野中柊

「占い師の娘」

著者:野中柊
発行:KADOKAWA
初版発行:1998年4月1日


アメリカに住む女子高生の主人公(アメリカ人と日本人のハーフ)と、純日本人だけどアメリカでカリスマ占い師をしている(していた)母親の話。

初っ端からショッキングな出だしではあるけど、全体を通して良い意味でノリが軽くポップなので、シリアスになりすぎず読みやすい雰囲気。
ちょっと主人公の癖が強め。でもどこか可愛げがある。

舞台・環境がアメリカということもあってか、明るく軽やかでテンポの良い日常と、その裏に見え隠れする思春期特有(もしくは人間らしさの一つである)孤独・寂しさといった影のバランスが絶妙。

気軽に読めるけど、なにか考えさせられる……月並みな表現だけれど、母の職業でもある占い師・占いといった特殊な分野がメインなこともあって他の作品とは一風変わった世界観に引き込まれる。
あまり長くないので気負わずに読むことができた。

以下ネタバレ

読み始めて気になったのは、良くも悪くも独特な文体。
とくに序盤から中盤。読点が多く、一文が長いのが気になる。

でも比喩が上手い。「猫だって鳥肌を立てそうな猫撫で声」とかとても好き。
血の海を沼と言い換えるセンスも好み。

ただ主人公の話、思考回路がすぐあっちこっちいくのは読んでて若干混乱した。
現実から妄想・過去の回想への脱線が激しく、比率も後者の方が大きいから「いま何してたところだったっけ?」ってなる。


主人公の思考の掘り下げが深いから興味深い考えとかも出てくるけど、それを読者が咀嚼している途中で息つく暇もなく話題が変わるからついていくのが大変。

凄く強引に占いの話と噛み合わせてみれば、「いくつも与えられるヒントの中から、自分にとって気になるものや必要なものだけを選別して受け取る」という行為は、受け取り手として共通した姿勢なのかなぁという感じ。

ボーイフレンド・タケルくんのキャラクター性(性格等)は好き。でも夕飯にケチ付けた部分は嫌な奴だと思った。笑
あとTVディナーっていうものも初めて知った。
チビスケット、いつのまにか存在感がゼロになってて悲しい。外国の猫のニックネームは可愛いのが多い。

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