死人に梔子


『十』の積み木を外してみると、壁に現れた田んぼの絵は一瞬で消えた。
 代わりに『化』の積み木をはめると、絵には別の変化が現れた。

 壁に描かれた池を泳ぐ一羽の鴨。
 群れる十数羽とは少し離れた場所にいるその一羽は、おもむろに羽を広げた。
 アニメーションのように絵が動き、鴨は実体を持って壁から飛び出した。
「わっ」
 カイが身をひるがえして鴨を避ける。
 ケイジも、飛来する鴨を難なく回避した。

 鴨は、二人には目もくれず、地下室内を旋回した。
「他の鴨は出てこないのですね」
 ちらりと壁に目をやるカイ。
 その声を掻き消すような、羽ばたきの音が響いた。


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