エッセイ・ノンフィクション
Q人生って?
著者:よしもとばなな
発行:幻冬舎
初版発行:2009年10月25日
タイトルが自己啓発っぽい雰囲気だったから迷ったけど、パラ読みしたらエッセイに近い内容だったので読んでみた。
表紙がハイセンスでおしゃれ。挿絵の猫たちも可愛い。
よしもとばななさん、いろいろ読みたいと思いつつまだ何も読めてないんだよな……。
高校の教科書で「TSUGUMI」が一部だけ載ってて、凄く惹かれた思い出。病弱だけど傍若無人で我が儘な美少女・つぐみの生命力が眩しかった記憶がある。
「Q人生って?」は、著者のサイトに寄せられた読者からの質問(または相談?)に対しての返答を一冊にまとめたもの。
質問は当然とても個人的だけど、人間だからか共通するテーマが多いらしく。
サイトで繰り返し訊ねられる、似た内容の悩みをピックアップして答えていく形式。
質問は「ほんとうの優しさ」「憎しみから解放される方法」といった人類不変の切実なものから、「テスト勉強がイヤでイヤでしょうがない」という親近感と面白味が合わさったものまで様々。
ただ「人生」とタイトルにある通り、やや重いテーマが多めかもしれない。
人生経験が豊富な人は、自分なりの答えと照らし合わせて。
まだまだ若くて青い人は、いずれ自分事となるかもしれない苦悩に「こういう世界・考え方があるんだな」と一種の社会勉強の気持ちで読むと楽しいかも。
もちろん、年齢と人生経験は比例しないとも思うけど。でもある程度年齢を重ねないと体験できないこと(未熟なうちは経験しない方がいいこと)もたくさんあると思うので。
Q&A方式で読みやすく、量は決して多くないけれど充実した一冊だと思う。
人生の節目に読み返したら、以前の自分とは違う感想を抱いてさらに楽しめそう。
以下ネタバレ
とくに印象的だった項目。
Q&Aに対する自分の考えと著者の考えを細かく書いたら、めちゃくちゃ長くなった。
Q1:ほんとうの優しさってなんだと思いますか?
個人的には「味方であること」かなぁと思った。
相手のことを思って厳しいことを言ったり、ときには手助けをせず見守りに徹したり……それでも最終的には絶対「味方」「仲間」であることは、決して相手を一人にしないという優しさが込められている気がする。
著者は、「優しさの定義は育ちで変わると思う」という風に書いていて、自分では辿り着かない視点だなと新鮮な気持ちになった。
たとえば大金を落としてしまったとき、お金を貸してくれるのが優しさか。一緒に探してくれることか、はたまた慰めてくれることか。それとも、何はともあれ警察に付き添ってくれるのが優しさか。
親がしてくれたこと、自分の環境にあったもの。または、親がしてくれなかったこと。自分の環境になかったもの。それによって、その人が思う「優しさ」の定義はまるきり変わってくるという話。
人によって定義がまったく違うからこそ、人間関係は複雑なんだろうなと。でも人間にとって大切なものほどそうであるとも思う。
自分の思う「優しさ」の定義と、相手の持つ「優しさ」が違っても、それを擦り合わせていけるだけの想像力・判断力を常に持っていたい。
Q3:怒りたいときに相手に合わせて笑って誤魔化しては、あとで自己嫌悪に陥ります。だれかに怒ってもいいのですか?
