です」
「え」
「検非違使からドロップなんてそんな奇跡の技無理です」
「俺だって検非違使からじゃんかー!」
「無欲の勝利ってやつだよ」
物欲センサー様嘗めるな!あいつがラスボスだぁ!!あとサイコロ。

「まあ、最後の一振はアンケートを取るとして、」
「アンケート?」
「やべ、つい本音が」
そういうことでアンケートになります。
最近やっと本丸にいる刀剣を整理して、どの刀が居てどの刀が居ないのかを分けました!!
独断で打刀から3振、太刀から2振を選出し、6振目を皆様に決めてもらいたいと思います!!
「ゲームが上手そうで、漫画とか好きそうなヤツがいいね!」
「そこでレアなヤツ!と言わない辺りが主らしいよ」
そう褒めるなよ。照れるだろ!





「さて、ゲーム練度がいつのまにか軒並みカンストしている諸君」
*浦島虎徹くんは漫画のほうが好きなのでゲーム練度はカンストしていないです。
「そろそろ君達も本腰入れて出陣してみないか?」
待て、なんでお前らは涙目になってゲーム機と漫画抱えた。
「我々から…ゲームを奪うというのですか…和睦の道は……」
「だから君はそろそろ和睦って言いながら戦闘体勢に入るのやめよ?審神者困っちゃうからね??」
我が離れ部隊の唯一のレアが君だから。
ゲーム練度だけでなく普通の合戦でも強いの君だからね。だから剣仕舞え。あぶねえし怖いから。
「ゲームに引き摺り込んだ私が悪い。だけど、君達はゲームしてても刀!漫画熟読してても刀!!刀の本分を忘れないで下さい!!」
「俺は、音ゲーで戦う」
「一人で戦うって言わなくなっただけ良いとか言われると思ってんのお前!?刀を!持てよ!!」
「……」
「ごめん、悪かったからそんな落ち込んだ顔しないでください」
なんで我が家の大倶利伽羅さんってこんなに表情豊かなんですか誰か教えて。
「それに、やっぱり皆が本丸に居る知り合いの刀と喋れないのは申し訳ないかな、って思って」
兼定にも同じ兼定の名を持つ刀があるみたいだし、少しぐらい言葉を交わしたいと思っているかもしれない。
「俺は話すことなんてない」
「そうね。音ゲーで話を聞いてなかった君には話すことなんてないでしょうね」
本当にどうすんのよ、その適当に頷いたっていう話!
なんの問いかけなのかも分からないのに適当に頷くからそんなことになるんですよ!!
ゲームも程ほどにしなさいって審神者言ったでしょ!!
「私は主命でしたら本丸の刀とも話をしましょう」
「主命じゃなかったら?」
「離れでピクミソ生活してます」
「ブレねえな」
お前の中の何がそうさせているの?
なんでそんなにピクミソに対して異様なる執着を見せるの?
ピクミソ勧めたの私だけどまさかこんなにピクミソ厨になるなんて思わなかったよ。
「蜂須賀兄ちゃんには確かに会いたいとは思うけど、俺は別にこっちの生活が楽しいし、あるじさんが居たら何でも楽しくなっちゃうから。そこまで本丸に行く理由はないな!」
「ぐう天使」
浦島くんが何よりの癒しです。
「私は…和睦(物理)があれば……」
「お前のキャラはいつにも増してブレッブレだな」
軽いフットワークで江雪左文字という戦嫌いのキャラが素足で駆けていくぜ。
べつに魚を銜えた猫を追いかけてるわけじゃないけど。


「主は」
「うん?」
「刀剣を全て揃えようと思っているのかい?」
兼定の言葉に自分自身、ふと考えてしまった。確かにそんなこと思いもしなかったな。
「うーん…揃えてもいいとは思うけど…」
「けど?」
「この離れも流石に狭くなるんじゃない?」
別に増築お願いすれば増築もちょちょいのジョイだろうけどさあ…
「本丸に戻るようなことがあれば揃えられればいいなあとは思うけど、そんな予定ないし」
とりあえずスターリッシュ作る目的果たせば良くない?
「あるじさまってスターリッシュに対して謎の執着心見せるよね!」
いや、イケメン見たらとりあえず躍らせないと駄目かなって思って…
「それにこの人数で困ってることなんて無いし、良いんじゃない?」
「困っていることはあります」
長谷部が真剣な眼をした。なんとなく審神者嫌な予感するよ!

「テレビをせめてあと1台増やしてください」
「そうね、チャンネル争いは家庭の醍醐味ですもんね!」
分かったよ!テレビ別の部屋にもう一台増やすよ!!
私の執務室(オンラインゲーム部屋)に設置することになりました。




ブラック本丸で楽しい審神者生活

(そろそろブラック本丸の意味がなくなってきてる。

    読者も作者も思っていることだね!)



 
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