あの日の約束
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「へえ、この犬、時空を越えられるんだ」
「アンブラな」
ノクティスがわしわしと黒犬の頭を撫でる。◯◯◯はアンブラの側に佇むゲンティアナへ視線を向けた。
「ねえ、じゃあ若い頃のコル将軍に会ってみたい」
二十四使の一人は微かに唇を綻ばせ、王子は呆れた顔をした。
「よりによってコルかよ」
「何よ、気にならないの?将軍の少年時代」
「野郎に会ってもなあ」
「神の力を私欲に使うのか」
グラディオラスはともかく、イグニスの言うことはもっともだ。うっと◯◯◯が答えに詰まると、意外なことにゲンティアナが助け舟を出してくれた。
「一度くらい構いませんよ」
「えー!神様って太っ腹!」
「プロンプト……でも本当に?ダメ元で言ってみただけだったんだけど」
ええ、と意味ありげな目をして静かに微笑む。あなたの気持ちはお見通しよ、と言われているような気がした。
「じゃあよろしくね、アンブラ。皆も行く?」
せっかくの機会なのに男四人は首を振る。膝をついてアンブラの頭を撫でると、わふっと元気よく一声吠えた。
「過去で怪我をすると、未来へ戻っても治癒しないので気をつけて。万が一、死亡すれば未来が変わってしまいます。くれぐれも危険なことはしないよう」
「了解。将軍の顔を見に行くだけだし、そう危ないことはないでしょ」
「いやー、分かんねーよ。だってコルだぜ?」
「どういうことよ」
アンブラが焦れたように身じろぎした。慌ててもふもふの身体に触れる。
「行ってらっしゃーい!」
手を振ってくれるプロンプトへ振り返す。吠え声に合わせて、身体が内側から捻れるような感じがした。
*
目の前に巨大なガルラの顔があった。
「えええ!?」
何が何やら、咄嗟に刀を抜いて一閃する。手負いだったのだろう、◯◯◯の一撃がとどめになって、獣はその場に倒れた。見回すと、辺りには何頭かガルラが横たわっている。
何でこんな所に……?
コルに会いたい、と言って過去へ飛ばしてもらったはずだ。こんな獣(の死体)の群れの中へ来るとは聞いてない。
それにガルラがいるということは、ここはインソムニアの外ということになる。混乱する◯◯◯の背後から不機嫌そうな声がした。
「ありがとうございます」
警護隊の制服を着た少年が立っていた。半袖から伸びる腕は逞しく日に灼けていて、同年代よりも大人びて見える。ふっくらした頬から、まだ髭も生えていない顎にかけての線が、わずかに子供らしさを残していた。
「手助けしてもらわなくても俺一人で十分でしたが」
傲慢な言い草に刺々しい口調。敬語だって、こちらが制服を着ているから使っているだろう様子がうかがえる。ただし声変わりはしていない。◯◯◯は瞬きをした。
「コル……?」
こちらを見やる目は『今』と変わらない空の青、しかし、冬空のような冷たさとその底にあるギラギラした光が違っていた。将軍、と付けそうになるところを辛うじて飲み込む。
「俺を知ってるんですか。失礼ですが、あなたは?どの部隊の方ですか」
「あーっ……と、名乗るほどの身分でもないよ。先輩とでも好きなように呼んで」
あとで隊員名簿を確認されたら厄介だ。コルは不審げな顔をしていたが、縦社会の警護隊で年上の人間を問い詰めることはできないだろう。先程はさらりと減らず口を叩いていたが。
「では、俺はこれで」
おざなりに会釈して、◯◯◯に背を向ける。慌てて後を追う。
「ちょ、ねえ、どこ行くの?」
「戻って鍛錬をします」
「今のが鍛錬みたいなものじゃない。少しは休みなよ」
「こんな簡単な討伐は準備運動と同じです。休んでいる暇はありません」
たったか歩いていく彼についていくと、また冷たい目で見られた。
「まだ何か?」
「私も戻るんです!今日はこのあとオフ?それとも当直?」
「オフです」
「ねえ、じゃあ私に付き合ってよ」
「あんた人の話聞いてないな」
苛立ったせいで口調が地に戻っている。大人に牙を剥く様がいかにも十代の少年らしく、むしろ可愛い。
「そんなに冷たくあしらわなくても良いじゃないー」
「何で俺が付き合わなきゃいけないんだよ。討伐だって邪魔するし」
「そ、それは悪かったよ。ちょっと通りがかったって言うかさあ……あ!なら良いこと思いついた!」
どうせロクなことじゃないだろうという顔でコルが足を止めた。やっと向き合ってくれた、と思って、そこで◯◯◯は気づく。
私よりちょっとだけ背が低い。
胸がきゅんとした。少年時代のコル将軍てば可愛い。なんなのもう。
これは何がなんでも今日は彼に相手をしてもらわなければ。でないと過去まで来た意味が無い。
「勝負しよ。私が勝ったら、今日は私に付き合ってもらう。君が勝ったら、鍛錬でも何でもご自由に」
「受けて立つ」
少年が喉の奥で唸った。闘志を剥き出しにした表情は、若獅子という表現がぴったりだ。