こういう悩みを持つ人、なんかときどき見るイメージ。
自分はけっこう顔に出るタイプだから、「怒ってもいいのか」と悩む前に怒ってしまう。
小学校~中学校くらいまでは、遠慮して怒れないこともあったけども。
著者も質問者さんと同じ経験があるらしく、たとえ場の雰囲気が壊れても、絶交になっても、後からになってしまっても「傷ついた」ことを伝えるようにしているらしい。
この話の締めでは、「言ってもらえたら、こちらも素直に謝れる」「素直に怒って切れる縁なら切れた方がいい」
「その分、新しい人と知り合うことができる」「その人は、正直に怒りあっても笑顔で許しあえる人かもしれない」とあって、いまの自分の考えととてもぴったり合っているなと感じた。
自分も、自分のいないところや鍵垢で文句を言われるくらいなら正面きって言ってほしい。知らずに不満を溜められてても直せないし。
新しい人と知り合う機会は少ないけど、より価値観が合って楽しい人との縁が増えていくようなポジティブな考えを持っていたい。
Q9:仕事が上手くいかず焦っている夫を見ると胸が塞がれます。大切な存在に対して過度な心配をしてしまうのはしょうがないのでしょうか?
この質問はあまりピンとこなかったけど(仕事関係なら、大切な人が相手でも本人の問題と思う)、著者の答えが良いなーと思った。
「もし自分がものすごく困った状態にあったら、と考えると、内心では身悶えするほど心配してくれているとしても、いつも通りの家庭がある方が嬉しい」
確かに心配や不安って伝染するし、そばにいる人がいつも通りでいてくれたら相談もしやすくなりそう。いい大人を過剰に心配しすぎるのも、子ども扱いしてるみたいだし。
なんとなくの印象だけど、こういう悩みは男性より女性の方が多く抱えてそう。偏見だけど。
Q15:高齢出産で不安です、アドヴァイスをください。
この項目は、恐らく一生出産関係と縁のない自分には無関係かもしれないけど、だからこそ興味深かった。
著者も高齢出産ということで、お子さんが六歳になっても常に過労、週に一度くらいは発熱して寝込んでいるのだとか。想像するだけでしんどいな……。
著者曰く、(子どもは)意外と体のどこかが触れていれば安心してくれたり、親の方がイライラしてなければニコニコしてくれたりと、「なんとなくお互い様」という感覚だったらしい。一心同体、というより以心伝心? ほっこり、いいなぁと思える関係性。
もちろん子どもによって、育てる人によって違う大変さがあるんだろうけど、親と子の関係は互いに安らげるものであることが理想な気がする。
出産の痛みについて。毎日ずっと一緒だった人間の顔をぜひ見たい、と思うことしか、あの痛さに対抗できるものはないと思う(著者談)。
この一文を読んで、なにかで「死産ほど辛いものはない」と読んだことを思い出した。大切で大好きな我が子に会えるから、死ぬかもしれないほどの苦痛にだって耐えられるのに……死んでいるとわかっている子を産むのは心身ともに想像を絶するほど辛いだろうな。
著者は「死ぬときはあれほど痛くないといいな」と思いつつ、「そのときは、この痛みを乗り超えればまた親に会える、と思うのかもしれない」とも書いていて、親と仲が悪い人にはけっこう酷な展開だなと。笑
自分にそのときがきたら、そのとき周りにいる大切な人(友人とか)のことを考えながら死にたい。来世でもまた会いたいと思える人がいるのは、それだけでだいぶ幸せなことだと思う。
Q16:子どもが欲しくてもなかなか授からず、赤ちゃんや小さい子を見ると辛いのです。どうしたらいいのでしょうか?
