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俺の中では、彼女が好きという気持ちは当たり前になっていた。
わかりやすく言うと、「彼女が好きだから何かをする」ということもない、ということだ。
ただ想っているだけ。
この恋が叶うなど、思ったことはない。
ただ、彼女を見ていられるだけでいいのだ。
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学園の頃、一十木、四ノ宮などの仲のいいグループの中に彼女がいた。
あまり話すことはない。しかし、彼女と同じグループに居られるだけで満足だった。
『おはよう聖川くん』
そう言ってもらえるだけで、その日は幸せな日だった。
イベントごとに髪型や服装を変える彼女にときめき、何を着ても彼女は可憐だった。
「名無し…か」
名前で呼べるようになった日には、嬉しさで部屋で少し舞い上がったりもした。
ある時テストで、彼女に書いてもらった曲に歌詞をつけて歌ったことがあった。
その時のテストのお題は「ラブソング」
ラブソングを歌うのは初めてではないし、むしろラブソングを歌うことのほうが多かった。
しかしそのテストで俺は、1位を取ってしまったのだ。
彼女はとても喜んでくれた。
俺も嬉しかった。
月宮先生は
『まぁくんの気持ちが曲からすごく伝わってくるわ。切なくて、ここがキューーンってした。まるでほんとうに恋をしているみたいに…』
とおっしゃっていた。
事実、彼女への思いを曲に込めた。しかし、気持ちが入りすぎてしまったようで、1位を取ってしまった。嬉しいが、かなり恥ずかしかった。
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彼女も同じマスターコースとなり、同じ屋根の下で暮らすことになった。
しかし、毎日会っていた学園の頃と比べると会う機会は減り、彼女のことを考える時間が増えた。
窓の外を眺める。
風が心地よい、快晴だ。
壁にもたれて、あの曲を口ずさむ。
いつまでも、この曲は俺の宝物だ。
一番を歌い終わり、再び物思いにふける。
「聖川さん。」
「っ!!??びっくりさせるな一ノ瀬。全く気づかなかった。」
「何回か呼んだのですがね…。それより、いつまで思い続けるつもりです?」
「なっ、なんのことだ?」
「隠しても無駄です。先ほど口ずさんでいた曲の作曲者のことです。」
一ノ瀬の言葉に驚く。とっくにバレていたか。
しかし、もう決まっている答えを口にする。
「どうすることもない。俺はただ、思っているだけでいいのだ。この先も」
「ほんとうにそれでいいのですか。一度しかない人生、後悔しますよ」
「…いいのだ」
「彼女に愛する人ができても?」
「っ…」
「昨日レンが彼女に言い寄っていましたよ」
「なにっ…!?」
「ほら、嫌でしょう。ならば、思いを伝える努力をしたらどうです。ちなみに、レンのことは嘘ですから安心してください」
立ち去ろうとした一ノ瀬が振り返る。
「思いを伝えることで、幸せになれるのは貴方だけではないのですよ…」
一ノ瀬は言い終えると、去っていく。
「…?」
俺は最後の言葉の意味がわからなかった。その時は。
彼女を思い続けた日々が、俺の強さに変わる。
彼女の存在は、当たり前ではないのだ。
いつか、誰かのものになってしまうかもしれない。
俺は少しずつ彼女に想いを伝える決心をはじめた。
END
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あとがき
ごめんなさい、よくわからない話になってしまいました。
これに続く話が『##B4_1042773##』です。(リンクで飛べます)
真斗くんの一途な思いが書きたかっただけです。
読んでいただきありがとうございました。
2015.12.13
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