死人に梔子
机上に並ぶ小物を眺め、ケイジはゼリーの器に手を伸ばした。
ご丁寧にもスプーンまで添えられているそれを、一口分だけすくってみる。
「なんだか、絵がベタベタになりそうだね……」
「ゼリー、ですか?」
不思議そうな顔で首を傾げるカイ。
ケイジは、ゼリーを絵の口元に運びながら答えた。
「子どもの頃に、タチの悪い風邪をひいたことがあってね。粉薬って喉に引っかかるから嫌いだったんだけど、薬を飲みやすくするセリーってやつを母親が用意してくれてて」
「……ああ、ゼリーに薬を混ぜて苦みを抑えるものですね」
カイも合点がいった風に頷き、「まあ、肝心の薬は見当たりませんが」と辺りを見回した。
「物は試しだよ」
そんな言葉と共に、ケイジは一口分のゼリーを絵の空洞へ投入する。
ゼリーがつるりと滑り落ちた瞬間、どこから子どもの声がした。
『さっき食べたよー』
そんな台詞の後に、空洞へ落としたゼリーが跳ね返ってくる。
「……食べ物を粗末にするのは、いただけませんね」
「あー、床に落ちちゃったね。踏まないようにねー」
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