これは「子ども、赤ちゃん」のところを変えると、誰もが感じたことのある悩み(嫉妬)だと感じた。かなり俗っぽい話にすると「ガチャで推しが出ない」とか。
赤ちゃんの方と比べたらしょうもない話だとは思うけど、「喉から手が出るほど欲しいものが、どうあがいても手に入らない」「でも易々と手に入れている人もいる」という煩悶や懊悩の意味で。
対する著者の回答文。その中の一文に、少しだけ引っかかった。
「どんな悲しみにも、同じジャンルの、もっと深い悲しみが必ずあります」
「自分のほうが不幸だと思ったときだけ、その人は真に不幸になります」
……言わんとすることはわかるし、それは正論なんだけど、正論じゃどうしようもないこともあるよねって感想。
ときには自分の悲しみに存分に浸って、悲劇の主人公(?)になって、いっそこの世すべてを憎んだり厭世的になるのも大事かもしれない。ずっとそればっかりだったり、それで他者に危害を加えることがあってはいけないけども。
一応著者も、「そのときの自分のつらさにしか目がいかないのも人間というもの。その弱さもまた大切なもの」と言っているけど、本当に「自分の辛さしか見えていない人」ってそういないんじゃないかな。いや、たまに凄く非常識というか予想外な思考をしてる人もいるけど……。
たいがいは相手にも相手の苦労があることをわかってて、でもつい良いところが目について妬んでしまったり、そういう自分を自己嫌悪したりっていう負の連鎖があるものというか。
「死の受容過程」みたいに、どうあがいても避けられない理不尽に怒って、悲しんで、みっともなく振り回されて……そういう段階を踏んでようやく心の折り合いが付けられる。
そういう苦しみは結局、当人がそうやって乗り越えるしかないのかも。
もしくは乗り越えなくても、受け流したり動じない姿勢でいられるようになったらそれだけで充分。
その先で、著者が語るように「自分は自分だし、自分だからいいこともあるんだし」と思えたら、それはもう圧倒的な幸せの境地という感じがする。
Q17:こんな世の中で、子どもをまっすぐに育てるには、どうしたらいいと思いますか?
この質問はサイトでもダントツくらい多いらしい。ネット社会の影響?
親や保護者、身の回りの大人が「安全ネット」を作っておくことが大事と言う著者。お母さんが料理を作っている後ろ姿で安心を得たり、お父さんとゲームをする時間に素を出せたり。話しやすい親戚のおばさん、リラックスしてお泊りできるおじいちゃんの家など、安全ネットはいくらでもあった方がいい。
これは本当にそうだと思う。安心して帰れる場所があれば、子どもは他所でも多少の無茶・冒険ができる。逆に安心感のない家だと、心身ともに傷を癒せる場所がないから、極端に受け身または怯えがち、もしくはやたら攻撃的な人間に育つ傾向が高くなるかと。
プラスして「親自身、言っていることとやっていることが違う」というのも同意。いい加減は良いけどインチキは良くないし、ダブルバインドは子どもが混乱する。
うちも親に「夕飯の手伝いをしてくれれば助かるのに」と嫌味っぽく言われた後、いざ手伝おうとしたら「あんたに任せてたら日が暮れる」って謎に怒られたのを思い出した。どうしろと???
親も人間だから、インチキになってしまうことはある。食べ物を粗末にしてはいけないと言いつつ、つい食材を大量に買ってしまって、使いきれず捨ててしまったりとか。
それでも、そうなったとき正直に反省の姿を見せれば子どもにはちゃんと伝わる。この結論は子育てする人にとってとても救いだろうなと思った。親だって完璧じゃないのは、子どもにとって安心できることでもあるんじゃないかな、と。
Q19:「家を出て行かれると寂しいので結婚しないでほしい」と懇願する母親をできるだけ悲しませず、結婚するにはどうすれば良いのでしょうか?
この質問を見て真っ先に「そんな親おるんか……」って思った。笑 凄まじい寂しがり。
世の中にはいろんな人がいる。
というか冒頭で「よくある質問を抜粋した」みたいに書いてたから、けっこうこういう親って多いのかもしれない。
著者は「いっぱい喧嘩したりしながら、孫を抱っこさせてあげたりもして、最終的には世界が広がって良かったと感謝できるようになったらそれがいちばん」と前置き、「そもそも子どもを嫌っていない親なら高確率でそうなるはず」とのこと。まあそれがベストというか、ちょっと遅い子離れというかな塩梅?
そもそも親に反対されて諦められる程度の結婚なら、しない方が良いかもしれませんとも。ごもっとも。
親のために結婚しない人生を選んだら、いつか親を憎んでしまう。それがいちばんいけないこと。
わからない親なら、いまからでも学ぶべきという言葉は、親子という関係がいつでも成長途中にあると示しているようで心強かった。たいていは親か子どものどちらかが停滞して、もう片方が諦めの境地に達するんだけど。
Q21:どうすれば時間を有効に使えますか?
