be my,be my,be my rock&roll queen
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*All I ask of youの続編
城内の職員専用カフェテリアは、良心的な値段で美味いコーヒーを出してくれる。一口飲んでコルは目頭を揉んだ。
「そういえばお前、聞いた?」
後ろの席に聞き覚えのある声の誰かが座った。咄嗟に名前は出てこないが、警護隊の隊員だ。何を?と聞き返す声にも馴染みがある。隊員同士で休憩に来たらしい。
「◯◯◯がさ」
飛び出した名前に意識が向いた。機械的にカップを口へ運ぶ。コーヒーの香りが遠のいた。
「スピード違反で逃げる車に、シフトで飛び移って捕まえたらしいぜ」
「ロックすぎんだろそのエピソード」
何をやってるんだ。そんな報告は受けてない。あいつ、また報告書を後回しにしてるな。
「よく怖くないよな。やっぱ元・王の剣てのは違うね」
「やべーな。てかさ、◯◯◯って彼氏いんのかな」
「え、お前狙ってんの?ああいうのが好み?」
振り向きたくなるのを堪える。確かに聞いたことのある声なのに誰なのか思い出せず、ひどくもどかしい。
「いや狙ってるとかじゃないけど、あんまそういう話聞かないな、とか」
ごにょごにょと言い募る方を、もう一人が鼻で笑った。
「やめとけよ、あいつ理想高いぞ。自分より強くないと嫌だってさ」
「それ隊に何人いるんだよ!駄目だわ、俺一回も勝てたことないわ」
それは初耳だ。普通、理想って外見とか性格じゃないのか?そっちは何でも良いのか?と言うかその条件だと、俺はどうなんだ。いや、当てはまったら何だと言うのか。
「俺も一対一では無理だな。二人がかりでもありなのかな。協力しようか?」
「さすがに格好悪いから、いいよ。じゃなくて狙ってないんだって!」
「はいはい」
コーヒーを飲み干して立ち上がる。休憩に来たはずなのに、胸の奥がちりちり焦げるような感じがして落ち着かない。
『将軍が良いです』
あの夜の言葉の意味を、コルは聞けずにいる。
*
「もしもーし」
もう何年も愛用しているソファへ横になって、クロウは◯◯◯からの電話をとった。しかし休日前ののんびりした気分は、固い口調によってぶち壊される。
「クロウどうしよう……私やっちゃったよ」
「え、殺っちゃった」
「うん……つい、勢いで」
よく聞く話ではあるが、まさか自分の身近で起きるとは思っていなかった。勢いって原因は何だ。痴情のもつれか、金銭トラブルか?どうしてそんなに追い詰められる前に、相談してくれなかったんだろう。
「それで、その……誰、を?」
「……コル将軍」
クロウは眉をひそめた。
「コル将軍なら今日見かけたわよ。ぴんぴんしてたけど」
「何言ってるの?ぴんぴんしてるのは私も知ってるよ」
「え?」
会話がどうも噛み合わない。電話のこちらとあちらで、混乱した空気が流れる。
*
眠れない◯◯◯にキスをせがまれ、勿論それだけで終わるわけもなく、彼女を抱いた。
それでどうなったのかよく分からない。
コル自身はそういうことは恋人同士がするものだと思っているが、世間には違う価値観を持っている人間もいる。例えばグラディオラス。彼は身体だけの関係が多い。
『将軍が良いです』
初めは告白されたのかと思った。しかし時間が経ってよく考えてみると、明確に好意を表されたわけではないとも思う。
もしかしたら(そういうこともするのであれば)あなたが良いです、という意味だったのかもしれない。実際、あの一夜のあとも互いの態度は変わらない。
『一人で寝つけない夜など無いと思え』
コルの言葉も、辛い時はいつでも頼れよ、くらいの意味で捉えられているのかもしれない。時間が経ってしまった今、改めて聞くのも気まずい。それに、それならそれで構わない。一時、羽を休める場所として使われるのでも。
本当か?別の声がする。
ずきりと胸が疼くのを、気づかない振りをする。
*
◯◯◯から詳しく話を聞いて、クロウは爆笑した。
「何だそういうこと!あーびっくりした」
「私が殺すわけないでしょ!人を何だと思ってんの!」
「ごめんごめん。へー、あの不死将軍を落としたんだ。やるじゃない」
恋愛方面へ話を持っていくのも難しそうなコル将軍を、よくベッドへ引きずりこめたものだ。ところが、うーん、と彼女の返事は煮え切らない。
「でも付き合うことになったのかよく分かんなくてさ」
「聞けば?私のこと好き?って。あはは!」
「そうやって面白がって!」
「だって、想像したら何か、笑える」
含み笑いをするとクロウの馬鹿、と拗ねた声が返ってきた。
「でも、戸惑ってるのはむしろ将軍の方だと思うわよ。あんたから誘って、その後は前と同じ態度って、向こうの方がどうすれば良いのか悩んでるかもよ」
「やー何か、どんな顔したらいいのか分かんなくて。完全に勢いだったし。その日の朝も何もなかったみたいに起きて、車で帰ってきて、それっきりだよ」
「次の約束は?してないの?」
「してない……」