大人のひみつ
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*小説版に登場したソル視点
待ち合わせ場所であるリウエイホテル前へ行くと、噴水の縁にグラディオラスが腰を下ろしていた。まだ朝の八時だというのに、レスタルムは既に暑い。
「おう、ソル。今日は頑張ろうな」
「うん、よろしく」
「俺たちでやれば昼前には終わるぜ。上手くいったら、昼飯おごってやるよ」
「お肉がいいな」
「気が合うな。俺もだ」
任務の幸は母の部隊に組み込まれることが常だが、時には他の人間と組むこともある。ひよっこのソルをカバーできるよう、グラディオラスのような実践経験の多い者をつけるのが慣いになっていた。
「今日は二人だけ?」
「いや、三人だ。悪ぃが迎えに行ってくれないか。中にいるはずだ」
頷いてソルはホテルの入口をくぐる。今は難民の避難所兼、作戦本部兼、幹部の居住区という何でもありの使われ方をしているが、元は高級ホテルだった。エレベーターが来るのを待ちながらロビーの装飾を眺める。
ソルが帝都で暮らしていた頃の家も、装飾が凝らしてありインテリアは上品なものでまとめられていた。ただニフルハイムのデザインは重厚なものが多く、こちらは開放的だ。
「いちばん上、と」
エレベーターで運ばれながら三人目の人物、◯◯◯のことを考える。アラネアと仲が良いのは知っているが、あまり関わったことがない。悪い人ではなさそうだが。
グラディオラスから教わった部屋番号を探し、木でできたドアをノックする。すぐに鍵が開いて男が顔を出した。
「ソルか。どうした?」
「あの、◯◯◯を迎えに来たんだけど」
「入れ」
コル将軍が大きくドアを開ける。中にはテーブルに頬杖をついて座る◯◯◯がいた。将軍は風呂上がりなのか、首にかけたタオルで髪を拭いている。黒いTシャツに毛先から小さな水の滴が散った。
「迎えだそうだぞ」
「ああーもうそんな時間かー」
ずるずると椅子へもたれる◯◯◯を逞しい腕が引っ張って立たせた。いつもきちんと制服を着ている二人のやけに砕けた姿に、どこか戸惑いを覚える。それに何で彼らは同じ部屋にいるんだろう?
「ほら、行ってこい」
「はーい」
◯◯◯が伸びをした。めくれたタンクトップの裾から白いお腹が覗いて、コル将軍が直してやっている。それから軽く唇が触れ合った。何となく秘密めいた大人の雰囲気を感じて、胸がどきどきする。
「外暑い?まあ暑くない日が無いよねえ」
◯◯◯がジャケットを取りながらぼやいた。
エレベーターで階下へ戻りながら、さっきの光景を思い返す。
あのキスは、例えば母が(産みの親の方の母が)別れ際にしてくれたキスとは違う、気がした。
コル将軍と◯◯◯も、アラネアと仲間たちの関係とは違う、気がした。
でも何がどう違うのか分からない。
そっと彼女を盗み見る。壁に寄りかかって眠そうにしている。
薄暗いホテルからよく晴れた外へ出ると、一瞬、目がくらんだ。
「おい◯◯◯、名残惜しいのは分かるけどよ、遅刻だぜ」
「そんな名残惜しいとかじゃないよ、ちょっと時計見るのを忘れてただけだよ」
グラディオラスがこちらを見て、悪戯っぽく笑った。
「時間を忘れるようなことしてたのか。ソルが迎えに行った時、二人は何してた?」
「うーんと、将軍が◯◯◯の服を直してあげてた。めくれてたから」
「おめー、ソルより子供じゃねえか……」
あとキスも、してた。それも言って理由を聞きたかったけれど、考えるとまた少しどきどきしてきて、黙っておくことにした。
街の外へ出ようと歩き出す。グラディオラスが◯◯◯の顔を覗きこんだ。
「ところでよ、昨日は何回やった?」
「ばっ……!」
◯◯◯の顔が真っ赤になる。
「そんなこと聞かないでよ!!」
「やったことは否定しないんだな。そうかそうか、良かったなあ」
「うるさいばか!」
怒りながら、◯◯◯は足早に道路を渡っていく。ソルはグラディオラスの背中をつついた。
「ねえ、やったって何を?」
榛色の瞳がソルを見下ろす。そうだな、と思案するように呟いた。
「もう少し大人になってからな」
大きな掌で頭を軽くぽんと叩かれた。子供扱いして、むっと口を尖らせると、更にぽんぽんとされる。そりゃあ彼からしたら自分なんて小娘だろうけど。
車の側で待っている彼女を見る。
大人になったら、◯◯◯みたいに秘密の何かを、私も持つようになるのかな。
終