これはめっちゃ知りたい。きっとみんな一度は考えたことあるはず。
と思ったら、著者も下手でよく悩むって書いてあった。やっぱりネットの発達で出来ることも増えたから、時間配分も難しくなってるっぽい。ネットの弊害その二。
具体的な解決策は「優先度が高い順にリストを作る」とか、「意味のない飲み会に行かない」とか……。
抽象的には、「いまやってることだけに集中する」「あとのことは、できるだけあとで考える」こっちは意識してもわりと難しそう。
著者は子どもができてから本当に忙しくなり、一日は何度でもリスタートすることに気が付いた模様。
インパクトのあった出来事に一日支配されるのではなく、朝とてつもなく悲しいこと、嫌なことがあっても、昼にはまた違う出来事があり、夕方、夜とそれぞれに別のことをして過ごす。同じ一日でも、内訳はひとつひとつバリエーションがあることに気付ければ、何回でもやり直せるので時間を無駄にしないで済む。
ある程度の経験があるからこその思考だなと思った。一日を分割して捉えるの良さそう。
生活に合わせて、時間帯よりやることで区切るのも良さげ。
Q23:家族も友達も彼氏もいるのに、淋しいです。どうしたら淋しくなくなりますか?
これもちょっと自分と重なる部分のあった質問。
自分は一人なら一人で、創作とかゲームなんかに没頭できるのでまだマシかも。ずっと一人だとさすがに淋しくなるけど。笑
淋しがりな人の何が問題かって、結局自分の寂しさを埋めてくれるなら誰でもいいところじゃないかなと思う。
著者の回答。たとえば交通事故に巻き込まれて一人で死んでいくとしても、家族や愛する人がいれば、その人たちがこういう目に遭わなくて良かったと思うでしょう。
心から愛する人がいれば、どんなに淋しく見える状況でもひとりではない(ざっくり抜粋)。
これは確かにーと納得。ついでに言うと、相手から愛が返ってきているかは問題じゃないので、やっぱり愛情っていうのは能動的で一方的なものなんだなぁとも。
「愛」の定義は冒頭の「やさしさ」と同じで個人差がありそうだけど、「大切」とほとんど同義のような気もする。
「ほんとうの孤独は果てしなく暗くて宇宙空間くらいに大きいけれどどこか甘く、自分を強くしてくれます」(本文P128引用)
これも素直にそうだと実感。
ときどき、自分は人生でいちばん大変だった学生の頃(小学校高学年~高校)の頃をどうやって乗り切ってたのか疑問に思うことがあるけど、思えば窮地にいるときほどメンタル強かったかもしれん。いまでも弱いつもりはまったくないけど。
Q27:死への不安にとらわれてしまうとき、どうしたら前向きな気持ちになれますか?
