エイミ・ポロンスキー

「ぼくがスカートをはく日」

著者:エイミ・ポロンスキー 訳:西田佳子
発行:学研プラス
初版発行:2018年7月31日


幼少期に両親を亡くして以来、伯父夫婦の家で暮らす主人公・グレイソン。

成長につれて女の子には見えなくなっていく自分に落胆する彼は、学校でも孤立気味。
友人関係が上手くいかず落ち込んでいたところ、演劇オーディションのお知らせを見て、グレイソンは女神役を演じたいと思う。

周囲の戸惑い、偏見の目。いじめや無理解。
それでもグレイソンは「自分がどうしたいか」の声にまっすぐ向き合っていく。

以下ネタバレ

まず冒頭。
お姫様の絵を、それとわからないように図形で書いているシーンに惹かれた。これは当事者の実体験だったりするのかな。こういう細かい部分にリアリティがあると、物語への没入感がぐっと増す気がする。

転校生のアミリアについて。なんか、良くも悪くも「女子」って感じがした。
そのときそのときで一番居心地の良いところに行く感じ……。
というか、アメリカの学校でも「ペア作って」のアレがあるの笑った。


グレイソンが古着屋で好きな服を手に取れないシーン、後に一人で行って「妹へのプレゼント」と言い訳を用意して購入するシーン。好きな服を着ることにすら高い障害があることを示唆されているようで何気に好き。


おじさんは意外なほどに理解があって優しいけど、おばさんの方があまりに独りよがりでちょっと疲れた。当事者でもないのに「いじめられたら」「つらい思いをするのはこの子」と、グレイソンのためを思っての体で邪魔してくるのが本当に鬱陶しい。
こういうタイプは自分が世間にどう思われるかを一番に考えてそう。

両親はだれよりグレイソンの味方だったのに、二人ともグレイソンのそばにいないのが残酷だなぁ……と。手紙ででも「ありのままを受け止めてくれていた」「愛してくれていた」ことがわかってるから、グレイソンはそれを支えにすることができるのかな。


ページは、正直中盤の終わり頃まで疑ってた。笑
ライアンとタイラーに絡まれたところを助けてくれたシーンはなかなか格好良い。

人の個性を尊重する、というか、人が他人に良い意味で興味を持たない世界になれば良いのにと思う。好きなものがある同士はそれで盛り上がれば良いし、自分には理解できない人のことは放っておけばいいのに、なんでわざわざ絡んでくるのか。
グレイソンは最後の一行から先の世界で、これからが本番とばかりにいろんな困難にぶち当たるだろうけど、孤立無援というわけではないので少しでも楽しく幸せに生きていけたら良いな。

表紙と裏表紙のイラストも、厳しくて優しい世界にとてもよく合っていると思った。

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