死人に梔子


 それからも、二人は懸命に地下室内を探索した。
 しかし、事態は一向に進展しなかった。
「……もしかすると、脱出に必要なものを失ってしまったのかもしれない」
 疲れた表情でケイジが言い、カイも憔悴した様子で険しい顔をする。

 充分な食料もない閉鎖空間。
 体力も精神力も人並み以上にはある二人だが、長い時間をかけて捜索を続けても、脱出の鍵となるものは見当たらなかった。
「……睡眠をとって体力を温存すれば、数日は持ちます」
「その間に、他の皆が気付いてくれるといいけどね」
 希望の薄い声で交わし、どちらからともなく壁に背を預ける。深い溜息が漏れた。


 地下室の照明は消えなかったが、やがてケイジはゆっくりとまぶたをおろした。
 少しでも体を休め、睡眠で体力を回復しようと思った。
 ……しかし、この地下室にこれ以上の手掛かりがあるとは思えない。
「……」
 同じく壁にもたれているカイも、無言で目を閉じていた。
 そして長い沈黙が落ちる。

 どちらも、ぴくりとも動かなくなった。


バッドエンド『脱出失敗』

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