この項目では、ジェリー・ロペスというサーファーの伝記に関する話が面白かった。
亡くなる人も多いほど過酷なアウトドアライフを送っているけれど、そういう人こそ命に対して繊細で気を付けているんだという気付き。死と隣り合わせだから準備を怠らず、危険と思ったとき直感が働くよう精神を鍛錬していて、それでもだめだというときでさえ最後まで諦めないようにと自分を高めている。
それこそが本当に「生きることを愛している」ということで、この伝記もぜひ読んでみたい。死がすぐそばにある生き方というと、命を惜しんでいないようなイメージを持ってしまうけど、命を大切にして初めて心から生を満喫できるんだろうな。
他にも「病院選びはどうしているか(いい医者やセラピストの基準とは?)」や「よく食べ過ぎて後悔します」などいろんな話題があるけど、ここまでの文章がすでに6400字を越えているので割愛。
どれもためになる考え方ばかりで、自分の考えと比べることで自分自身をより発展させていけるように思えた。
改めて著者の小説「TSUGUMI」を読破するという目標もできた。満足。
著者:よしもとばなな
発行:幻冬舎
初版発行:2009年10月25日
タイトルが自己啓発っぽい雰囲気だったから迷ったけど、パラ読みしたらエッセイに近い内容だったので読んでみた。
表紙がハイセンスでおしゃれ。挿絵の猫たちも可愛い。
よしもとばななさん、いろいろ読みたいと思いつつまだ何も読めてないんだよな……。
高校の教科書で「TSUGUMI」が一部だけ載ってて、凄く惹かれた思い出。病弱だけど傍若無人で我が儘な美少女・つぐみの生命力が眩しかった記憶がある。
「Q人生って?」は、著者のサイトに寄せられた読者からの質問(または相談?)に対しての返答を一冊にまとめたもの。
質問は当然とても個人的だけど、人間だからか共通するテーマが多いらしく。
サイトで繰り返し訊ねられる、似た内容の悩みをピックアップして答えていく形式。
質問は「ほんとうの優しさ」「憎しみから解放される方法」といった人類不変の切実なものから、「テスト勉強がイヤでイヤでしょうがない」という親近感と面白味が合わさったものまで様々。
ただ「人生」とタイトルにある通り、やや重いテーマが多めかもしれない。
人生経験が豊富な人は、自分なりの答えと照らし合わせて。
まだまだ若くて青い人は、いずれ自分事となるかもしれない苦悩に「こういう世界・考え方があるんだな」と一種の社会勉強の気持ちで読むと楽しいかも。
もちろん、年齢と人生経験は比例しないとも思うけど。でもある程度年齢を重ねないと体験できないこと(未熟なうちは経験しない方がいいこと)もたくさんあると思うので。
Q&A方式で読みやすく、量は決して多くないけれど充実した一冊だと思う。
人生の節目に読み返したら、以前の自分とは違う感想を抱いてさらに楽しめそう。
以下ネタバレ
とくに印象的だった項目。
Q&Aに対する自分の考えと著者の考えを細かく書いたら、めちゃくちゃ長くなった。
Q1:ほんとうの優しさってなんだと思いますか?
個人的には「味方であること」かなぁと思った。
相手のことを思って厳しいことを言ったり、ときには手助けをせず見守りに徹したり……それでも最終的には絶対「味方」「仲間」であることは、決して相手を一人にしないという優しさが込められている気がする。
著者は、「優しさの定義は育ちで変わると思う」という風に書いていて、自分では辿り着かない視点だなと新鮮な気持ちになった。
たとえば大金を落としてしまったとき、お金を貸してくれるのが優しさか。一緒に探してくれることか、はたまた慰めてくれることか。それとも、何はともあれ警察に付き添ってくれるのが優しさか。
親がしてくれたこと、自分の環境にあったもの。または、親がしてくれなかったこと。自分の環境になかったもの。それによって、その人が思う「優しさ」の定義はまるきり変わってくるという話。
人によって定義がまったく違うからこそ、人間関係は複雑なんだろうなと。でも人間にとって大切なものほどそうであるとも思う。
自分の思う「優しさ」の定義と、相手の持つ「優しさ」が違っても、それを擦り合わせていけるだけの想像力・判断力を常に持っていたい。
Q3:怒りたいときに相手に合わせて笑って誤魔化しては、あとで自己嫌悪に陥ります。だれかに怒ってもいいのですか?
