まとめ



 陽は落ちて名残惜しげに天を焼く伸びる影影本丸うちを目指した(薬研藤四郎)


 暮れなずむ紅蓮の空に飛ぶ鳥の帰る巣思う賑やかな帰途(秋田藤四郎)


 「おかえり」と寄せては返す「ただいま」の声は潮騒本丸うちが満ちてく(審神者)


 割る前の玉子に顔を描いてみる名前は付けない命のかたまり(鶴丸国永)


 玉萵苣のなにを守ると知れぬ皮はがす指先柔く濡れたり(燭台切光忠)


 ずぶり、ばきっ、ごとん、ざっくり、南瓜が僕らの命の糧となる音(日向正宗)


 ざくざくと千切りの刑 甘藍は声も上げずに血も流さずに(髭切)


 「飯」「ご飯」「食事」「おまんま」たくさんの声は揃って「いただきます」と(堀川国広)


 この鶏が夕餉しぬと決まった十七時 生かし生かされ僕らを生かして(小夜左文字)


 「おはよう」を交わした今朝の鶏に同じ温度で言う「いただきます」(石切丸)
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