i wanna hear you what you got to say
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唖然として◯◯◯たちが見つめる中、喉仏が上下に動いて琥珀色の液体がどんどん消えていく。音を立てて空のグラスをテーブルへ置き、振り向いたコルに両肩を掴まれた。
「愛している」
身体中の血が全て顔に集まった気がした。
「ええと、あああの、はい……わ、私もです……」
「動揺しすぎだろ!」
堪え切れなくなったグラディオラスが爆笑した。酔いに任せて言葉が欲しいとねだったけれど、こんなストレートに面と向かって言われるなんて聞いてない。
「将軍も、それ言うためだけに随分無理すんな」
「素面で言えるか」
低く吐き捨てる調子になったのは照れ隠しなのが丸分かりで、表情こそいつもの渋さだが耳が僅かに赤い。◯◯◯も心臓はどきどきしているし、ソファに突っ伏してしまうか床を転げ回ってしまいたいような衝動にかられるし、どうすれば良いのか分からない。とにかく緩んだ口元を隠そうと下を向いた。
普段言わない人の愛しているの破壊力は、凄まじい。
「いやあお腹いっぱいだな。ごっそさん」
「お前この状況で帰るのか」
「俺はそろそろお邪魔になりそうだしなぁ」
意味ありげにこちらを一瞥してグラディオラスが立ち上がる。見送りに出ようとするのを制され、悠々と大きな背中が廊下を去っていくのを眺めた。ドアが閉まる音がやけに響く。
「……◯◯◯」
「あああああの、片付け、私がやるので休んでて下さい。お水飲みますか?飲みましょう」
どうしても隣を向くことができず、視線を動かさないまま水を注いだグラスを手渡す。グラスが手から離れ、ごくごくと喉が鳴るのが聞こえる。それから深呼吸とソファが軋む音がした。そっと様子を窺うと、片手で額を覆ったコルがソファに沈み込んでいる。酔いが回ってきて辛いのだろう、そりゃそうだ。
「気持ち悪いですか」
「……いや」
空になった食器類を重ねてキッチンのシンクへ運ぶ。まだ少し残っているウイスキーはダイニングテーブルの上へ置いた。冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを引っ張り出し、リビングへ持って行く。
「◯◯◯」
「は、はい」
「……不安だったか?」
額を覆っている手に触れる。ぼうっと霞んだ春の空色をした目が◯◯◯を見た。ソファが二人分の重さでまた軋む。
「そういうんじゃないんです。ただ聞きたかった、それだけです」
この人の愛情を疑ってるわけじゃない。でも、この声で愛の言葉が聞けたらどんなにか良いだろうと思っていた。
「どうも気恥ずかしくてな……」
「私もですよ。名前だけって、何か、そわそわしちゃいます」
「たまに呼んでいるのにな」
「え?」
「無意識だったのか。まあそうだろうとは思っていた」
どこか楽しそうな声音に嫌な予感がする。
「全然、心当たりが無いです。嘘でしょ?」
「嘘ではない」
ぐっと腕を引かれて、コルの胸に倒れこむ。服の下に手が入ってきて脇腹を撫でられた。ぞくりと背筋が震える。
「実証してやろうか」
「え、実証って?え!?」
怠そうにしていた癖に、抱く力は強い。彼の表情を見てはっとした。
やばい。
この飢えた顔は。
この顔は、夜通し寝かせてもらえない時の顔だ……!
「あれはあれで可愛いものだ」
「あの、待っ、……ふっ…!」
コルの唇がきつく◯◯◯の首筋を吸った。熱い舌が首筋から鎖骨にかけて這っていき、掌がゆっくりと背中を撫でる。甘い痺れが全身に走った。
「っ……だめ、やっ……」
ブラのホックを外そうとしていた手がぴたりと止まった。腕が緩み、それから動く気配が無いのを、怪訝に思って下を見る。
「寝てる?」
◯◯◯を抱いたまま、すやすやという形容が相応しいほどよく眠っている。不死将軍も酔いには勝てないってことか。熱を持った身体を持て余し、不服なような安堵したような複雑な気持ちになる。
「……コル」
やっぱり照れくさい。コル、と口の中でその響きを転がす。いつかは、何の抵抗もなく呼べるようになるんだろうか。
頬を寄せ合って寝息に耳を澄ませる。この人にとって、あの言葉を口にするのは本当にハードルが高いことだったに違いない。
でも、言ってくれた。
「……◯◯◯」
「はい」
寝言だったらしい。微笑ましくて、頬にキスをするとざらりとした無精髭が唇に触れた。コルの手が動きしっかり抱きしめられる。
愛している。
手に入れたものを噛みしめて、私も、と呟いた。
終