smile
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「あー、ちょっと休憩」
「動いている時間より休んでいる時間のが長いんじゃないか?」
「うっせ」
イグニスがため息をつく。ノクティスを中心に輪になって、訓練場の床へ座りこんだ。グラディオラスがタオルで汗を拭う。プロンプトもミネラルウォーターを喉へ流し込んだ。鍛錬で火照った身体に、冷たい水が心地良い。
「げ」
入口の方を向いて座っているノクティスが声を上げた。ちょうど男女が入ってきたところだ。長身で隙のない歩き方、コル将軍と、側近の彼女。
「◯◯◯と言ったか」
プロンプトが思い出せなかった名前をあっさりイグニスが口にした。グラディオラスが口笛を吹く。
「いい尻してんな」
「おい、セクハラだぞ」
外野に見向きもせず二人は向き合って刀を抜く。模造刀にも関わらず、ぴりりと空気が張り詰めてプロンプトの肌を刺した。先に仕掛けたのは◯◯◯、将軍がそれをいなして反撃に転じ、すぐに激しい打ち合いになる。
「へえ、なかなかやるじゃねえか」
「確か、彼女は王の剣の中でも古参だったはずだ。相当な実力者だな」
グラディオラスの目つきが、好色なものから敵を見定めるものに変わっている。
「あの将軍に食らいついてくのは凄えぜ……今度、手合わせを頼んでみるかな」
「場慣れしているな。だが、崩されると早いか」
イグニスの分析通り、◯◯◯の防御を強引にコル将軍が崩し、刀が腕を打った。何か一言、将軍が言う。取り落とした刀を拾った◯◯◯が頷いて、また構える。すぐに打ち合いになる。
「……俺らしごく時より容赦ねえな」
ノクティスがぼそりと呟くのに、頷いて同意を示す。上司と部下、男と女という違いは、二人が動きを鈍らせる要因にはならないらしい。どちらも目が本気だ。
「将軍、厳しいと思ってたけど、俺達にはまだ甘くしてくれてたんだね」
「力不足ってこともあるぜ。俺らはまだまだ、将軍を本気にはさせられないってことだ」
◯◯◯が姿勢を低くして将軍の懐へ飛び込んだ。受ける方は低い位置から斬り上げてくる剣をすんででかわし、首を狙って刀を振る。◯◯◯はそれを峰で受けて防ぐ。
「あれほどになると、将軍も手加減をする余裕が無くなるのだろうな」
それでも、やはり不死将軍から一本取るには至らず、何度目かの敗北を経てとうとう彼女は床から起き上がれなくなった。そのままの姿勢で、よほど悔しいのかありったけの罵倒の言葉を並べている……あんなに罵倒にバリエーションがあることを、プロンプトは初めて知った。
息を整えたコル将軍が、渋く笑って◯◯◯に肩を貸した。
「今日はいけると思ったんですけどねー」
「まだまだだな。だが、最後まで粘るその姿勢は嫌いじゃない」
「素直に好きって言ってくれていいんですよ」
馬鹿、と空いた方の手で軽く◯◯◯の額を叩いて、二人は連れ立って訓練場を出ていった。プロンプト達は黙ってそれを見送る。
あれだけ本気でやり合う二人が恋人同士だなんて、思ってもみなかった。
だからその台詞も軽口を叩いているだけだと思っていたのだ。
◯◯◯が楽しげに話しているのを背中で聞きながら、プロンプトはカメラを点検する。久しぶりにレスタルムへ戻ってきたコル将軍は、いつもと同じ冷静な態度で彼女の話を聞いているようだ。
「帰りがけにね、ヒナドリスを捕まえようとしたら、茂みのところが斜面になってるのに気づかなかったんです。危うく鳥を持ったまま湖に落ちるとこでした」
「お前は馬鹿だなぁ」
あれ、プロンプトは手を止めた。
何だろう、俺の気のせい?
今の将軍の口調、可愛いなあにしか聞こえなかったんだけど。ちょっとデレませんでした?
「だって将軍が帰ってくるって聞いたから。一緒にヒナドリス食べたかったんです」
「そうか。夕食を楽しみにしていよう」
ふ、と将軍が笑った気配がした。
そう言えば鍛錬の時も、最後に少しだけ笑みを浮かべていた。◯◯◯といる時は、彼もたびたび笑うのだということに今更ながら気づく。
なんだ、とプロンプトはカメラの電源を入れた。別に二人は隠していたわけじゃないのだ。ただ見ているこちら側が、そんなことはあり得ないと思い込んでいただけで。
後ろを振り向く。◯◯◯は幸せそうな顔をしていて、それを見るコル将軍の眼差しは優しい。二人の間に流れる空気は、しっかり恋人同士のそれだ。
「恋してる女の子は可愛いよね」
一人ごちてカメラを構える。ファインダー越しの◯◯◯の笑顔は、とても眩しい。
終