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その1

審神者として任された場所は元ブラック本丸だったところ。
念のため、とそのブラック本丸には居なかった(折れてしまって居ない)打刀を一振もらった。
というか新人をこんな訳有り物件に放り込むのは如何なものだと思うが、私は知っているぞ。
由緒正しき審神者さんをブラック本丸なんぞに突っ込み、殺されたりでもしたらひとたまりも無いという理由があって、死んでも替えが効くし新人突っ込んでおこう!というブラック政府ということを知っているんだぞ。
ばれてないと思うたか!残念だな、殆どの審神者が知ってるぞそんなこと!!
死ぬ事を覚悟しながら初期刀と呼ばれる自分の最初の刀を抱えてブラック本丸に到着した。
そして一歩足を進めたら目の前に突きつけられたのは普段、普通に過ごしていれば目にすることは無いであろう刀。
日本刀のことなんてこれぽっちも分かりはしないが、とても綺麗な刀だということだけは理解できた。
そしてその刀を持つ人物を見上げればこりゃまたお綺麗な人でした。
いや、付喪神だから人間ではないんだろうけど、人の形をしているし、人という括りでいいか。

「娘よ、そのように怯えるでない」
刀を突きつけられた状態で怯えるなっていうほうが難しいと思います!こんな軽率な言葉を発したらたぶん首飛ばされると思うのでお口チャックしてます。みっふぃーさんです。
「我らも鬼ではない、審神者が居らなければこのように存在することが出来なくなる。しかし前の審神者のせいでちと人間を信じられなんだ。だから、審神者は離れを使って過ごせ。出陣も遠征も内番も、我らの独断でこなしていく。刀装の数が減った時や手入れが必要な時だけ、その離れから出ることを許そう」

つまり、私は離れから出ずにひっそりと過ごしていれば良いってことか。
それを守りさえすれば自分の命は守られる。
「分かりました。それで結構です」
「ほう?提案をしたのは我々だが、少しも考えずに答えを出すとは」
「審神者が存在しないと不便だという事は本当のことでしょうし、皆さんからのその約束事さえ守れば自分自身の安全が保障されるのでしたら安いものですよ」
「では、まず手入れをしてもらおうか」
「分かりました。手入れ部屋はどちらに?部屋で待っているので連れてきてください」
どうせ私が行ったところで素直に応じるとは思えません。と言葉を続ければその綺麗な顔をした男の人は面白そうに笑った。漸く刀を鞘に納めたと思うと「こっちだ」と手招きをしてみせた。
「ここが手入れ部屋だ。審神者はそこで待っておれ」
案内された手入れ部屋も随分使われていないらしく、埃塗れになっていた。そして目視出来る程の空気の穢れ。自分の霊力を込めて畳に手を置いて流し込めば手入れ部屋の空気が清浄なものへと変わった。
埃は拭かないといけないが廊下から複数の足音が聞こえてきた。埃を拭いている時間はなさそうだ。
初期刀は未だにそのままの姿だったが、とりあえず自分の傍に置いておく。
襖が開けられて、中に入って来たのはさっきの綺麗な男の人と、随分と小さい男の子と水色の髪をした王子様みたいな格好をしているこれまた綺麗な人だった。
まあ、全員重傷やら中傷で傷がいたるところにあるけれど。

「一番最初に手入れをする方はどなたですか?」
「俺っちを頼む」
手をあげたのは中学生ぐらいに見える男の子だった。腰に下げている刀は短刀と呼ばれるものだろう。短刀だから外見も小さめなのかな。
「薬研、危険です!私が先に…」
「一兄は心配性だな。もし俺になにかあっても、一兄がいりゃこいつらも安心だろ」
水色の王子様っぽい人と、薬研と呼ばれた男の子がこっちを無視して会話を進めていく。
っていうか、危険ってなんだよ。手入れだって言ってるだろうが。
どうやら水色さんが折れたらしく、薬研という短刀を一番先に手入れをすることになったようだ。
「弟に対して何か不審な行動を起こした場合は、直ぐに刀を抜かせていただきます」
やっぱり兄弟なのか、刀にも兄弟があるんだね。素晴らしい兄弟愛ですねーはいはい。
手伝い札は100枚ぐらいあった。この本丸に居る刀剣達全員を手伝い札で治しても問題は無いな。手入れ部屋に突っ込んだあと手伝い札を使用して即時修繕。
そのまま次々と短刀を治していき、残りは水色さんと綺麗な顔したお兄さん。
「貴方たちも手入れ部屋にどうぞ」
「…わかりました」
「あいわかった」
太刀のお兄さん達(駄洒落じゃないよ!)の手入れ時間をチラ見してげっそりとした。はい、手伝い札手伝い札。この便利グッズがあったというのに前任者はなんで使わなかったんだろうか。
出てきたお二人さんはさっきと変わらずきんきらりんな容姿であったが傷が治ったせいか尚更眩しく感じた。うっ、目が…!目がぁぁああ!!
ぞろぞろと居なくなったと思うと、またぞろぞろと人が入ってくるのを何回か繰り返し、この本丸に居る刀剣全員の手入れを済ませた。
手入れが終わったと思ったら離れの屋敷に押し込められた。