こういう悩みを持つ人、なんかときどき見るイメージ。
自分はけっこう顔に出るタイプだから、「怒ってもいいのか」と悩む前に怒ってしまう。
小学校~中学校くらいまでは、遠慮して怒れないこともあったけども。
著者も質問者さんと同じ経験があるらしく、たとえ場の雰囲気が壊れても、絶交になっても、後からになってしまっても「傷ついた」ことを伝えるようにしているらしい。
この話の締めでは、「言ってもらえたら、こちらも素直に謝れる」「素直に怒って切れる縁なら切れた方がいい」
「その分、新しい人と知り合うことができる」「その人は、正直に怒りあっても笑顔で許しあえる人かもしれない」とあって、いまの自分の考えととてもぴったり合っているなと感じた。
自分も、自分のいないところや鍵垢で文句を言われるくらいなら正面きって言ってほしい。知らずに不満を溜められてても直せないし。
新しい人と知り合う機会は少ないけど、より価値観が合って楽しい人との縁が増えていくようなポジティブな考えを持っていたい。
Q9:仕事が上手くいかず焦っている夫を見ると胸が塞がれます。大切な存在に対して過度な心配をしてしまうのはしょうがないのでしょうか?
この質問はあまりピンとこなかったけど(仕事関係なら、大切な人が相手でも本人の問題と思う)、著者の答えが良いなーと思った。
「もし自分がものすごく困った状態にあったら、と考えると、内心では身悶えするほど心配してくれているとしても、いつも通りの家庭がある方が嬉しい」
確かに心配や不安って伝染するし、そばにいる人がいつも通りでいてくれたら相談もしやすくなりそう。いい大人を過剰に心配しすぎるのも、子ども扱いしてるみたいだし。
なんとなくの印象だけど、こういう悩みは男性より女性の方が多く抱えてそう。偏見だけど。
Q15:高齢出産で不安です、アドヴァイスをください。
この項目は、恐らく一生出産関係と縁のない自分には無関係かもしれないけど、だからこそ興味深かった。
著者も高齢出産ということで、お子さんが六歳になっても常に過労、週に一度くらいは発熱して寝込んでいるのだとか。想像するだけでしんどいな……。
著者曰く、(子どもは)意外と体のどこかが触れていれば安心してくれたり、親の方がイライラしてなければニコニコしてくれたりと、「なんとなくお互い様」という感覚だったらしい。一心同体、というより以心伝心? ほっこり、いいなぁと思える関係性。
もちろん子どもによって、育てる人によって違う大変さがあるんだろうけど、親と子の関係は互いに安らげるものであることが理想な気がする。
出産の痛みについて。毎日ずっと一緒だった人間の顔をぜひ見たい、と思うことしか、あの痛さに対抗できるものはないと思う(著者談)。
この一文を読んで、なにかで「死産ほど辛いものはない」と読んだことを思い出した。大切で大好きな我が子に会えるから、死ぬかもしれないほどの苦痛にだって耐えられるのに……死んでいるとわかっている子を産むのは心身ともに想像を絶するほど辛いだろうな。
著者は「死ぬときはあれほど痛くないといいな」と思いつつ、「そのときは、この痛みを乗り超えればまた親に会える、と思うのかもしれない」とも書いていて、親と仲が悪い人にはけっこう酷な展開だなと。笑
自分にそのときがきたら、そのとき周りにいる大切な人(友人とか)のことを考えながら死にたい。来世でもまた会いたいと思える人がいるのは、それだけでだいぶ幸せなことだと思う。
Q16:子どもが欲しくてもなかなか授からず、赤ちゃんや小さい子を見ると辛いのです。どうしたらいいのでしょうか?
