過保護系男子
お名前変更
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
私の少し前を歩く藍は、自分の部屋の前でピタッと止まり、私を連れ込んだ。
部屋に入った途端、藍の動きが止まる。
私の腕を掴んでいた藍の手が緩み、ストンと離れる。
俯いているため表情は見えない。
藍は部屋の奥に歩いて行き、ベッドにうつ伏せで倒れこんだ。
藍を追いかけてベッドに近づき、様子を伺う。
『藍…?どうしたの?急に抜け出したらみんなが心配するよ?』
優しく問いかけるけど、返事は無い。
「ねぇ…」
不意に藍が、顔を伏せたまま言葉を発する。
「レイジのこと、スキなの?」
『えっ?』
思いがけない問いに驚いてしまう。
なぜそんな突拍子もないことを言うんだろう。
『えっと・・・人としてというか、人間的にはいい人じゃないかな?よき友達というか…』
藍の不可解な言動に困惑しながらも、私は素直に思っていることを話す。
「そう…だよね。ごめん」
『な、何で謝るの?』
すると藍は、顔をこちらに向けた。
澄んだブルーの瞳に射抜かれる。
「ボク、嫉妬しちゃったみたい」
『えっ』
突然のカミングアウトに私は目を丸くする。
藍が嫉妬…?そんな…。藍は嫉妬なんてしないのだと思ってた。
しかもすこし苦笑しながら言ったその言葉と表情の破壊力は、私の心臓を速くするのに十分だった。
藍はベッドから起き上がり、私のほうを向いて座る。
「レイジたちと仲良く話してるの見てさ、キミのその笑顔を他の男に見せるのってこんなに悔しいんだなって実感した。カミュとランマルだって、キミの気を引くような言動をするし。」
上目遣いで、少しふてたように言う。
藍は私の手を取ると、目を合わせたまま自分の方に引き寄せる。
藍と向かい合うように座った。
すると藍は、私をぎゅっと抱きしめ、私の耳に唇を寄せる。
息が掛かりそうでくすぐったい。
「ボクさ、ホントはすごく嫉妬深いのかも。」
耳元で囁かれた藍の言葉。藍がこんなことを言うなんて。
いや、藍にこんなことを言わせてしまうほど思われている私は、すっごく幸せものだ。
『藍…ごめんね不安にさせて。でも、藍がそう思ってくれるのが嬉しい。私は藍だけが大好きだよ。』
藍を安心させようと、気持ちを真っ直ぐ伝える。
「ありがとう。ボクも、キミが大好き。キミのことになると、周りが見えなくなってしまうくらい…」
そう言うと藍は、さらに強く抱きしめてくる。
「一つキミに、お願いがあるんだけど」
藍がお願いなんて珍しい。今日の藍はいつもと違いすぎて、正直何を言い出すか分からなくてハラハラする。
『な、なーに?』
案の定、その予感は当たった。
「ボクのことスキっていうシルシに、キミからキスをして」
『え、えええぇ!わ、私から…』
いつもキスは藍からしてくれて、私からはしたことがない。というか、勇気がない。
自分からなんて無理だ…恥ずかしすぎる。
考えただけで顔が熱くなるのがわかる。
藍にキスをされるときだってドキドキして顔が紅潮してしまうのに、自分からなんて尚更緊張してしまう。
「お願い。ね?」
スッと私の腰に手を回して、顔を近づける。
あざとい、あざとすぎる。吸い込まれるような、子犬のような目でおねだりなんか、勝てるわけない。
『わ、わかった…//』
「顔、赤いよ?まだ何もしてないけど」
『し、仕方ないもん…』
「…可愛すぎ。あーもう、ボクからしちゃいそうになっちゃうよ。焦らさないで」
『焦らしてない!す、するから…!』
そう決心して藍を見つめるけど、思いっきり見つめられていて、動けない。
こんな綺麗な顔がこんなに近くにあったら、見とれてしまうに決まってる。
「ねぇ、まだ?」
『も、もうちょっと待って…』
「ダーメ。じゃあ今から5秒以内にしないと、ボクから激しいキスするから。」
『え、えっ!ちょっ、ちょっとまっ…
「5、4、3」
『は、速いって!』
「2、1」
『うぅ…もう……』
チュッ
私の砂つぶのような勇気をかき集めて、触れるだけのキスをした。
「え、今ので終わり?」
『一応キスのうちには入る!///これでよろしいですか?」
「いいわけないよ」
そう言うと同時に、藍は私の頭を手で支え、強引に唇を奪った。
『んっ…!///ふっ…』
「んっ…」
こんな激しいキス、初めて。激しいけど、優しい。まるで藍の思いが全部伝わってくるみたいに。
薄く目を開けると、見たことない藍の顔。少し頬が赤くて、私を夢中で求めてる。
『ふぁっ…』
私の酸素の限界を悟った藍は、ゆっくりと、名残惜しそうに唇を離す。
「ボクに嫉妬させた罰だよ。」
『藍さん容赦ないっすね…』
「これから嫉妬させるたびにするから」
『……気をつけます』
藍はふっと微笑むと、もう一度触れるだけのキスをした。
「ねぇ、これからのことだけど…」
『ん?』
「ボクたちのこと、みんなに話してみない?どうしても嫌っていうなら、言わないけど。」
『そうだね…隠してるのも、なんか嫌だしね』
「名無しは…ボクたちのこと話して、みんなの接し方が変わったり、気を遣われたりするのが嫌って思ってるかもしれないけど、それは違うと思うよ」
『えっ…?』
「あの人たちは、そんなことしないと思う」
藍のまっすぐな瞳から、メンバーへの信頼を感じる。
なんだかんだ言って、お互いのことをちゃんとわかってるんだろうな。
『藍がそう言うなら、そうだよね!みんなに話そう。』
「ありがとう。じゃあ早速行こうか」
『う、うん!なんか、恥ずかしいな。急に2人で出て行って。」
一階に戻る途中、ふと気になったことを聞く。
『ねぇ藍、なんで急に話そうって思ったの?』
「1つは、名無しはボクのものだって見せつけて他のメンバーをけん制するため。2つ目の理由は、ボクの見てないところで、キミが男に絡まれてたら守ってもらうためだよ。キミ、しょっちゅうプロデューサーに絡まれてるみたいだし。」
『藍…かなり過保護だね』
「当たり前。大切な人を奪われるわけにはいかないからね。」
そう言った藍は、爽やかな顔をしていた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「ということで、ボクたち付き合ってるから」
「えええーー!……って言いたいところだけど…実は知ってた。もーアイアイったら、言ってくれないなんて水臭いよぉ!」
「ふんっ…美風も意外と抜け目ないな」
「名無しを大事にしてやれよ」
「わかってる」
「アイアイがよそ見してたらお兄さんが名無しちゃんを奪い去っちゃうからねー♪」
「…は?そんなの許さないから。まずよそ見しないし」
「じょーだんだって~!アイアイは嫉妬深いねえ」
「新しいデータだな」
「名無し、藍になんかされたらすぐに俺に言え」
『蘭丸も過保護なのか…』
「みんな、手出したら本当で許さないから」
「「「…はい」」」
END →あとがき