政府に提出する書類などは私が余計なことを書いていないかチェックするという。なんという徹底振り。

そんないろんな事がありまして一週間。私は今日も元気に離れの屋敷で審神者生活してます。
ご飯は本丸にある厨に行けないので適当に通販で頼んでいます。
なんと通販で頼むと数秒で届く親切設計。なにこの技術やばい。
試しに出前ラーメンを頼んだらほっかほっかのラーメンが届きました。審神者専用の通販サイト、恐るべし。私はもう通販があれば楽しく生きていけることが分かりました。

「やべえ…やべえよ……これ死亡ルートじゃないか…?」


そんな私は現在、プレイステーションボータブル 通称:PSB で遊んでおります。
最近買った【審神者を駄目にするクッション】に寝そべりながら楽しく乙女ゲームしてます。
新撰組と楽しく恋愛中です。
父親を追って上京したヒロイン、女の一人旅は大変なので男装してます。そしてやっと到着!って思ったら衝撃的なシーンを見てしまったのです。白い髪に赤い目をした男を浅葱色の羽織を着た男がばっさりと斬っているところを!!
え、なんか聞き覚えのある乙女ゲームだって?あれです、薄い桜の鬼っていうゲームだよ。面白いからみんなもやってみてね!
最近の乙女ゲームって選択肢間違えると死んじゃうんだぜ?キャラに殺されたりするんだぜ?やべえ、やべえよ…
門を開けた先は、イケメンな神様達が沢山いる本丸でした……!!私の現状もなかなか乙女ゲームみたいだけど下手なことさえしなければ命は保障されてるんだぜ…?
このゲームのヒロインちゃん、不憫すぎるよお…と泣きそうになりながら攻略中です。楽しい。

流石に乙女ゲームだけで過ごすのは辛いので、審神者専用のオンラインゲームもパソコンにダウンロードしました。
【審神者録オンライン】
こんな題名だけど、ただのオンラインゲームです。審神者だけが登録できるゲームってだけです。
他の国、備前とか越後とか、いろんな国の審神者達がやってます。
パーティー組んで、ギルドを作ったりして、皆と今日もれっつオンライン。

『今日どこに狩り行く?』
『俺は午後から演練入ってるから時間までソロ狩りするー』
『やばい!ママが、またゲームして!仕事しなさい!って怒ってきた!ってことで落ちるわ!!』
『CCPさんまじオカン』
『近侍の乱が頭装備指差してきて、これ欲しいって強請ってくる』
『乱に猫耳メイドカチューシャは凶器だな…商品化はよ!!』

みたいな会話がよくなされております。
しかし私は近侍も居ないし、仲の良い刀剣も居ないのでママとか乱とか良くわかりません。
でも短刀ですごい可愛い子が居た気がするし、その子だろうか。
全員審神者だけど、勿論、自分たちの仕事内容を口にすることは無い。
深入りも暗黙の了解ってことでされることもすることも無いので、なんら問題はないのです。
このオンラインゲームをやりはじめて三日ぐらいしか経ってないけど、いい人達が沢山のギルドに拾ってもらえて、ブラック本丸では味わえなかった人の温かさを思い出しました。



「あ、初期刀。忘れてた」
本当にすみません。ゲームが楽しすぎて普通に忘れてました。
だって、刀装作り・手入れ以外なにもしなくていいんだよ?ちょうど人が通りかかった時にでも書類のチェックをしてもらって、オッケーが出たらそれを政府に提出する。
書類チェックをしてもらう時が一番、胃がきりきりします…
ちょっと!ここ、誤字してるわよ!もっと良く確認しなさい!!と上司に怒られたことを思い出しました。
そんな感じで離れから出ずにゲームをして、通販で頼んだ漫画やDVDを見たりして、テレビはもともと設置してあったので、時々アニメ見てます。
天国って、ここにあったんだよ。ブラック本丸に天国はあったんだよ。