これは「子ども、赤ちゃん」のところを変えると、誰もが感じたことのある悩み(嫉妬)だと感じた。かなり俗っぽい話にすると「ガチャで推しが出ない」とか。
赤ちゃんの方と比べたらしょうもない話だとは思うけど、「喉から手が出るほど欲しいものが、どうあがいても手に入らない」「でも易々と手に入れている人もいる」という煩悶や懊悩の意味で。
対する著者の回答文。その中の一文に、少しだけ引っかかった。
「どんな悲しみにも、同じジャンルの、もっと深い悲しみが必ずあります」
「自分のほうが不幸だと思ったときだけ、その人は真に不幸になります」
……言わんとすることはわかるし、それは正論なんだけど、正論じゃどうしようもないこともあるよねって感想。
ときには自分の悲しみに存分に浸って、悲劇の主人公(?)になって、いっそこの世すべてを憎んだり厭世的になるのも大事かもしれない。ずっとそればっかりだったり、それで他者に危害を加えることがあってはいけないけども。
一応著者も、「そのときの自分のつらさにしか目がいかないのも人間というもの。その弱さもまた大切なもの」と言っているけど、本当に「自分の辛さしか見えていない人」ってそういないんじゃないかな。いや、たまに凄く非常識というか予想外な思考をしてる人もいるけど……。
たいがいは相手にも相手の苦労があることをわかってて、でもつい良いところが目について妬んでしまったり、そういう自分を自己嫌悪したりっていう負の連鎖があるものというか。
「死の受容過程」みたいに、どうあがいても避けられない理不尽に怒って、悲しんで、みっともなく振り回されて……そういう段階を踏んでようやく心の折り合いが付けられる。
そういう苦しみは結局、当人がそうやって乗り越えるしかないのかも。
もしくは乗り越えなくても、受け流したり動じない姿勢でいられるようになったらそれだけで充分。
その先で、著者が語るように「自分は自分だし、自分だからいいこともあるんだし」と思えたら、それはもう圧倒的な幸せの境地という感じがする。
Q17:こんな世の中で、子どもをまっすぐに育てるには、どうしたらいいと思いますか?
この質問はサイトでもダントツくらい多いらしい。ネット社会の影響?
親や保護者、身の回りの大人が「安全ネット」を作っておくことが大事と言う著者。お母さんが料理を作っている後ろ姿で安心を得たり、お父さんとゲームをする時間に素を出せたり。話しやすい親戚のおばさん、リラックスしてお泊りできるおじいちゃんの家など、安全ネットはいくらでもあった方がいい。
これは本当にそうだと思う。安心して帰れる場所があれば、子どもは他所でも多少の無茶・冒険ができる。逆に安心感のない家だと、心身ともに傷を癒せる場所がないから、極端に受け身または怯えがち、もしくはやたら攻撃的な人間に育つ傾向が高くなるかと。
プラスして「親自身、言っていることとやっていることが違う」というのも同意。いい加減は良いけどインチキは良くないし、ダブルバインドは子どもが混乱する。
うちも親に「夕飯の手伝いをしてくれれば助かるのに」と嫌味っぽく言われた後、いざ手伝おうとしたら「あんたに任せてたら日が暮れる」って謎に怒られたのを思い出した。どうしろと???
親も人間だから、インチキになってしまうことはある。食べ物を粗末にしてはいけないと言いつつ、つい食材を大量に買ってしまって、使いきれず捨ててしまったりとか。
それでも、そうなったとき正直に反省の姿を見せれば子どもにはちゃんと伝わる。この結論は子育てする人にとってとても救いだろうなと思った。親だって完璧じゃないのは、子どもにとって安心できることでもあるんじゃないかな、と。
Q19:「家を出て行かれると寂しいので結婚しないでほしい」と懇願する母親をできるだけ悲しませず、結婚するにはどうすれば良いのでしょうか?
この質問を見て真っ先に「そんな親おるんか……」って思った。笑 凄まじい寂しがり。
世の中にはいろんな人がいる。
というか冒頭で「よくある質問を抜粋した」みたいに書いてたから、けっこうこういう親って多いのかもしれない。
著者は「いっぱい喧嘩したりしながら、孫を抱っこさせてあげたりもして、最終的には世界が広がって良かったと感謝できるようになったらそれがいちばん」と前置き、「そもそも子どもを嫌っていない親なら高確率でそうなるはず」とのこと。まあそれがベストというか、ちょっと遅い子離れというかな塩梅?
そもそも親に反対されて諦められる程度の結婚なら、しない方が良いかもしれませんとも。ごもっとも。
親のために結婚しない人生を選んだら、いつか親を憎んでしまう。それがいちばんいけないこと。
わからない親なら、いまからでも学ぶべきという言葉は、親子という関係がいつでも成長途中にあると示しているようで心強かった。たいていは親か子どものどちらかが停滞して、もう片方が諦めの境地に達するんだけど。
Q21:どうすれば時間を有効に使えますか?
