i wanna hear you what you got to say
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
グラディオラスが手土産に持ってきたのは上等なウイスキーだった。
まずはストレートで、次からはロックで。繊細な香りを楽しみながら、気づけば結構な量を飲んでいた。
「あ、おつまみ無くなっちゃいましたね。何か作りましょうか」
「俺はもう十分だ。将軍は?」
「俺ももういい。それに◯◯◯、そろそろお前は包丁を持たない方が良さそうだ」
言われてみれば少しぼうっとしてきている。それでもまだグラスを手放すのは名残惜しく、ちびちびと酒を飲む。ソファの上で片膝を抱えた◯◯◯の頭を、隣のコルが乱暴に撫でた。それをラグの上にクッションをしいてくつろいだグラディオラスが、興味深そうに見ている。
「二人って喧嘩することあるのか?」
思い当たらないなとコルが答えた。
「たまに言い合いをするくらいじゃないか」
「不満も無いのか?」
「不満か……」
温かい肩に寄りかかっていると、思案しながら手慰みのように髪を撫でられる。麦芽とほのかなバニラの香りを舌に感じながら、撫でられる心地良さに目を閉じた。
「まあ、無いこともない」
「初耳なんですけど!?」
「言ってないからな」
突然平安を破られ、グラスを取り落としそうになって慌てて掴む。コルはいつもの平静な表情で、これだからポーカーフェイスは怖い。
「で、将軍は何がお気に召さないんだ?」
「そんな大したことじゃない」
「そこまで言ったなら教えてくれよ」
そうだそうだ。便乗して強く何度も頷くと、ちらりと青い目がこちらを向いて、また別の方を向いた。
「将軍はつけなくてもいいと思うんだが」
へ、と間の抜けた声が口から漏れた。コルは視線を逸らしたまま、グラスを口へ運んでいる。
「呼び名ってことか?お前、プライベートでも将軍て呼んでんのか?」
「うん。しっくりくるし、今さら変えられな……え、嫌だったんですか?」
「別に嫌ではないが。ただ敢えて挙げるとすれば、という程度だ」
それって嫌なんだよね!?心の中で叫ぶ。今まで全然、気がつかなかった。
「言ってくれれば変えましたよ」
「おう、じゃあ一回呼んでみせてくれよ」
何でグラディオラスに指図されなきゃならないのかよく分からないが、コルの方を向く。こめかみに指をついて待つ彼と目が合った。
「……コっ……、……!?」
あ、あれ?次の文字が出てこない。
グラディオラスがニヤニヤしてこちらを見ている。
「こっ、こ、こ」
「おめーはコカトリスか」
「違ぁう!」
どうしてだろう、単に名前を言うだけなのに、どうしてこんなに照れくさいんだろう。じっと待つコルの視線が刺さるようで、更に焦る。
「将軍て付けないだけだろが」
「そうだけどさ!心の準備が!」
「別に無理に呼ぶこともない。たかが名前だ」
見兼ねて口を挟んでくれたものの、どことなく残念そうだ。彼を失望させるのは本意ではない、◯◯◯は腹を括って息を吸った。
「…コル……」
括った割に出た声はへにゃへにゃしていたが、とりあえず呼べた。ああ、でも『将軍』がつかないと何だか据わりが悪い。慣れてないからだと分かっているけど。
「頑張ったな」
頭にぽんと手が乗せられた。たった二文字だがな、と揶揄されてむっと唇を突き出す。
「私だって不満、ありますよ」
「ほー、◯◯◯ちゃんは何がご不満なのかな」
さっきから良いようにグラディオラスに遊ばれている気がする。が、この際だから言ってやりたい。
「全然、好きって言ってくれないですよね!」
コルがチェイサーを吹いた。
「……何だと」
「頻繁に言う人じゃないだろうとは思ってましたよ。でも言わなすぎじゃないですか!?」
「それは、しかし大前提だろう」
弁解がましく早口になるコルに、グラディオラスのニヤニヤが更に深くなる。
「好きでなければ付き合ってない。分かりきったことを言葉にする必要があるか?」
「あるー!」
「こいつ酔っ払ってんな。面白ぇ」
「お前が変な話を振るから……」
「ちょっと聞いてますか?分かってても言ってもらいたいんですよ」
「だから当たり前だと」
「でも私が将軍の業務を代行したり、何か報告上げたりするとありがとうって言いますよね?側近だから当たり前のことしてるのにお礼言ってくれますよね?じゃあ好きなのも当たり前のことでも言って良いですよね?」
一気にまくしたてて、喉を潤すために水を飲む。グラディオラスが手を叩いた。
「◯◯◯が正しい」
気圧されて口を噤んでいたコルはしばらく黙っていたが、おもむろにウイスキーをどぼどぼとグラスに注ぎ始めた。
「ええええ」
「お、おい?」
そしてそれを一息に呷る。