diamonds
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「今なんて?」
だから、とイリスはランチプレートのパスタをフォークに勢いよく巻きつけた。食べっぷりが清々しい。
「ノクトと遊園地に行く約束をしたの」
「うんうん、良かったね。じゃなくてその次」
「◯◯◯も一緒に行こうよ。彼も連れて」
「何で?」
「だって付き合ってる訳じゃないのに、二人っきりはちょっとハードル高いもの。◯◯◯が彼と一緒に来てくれたら、ダブルデートみたいになるでしょ?」
◯◯◯は周りを見回す。昼のピーク時を過ぎた職員用のカフェテリアは客もまばらだ。見知った顔もいない。
「あの、ね。今まで言ってなかったんだけどね」
「なになに」
ただならぬ雰囲気に、イリスが真剣な表情を浮かべてテーブルに乗り出してきた。
「コル将軍なの」
え、とそのまま固まる。
「コル将軍て、不死将軍の?」
「う、うん。だから」
「付き合ってるのー!?」
店中に声が響き、何人かがこちらを向いた。落ち着いて、と肩を叩くとあたふたと椅子へ座り直し、アイスティーを飲んで息をつく。
「あーびっくりした。でも二人、仲良いもんね」
そっかーコル将軍かーと呟いている。父のクレイラスとコルは親しいから、彼女も幼少期から世話になっているらしい。そういう人の男性としての面を見るのは複雑ではないだろうか。
咄嗟に嫌悪の表情を見せられなかったことに、密かに安堵する。
「だから、一緒に行くのはプロンプトの方が良いんじゃないかな。私も話しやすいし」
彼なら察しよく、ノクティスとイリスを二人きりにさせてあげることもできるだろう。プロンプトと二人なら、◯◯◯も話題に困らない。
だがイリスはきっぱり首を振った。
「駄目よ」
「駄目なの!?」
「たとえ友達だって、◯◯◯がデートスポットに男の人と行ったら将軍は良い気持ちしないと思うの。駄目」
「いや、でもさあ……その、イリスはコル将軍がデートしてるところ見るのは平気……なの?」
「平気ってどういうことかよく分からないけど、見慣れた二人だから新鮮味はないかな」
「あ、そう……」
歳の差とか何とかとか身構えていたのが、あっさりと言い放たれてこちらが拍子抜けしてしまう。
それにしても、大人の男性を遊園地に連れ出すのも過酷なのでは……とか、ノクトは気詰まりなんじゃ……とも思うが、イリスのデートに協力したい気持ちもある。そして彼女は遊園地に行きたいのだ。
やれやれと◯◯◯は息を吐いた。
「分かった。聞いてみるよ」
*
車を降りると、パーキングまで明るいメロディが微かに流れてくるのが聞こえた。観覧車と作り物の城がある方へ歩みを進めながら、◯◯◯は傍らの人物を見上げた。
「……将軍、ミスマッチですね」
「それは来る前から分かっていたことだろう」
コルはいつもの真面目な表情で、とてもこれから遊びに行く風には見えない。どちらかと言うと戦場へ向かう方が合っている。
「まあ私も、どんなノリで行けばいいのか分からないんですけど」
「いつも通りでいいと思うが」
あなたはいつも通りすぎますと言いそうになって、咳払いで誤魔化した。本当に大丈夫だろうか。強行したイリスは随分と勇者だ。
「◯◯◯ー!」
エントランスの前でイリスが手を振っている。いつもより服に気合いが入っている。後ろにいるノクティスはまだ眠そうな顔をしていたが、近づいてくる人物を見て一気に目が覚めたようだ。
「何で将軍がここに?」
「言ったでしょ。◯◯◯の彼も来るって」
ノクティスは絶句している。まあそうだろう。苦笑いが漏れた。
「よろしくね、ノクト」
言葉もなく頷く彼を、イリスがぐいぐい引っ張って中へ入っていった。
入ってしまえば、案外良かった。
イリスのように全力ではしゃぐことは出来ないが、手軽に非日常感が味わえて、これはこれで楽しい。
「ねえねえ、次はここに入ろう!」
「あ?お化け屋敷?」
イリスの先導で連れてこられたそこは、外観に黒を多用した建物。歩いて回るタイプのもので、彼女の通う学校では怖いことで人気らしい。確かに賑わっている。
「すごくリアルなシガイが出てくるんだって!」
シガイか、とコルがちらりと◯◯◯を見た。
「大丈夫か?」
「大丈夫だと思います……多分」
とは言ってもあまり気は進まない。できれば他のアトラクションの方が嬉しいが。
「ドキドキするね!ノクト、私を置いてかないでね」
「お前こそ一人で逃げんなよ」
既に並んでテンションの上がっている二人に、嫌だとは言いづらい。
「襲われるわけじゃないですし。入りましょう」
改めて決めるまでもなく、二組に分かれて進むことになる。出発!と気合いを入れて中へ入る先発組を見送って、◯◯◯はそっとコルの服の裾を掴んだ。
「◯◯◯?」
「はぐれないようにするためです」
怖いわけじゃないです。目を逸らして主張すると、掴んだ指が大きな掌に包み込まれた。しっかり手を繋がれる。
「この方がはぐれないだろう」
「……はい」
行くぞ、と手を引かれて、暗闇の中へ一歩踏み出した。