死人に梔子


『井』の積み木を外してみると、壁に現れた柵の絵は一瞬で消えた。
 代わりに、木枠へ『化』の積み木をはめてみる。
 すると壁の絵に変化が起こった。

 壁に描かれた池を泳ぐ一羽の鴨。
 群れる十数羽とは少し離れた場所にいるその一羽は、おもむろに羽を広げた。
 アニメーションのように絵が動き、鴨は実体を持って壁から飛び出した。
「わっ」
 カイが身をひるがえして鴨を避ける。
 ケイジも、飛来する鴨を難なく回避した。

 鴨は、二人には目もくれず、地下室内を旋回した。
「他の鴨は出てこないのですね」
 ちらりと壁に目をやるカイ。
 その声を掻き消すような、羽ばたきの音が響いた。
 

 14ページ
20/93ページ