操り人形
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豪奢な広間に色とりどりに着飾った女達や男達が、にこやかな笑顔を貼り付かせて談笑している
イヤと言う程、見慣れた嘘と欺瞞の世界に癖になったため息を溢す
「婚礼を明日に控えた娘がため息なんてつくものではありませんよ、姫」
隣に来たけばけばしく着飾った女性が、これ以上ないと言う程の笑顔で話しかけてくる
『ごめんなさい、お母様。でも、もう一人の主役の方がいらっしゃらないのですもの』
口から出るのは、この虚像の世界に合わせた嘘
いつから私は本当の言葉を言えなくなったのだろう
気がつけば私は、この人達の財を増やす操り人形となっていた
この結婚も数ある求婚者の中から、富に満ち溢れた者が選ばれた
「もう“外”を夢見るのは諦めなさい。旅ならいくらでも連れて行って下さるわ」
扇の裏で囁かれた母の言葉に姫の顔が一瞬だけ険しくなる
旅行なんて期間の決まった自由を望んでいる訳じゃない
「あぁほら、もう一人の主役のジョニー様がご到着のようよ」
入り口の方から若い女性達のさざめく声が聞こえてくる
スラッとした体躯を黒の夜会服に包んだ優男が、女性達に作り笑いを振り撒きながら進んでくる
「遅くなって申し訳ありません、急な仕事に手間取ってしまいまして」
母親と姫の手に口付けて挨拶をしたジョニーに、母親は蕩けるような笑顔で話している
よく回る口だこと
ジョニーの服から香る女物の香水に、今まで何処にいたのか明白だ
「おや、我が妻のご機嫌を損ねてしまったかな」
『…私はまだ、貴方の妻ではありませんわ』
「これは手厳しい。これでご機嫌を直してくれるかな」
取り出された大粒のサファイアの指輪に母親は目を見張り、姫はあからさまに眉をひそめた
「やはり、貴女によく似合う。一曲お相手願いますよ」
有無を言わさず、そのまま手を引かれてダンスの輪に加わる
周りから嘆息の声が聞こえて気分が悪くなる
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