短歌


 ライターを初めて点けた二十歳 煙たなびく仏壇の間で


 熱帯夜うなじ刺されて赤い跡 隣の文虫足蹴で叱る


 「いい子」とは「都合のいい子」と知っていて それでも「いい子」でいたかった夜


 短冊を洗濯バサミにぶら下げて笑うあんたは他人よその織姫


 同化することを愛だと思ってたあの頃確かにどうかしていた


 手放したものの幸せ祈りつつすがらぬように合わす手のひら


 ハイライトセッタマルボロウィンストン ピースを捨てて君とキスする


 掌に収まるほどの満月でお茶と弁当五百円なり


 眠れない静寂の夜しみた朝 明けない夜があってもいいのに


 あの夜にあたしが勧めたあの曲を次の彼女に教えた君 死ね
1/5ページ