これはめっちゃ知りたい。きっとみんな一度は考えたことあるはず。
と思ったら、著者も下手でよく悩むって書いてあった。やっぱりネットの発達で出来ることも増えたから、時間配分も難しくなってるっぽい。ネットの弊害その二。
具体的な解決策は「優先度が高い順にリストを作る」とか、「意味のない飲み会に行かない」とか……。
抽象的には、「いまやってることだけに集中する」「あとのことは、できるだけあとで考える」こっちは意識してもわりと難しそう。
著者は子どもができてから本当に忙しくなり、一日は何度でもリスタートすることに気が付いた模様。
インパクトのあった出来事に一日支配されるのではなく、朝とてつもなく悲しいこと、嫌なことがあっても、昼にはまた違う出来事があり、夕方、夜とそれぞれに別のことをして過ごす。同じ一日でも、内訳はひとつひとつバリエーションがあることに気付ければ、何回でもやり直せるので時間を無駄にしないで済む。
ある程度の経験があるからこその思考だなと思った。一日を分割して捉えるの良さそう。
生活に合わせて、時間帯よりやることで区切るのも良さげ。
Q23:家族も友達も彼氏もいるのに、淋しいです。どうしたら淋しくなくなりますか?
これもちょっと自分と重なる部分のあった質問。
自分は一人なら一人で、創作とかゲームなんかに没頭できるのでまだマシかも。ずっと一人だとさすがに淋しくなるけど。笑
淋しがりな人の何が問題かって、結局自分の寂しさを埋めてくれるなら誰でもいいところじゃないかなと思う。
著者の回答。たとえば交通事故に巻き込まれて一人で死んでいくとしても、家族や愛する人がいれば、その人たちがこういう目に遭わなくて良かったと思うでしょう。
心から愛する人がいれば、どんなに淋しく見える状況でもひとりではない(ざっくり抜粋)。
これは確かにーと納得。ついでに言うと、相手から愛が返ってきているかは問題じゃないので、やっぱり愛情っていうのは能動的で一方的なものなんだなぁとも。
「愛」の定義は冒頭の「やさしさ」と同じで個人差がありそうだけど、「大切」とほとんど同義のような気もする。
「ほんとうの孤独は果てしなく暗くて宇宙空間くらいに大きいけれどどこか甘く、自分を強くしてくれます」(本文P128引用)
これも素直にそうだと実感。
ときどき、自分は人生でいちばん大変だった学生の頃(小学校高学年~高校)の頃をどうやって乗り切ってたのか疑問に思うことがあるけど、思えば窮地にいるときほどメンタル強かったかもしれん。いまでも弱いつもりはまったくないけど。
Q27:死への不安にとらわれてしまうとき、どうしたら前向きな気持ちになれますか?
この項目では、ジェリー・ロペスというサーファーの伝記に関する話が面白かった。
亡くなる人も多いほど過酷なアウトドアライフを送っているけれど、そういう人こそ命に対して繊細で気を付けているんだという気付き。死と隣り合わせだから準備を怠らず、危険と思ったとき直感が働くよう精神を鍛錬していて、それでもだめだというときでさえ最後まで諦めないようにと自分を高めている。
それこそが本当に「生きることを愛している」ということで、この伝記もぜひ読んでみたい。死がすぐそばにある生き方というと、命を惜しんでいないようなイメージを持ってしまうけど、命を大切にして初めて心から生を満喫できるんだろうな。
他にも「病院選びはどうしているか(いい医者やセラピストの基準とは?)」や「よく食べ過ぎて後悔します」などいろんな話題があるけど、ここまでの文章がすでに6400字を越えているので割愛。
どれもためになる考え方ばかりで、自分の考えと比べることで自分自身をより発展させていけるように思えた。
改めて著者の小説「TSUGUMI」を読破するという目標もできた。満足。
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