と、だらだらと言い訳をしましたが、お呼びしようと思います。

ぶわりと花吹雪が部屋に舞ったかと思うと現れた男。
「僕は歌仙兼定。風流を愛する文系名刀さ。どうぞよろしく」
「お、おお…!」
美形なお兄さんだ。
「まったく、好き勝手刀剣達に言われたと思ったら、この離れに追いやられて落ち込むかと思ったら離れ生活を満喫して、僕を呼ぶのを忘れるなんて。酷い主も居たもんだ」
「いや…ははは…すみません…」
そうでしたね、ずっと部屋にいたから、お兄さんも私のこの自堕落生活見てましたよね!!
そして、私は気付いてしまったのだ。
「お兄さん、一緒に遊びましょうか」
今まで一人で出来るゲームをし続けていたけど、いまは違う。二人だ。
よく考えてほしいみんな。一人でもやれるけど人数が居たほうが楽しいゲームって沢山あるだろう?
【おいでませ動物の森】とか【大乱闘ブラザーズスマッシュ】とか【カートマリオ】【怪物狩人】とかあっただろう?
一人でも出来るけど、通信プレイしたほうが楽しいだろう!?
ってことで、思い当たるゲームを片っ端からカートに突っ込んで、歌仙兼定さんの分のスリージーエス 通称:3GS(紫色)を買い与える。
「僕は一応、刀なんだけどね…」
「だって歌仙兼定さん一人で出陣なんて無謀ですし、手入れ部屋だって勝手に使えるか微妙ですもん。
そんな危ない橋を渡るぐらいなら、一緒に自堕落生活と洒落込みましょう!!」
「み、雅じゃない…!」





「か、兼定…やめて……!!」
「どうしてだい?主。僕はただ君に近付きたい、触れたいと思っているだけだよ…」
「…!だめ、来ないでよ…!」
「まったく…酷いな。触れたいだけ、と言っているのに」

「うるせー!お前の下画面見れば分かるわ!!スターでキラキラ光りやがって!!」
「はっはっは!!さあ、一位を差し出せ!!」
「うわあああああああ!!!!私のヨッシィィィイイ!!!!」
私のヨッシーは兼定の操作するキノコ野郎(スター付)に吹っ飛ばされて場外押し出されました。絶許。

「つーかなんでキノピオ使ってるんだよお前!ドンキーコング使え文系ゴリラァ!!!」
「誰がゴリラだ!ドンキーコングなんて雅じゃない!」
「お前はキノピオに雅を感じていたのか…(困惑」
素材集め中にあまりにも集らなさすぎてイライラし、力みすぎて3GSぶっ壊してるだろ。3個ぐらい。まあ、審神者って金が溜まる一方だから全然構わないんだけどね。
そしてレトルトが雅じゃない!って駄々を捏ねるので、簡易キッチンをつけました。どうやって付けたのって?部屋の空いてるスペースを選択して、キッチンを通販するとズバーンと数秒後には出来上がりました。2200年ってまじやべえよ…ほんとこの離れから出たくないもん。
あと冷蔵庫も注文して、野菜とかお肉も通販で届けて貰って冷蔵庫に突っ込む作業。


「今日のお昼はどうするんだい?」
「うーん…食べたいものある?」
「主が作るものは何でも美味しいからね、何でもいいよ」
何でもいいっていう注文が一番大変なんだよ!と思いつつも素直に美味しい発言は嬉しいです。
「今日はカルボナーラでも作ってみるか」
「かるぼなーら?」
「うん。まあ楽しみにしててよ」
エプロンを着けてキッチンに立って食材を漁る。
私の初期刀さんは私のパソコンを使ってなにやら調べ物らしい。
戦国時代のゲームに嵌っているらしく、レア武器取得方法が分からない!と騒いでいたので、攻略サイトを教えてあげたら目を輝かせていました。うちの初期刀がこんなに可愛いわけがない。

「因みに兼定の好きな武将、若しくは使いやすい武将はどなた?」と聞いてみたら
「ガラシャかな!」といい笑顔で返されました。

私は石田三成さんが好きです。




「主、今日は大乱闘しよう!」

初期刀、歌仙兼定さんは一歩一歩と着実に、ゲーム廃人へと向かって行っています。
練度は1ですが、ゲーム練度はたぶん80ぐらいです。




ブラック本丸で楽しい審神者生活

(離れの屋敷と通販と、ゲームとアニメと漫画。

    そして初期刀さえ居ればなんとかなるのさ!)



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