短歌


 どうしても思い出せないパスワードあの日の僕は他人のようで


 薄紅がわらって春に風を呼ぶ今が盛りと知る刹那の価値


 オムライス ケチャップで書く君の名をスプーンの背中の丸さで潰す


 何年後何分何秒生きている保証のない吾はただ空を見る


 あの人のおかげで好きになった曲 嫌いになるのもあの人のせい


 大人にはなりたくないと言った春 安心しろよ なれないからさ


 寿命とか命の残数知りたいと思わないまま蒼穹あおぐ


 犬じゃないプレーリードッグ猫じゃないミーアキャットとごっちゃになった


 憂鬱が重なり知ったシャンプーは腐るんだとかそういう些末


 いつだって否定しないと知っていて「愛してる?」と訊いた四月一日わたぬき
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