桜のような幾つもの花の金細工に紅い石のついた簪に、暁が首を振る

『気に入らない訳じゃないですよ？ただ、私に簪は無理です』

似合うのにと沈んだ檜佐木に苦笑する

簪をしようとしたら、絶対に髪を切る羽目になってしまう

「そういや、不器用だったな」

いつも髪紐で長い髪を下の方でしか結んでいないのは、そういう事かと納得する

『自分で見ながらでないと結べなくて…それでも歪なのですが』

よく乱菊に直して貰っている

「なら、これなんかどうだ？」

『凄い、“龍雷妃”みたいです！』

瑠璃紺のグラデーションが美しい髪紐に暁の顔が華やぐ

暁の笑顔に満足してもう一本、目についた本紫の髪紐を手に会計に行く

『檜佐…修兵さん！』

目で違うと言われ、呼び直した暁が自分の財布を出すのを止める

そのまま会計を済ませ、手を引いて甘味処へと向かう



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