diamonds
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予想以上だった。
予想以上に怖かった。
「ひいいいもうやだあああ!」
暗闇から本物かと思うほど精巧なシガイが現れる。そのたびに◯◯◯は悲鳴をあげ、コルにしがみつき、またお化け役の方も反応があると面白いのだろう、敢えてこちらを狙って驚かしてくるように見えた。
「もう嫌です、歩きたくないです」
「歩かないと終わらないぞ」
ほら、と手を引かれて少しずつ先へ進む。横からふっと新手が現れて、またコルの背に隠れた。
「ぎゃー!来ないでえええ!!」
ばくばくと暴れる心臓を宥めながらコルについていく。次はもっと怖い目に遭うんじゃないか、という恐怖感が嫌だ。なんでこんなものが人気なのか、さっぱり分からない。
「うー、将軍、よく落ち着いてられますね」
「お前が先に驚くから、俺は特に驚くことがない」
本当に誤算だった。まさか武器を持っていないことが、こんなに不安なんて。
幼少期に鉄巨人に襲われた経験から、◯◯◯は巨大なシガイが怖い。最近はだいぶ克服できていたと思っていたのに、丸腰状態だと、大きさによらず怖くて堪らない。
「規模から考えると、もうすぐ出口のはずだ」
「うう、早く終わって……」
コルが古い扉を開ける。次の部屋は広く、天井も高く作ってあるようだった。弱い灯りが暗闇に吸い込まれていく。
そしてそこに、それがいた。
「ひっ」
巨大な身体とそれに不似合いの小さな頭部、禍々しく光る大剣。
鉄巨人。
「◯◯◯」
闇雲に逃げ出そうとするのをコルに腕を掴まれる。◯◯◯の中で恐怖が膨れ上がって、作り物であることもここがどこかも分からなくなる。
「嫌、離して、逃げなきゃ」
「◯◯◯、落ち着け」
武器がない、戦えない。戦えないなら逃げるしかない。
「◯◯◯」
殺されてしまう、逃げなければ、逃げなければいけないのに、脚が動かない。
武器が。
「やだぁ、嫌、離して……!」
「◯◯◯!」
誰かに強く抱きしめられて、唇に柔らかいものが触れた。荒くなった息をコルが飲み込む。恐慌をきたした◯◯◯を守るように腕の力が強くなる。
「……落ち着いたか?」
黙って頷くと彼もほっとしたように腕を緩めた。驚きに恐怖が掻き消されて、初めて冷静になれた気がした。
「もう大丈夫です」
「そうか」
ずっと成り行きを見守っていた鉄巨人が口をきいた。
「あのー、先に進んでもらえませんか」
外に出ると、心配そうな顔つきのイリスとノクティスが立っていた。
「ごめんね、苦手だって知らなかった」
「◯◯◯のモウヤダが千回くらい聞こえたわ。無理すんなよ」
「う、ご心配をおかけしました」
詫びるイリスへ近づいて、そっと首尾を訊ねる。
「少しはノクトと良い感じになれた?」
「うーん、◯◯◯の声が気になってあんまり……」
「え、私それ怖い思いし損じゃん……」
疲労がどっと押し寄せてきたので、少し座って休ませてもらうことにした。ノクティスとイリスはそばにあるゲームコーナーで射的に挑戦している。
「付き合いが良いな、お前は」
コルが隣に座った。買ってきたコーヒーを手渡してくれる。年上二人は休憩だ。
「イリスの頼みを断れない理由があるのか?」
「断れないって言うか」
◯◯◯の視線の先で、ノクティスが銃を構える。それを彼女がキラキラした表情で見ている。
「あの子、まだ十五歳なのに、割り切ってて。でもノクトを好きな気持ちも大事にしてて。何か、いじらしいじゃないですか」
彼らが結ばれることは決してない。ルナフレーナという許嫁がいるノクティス、名家の子女であるイリス。でも恋が成就しなくても、楽しかった思い出は残る。それが彼女の人生の中の、宝箱で光る宝石みたいなものになったら良いと思ったのだ。
「それに、遊園地なんて私達だけじゃまず来ないでしょ?」
「確かにな」
ノクトの撃った弾が的に当たる。二人が歓声を上げる。賞品はモーグリのぬいぐるみ。渡されたイリスが、ぎゅっとぬいぐるみを抱きしめる。とても嬉しそうに笑っている。
「来た甲斐があったようだな」
「ふふ、そうですね」
彼らがこちらへ戻ってくる。そろそろ帰る時間だ。夕日が、作り物の城を照らしている。
終