lounge act
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「思っていたより遅くなったな。泊まっていくか」
鬱憤を晴らすようにクアールを狩り、車へ戻る頃には夕闇が迫ってきていた。彼と泊まるなら◯◯◯に何ら異存はない。
入ったモーテルは簡素な作りだが小綺麗で、ありがたいことに熱いシャワーが出た。場所によってはインフラの維持が難しくなってきているから、これは嬉しい。
「モニカに連絡しておきましょうか」
「そうだな」
言うが早いかコルは電話をかけている。◯◯◯は脱いだジャケットを二人分、クローゼットへ吊るす。
「レイチェルか。モニカは?」
聞きたくない名前に手が止まった。
「いや、いい。一泊してレスタルムへ戻ると伝えておいてくれ。怪我?そういうわけではない。では、頼む」
用件だけを言ってコルは電話を切る。
「……レイチェルが出たんですか」
「ああ。モニカが席を外しているとかで」
息が詰まった。
どうしていつも、彼女の存在がつきまとうんだろう。
離れても、遠ざけても、彼女は現れる。◯◯◯とコルの間に彼女が立っている。◯◯◯の前を塞ぐようにして、彼へ笑顔を向ける。
「……嫌だ」
低く呟くと怪訝そうにコルが振り返った。
「私、」
言うな、と頭の片隅で声がする。でも一度声に出したら、もう止まらなかった。
「仕事だからと思って我慢してたけど、あなたがあの子と任務に就くのも、話してるのを見るのも嫌です。他の誰でもこんな風に思わないけど、あの子だけは嫌。私だって」
こんな状況だから、わがままなんて言ってる場合じゃないから、我慢しようと思っていた、のに。
「私だって妬くことはあるんです」
自分の強い口調にはっとして、見ると彼は固まっている。一気に後悔の念が襲ってきて目を合わせられなくなった。
「あの、お風呂入ってきます」
名前を呼ばれた気がするが、身を翻してバスルームへ駆け込んだ。
シャワーからお湯が勢いよく出てきて、全身がじんわりと温まる。でも心は温みに緩まないまま、今も後悔の嵐が吹き荒れていた。
確かにグラディオラスは素直になった方がいいと言ったが、言い方というものがあった。もっと可愛く淋しいと伝えれば良かったのに、あれではただ不満をぶつけただけだ。
そしてあの、表情。
本当に驚いていた。彼は嫉妬されているとは微塵も思っていなかったのだろうし、レイチェルのことも何とも思っていないだろう。そもそも彼女だってはっきりとコルへの好意を口にしていたわけではない。こちらの誤解だとしたら、完全に◯◯◯の独り相撲だ。
それでも。
それでも嫌だった。間に入られるたびに、自分の場所を取られていく気がした。側近としても恋人としても成り代わられる感じがした。レイチェルがコルの腕をとる。◯◯◯は取り残される。
そうやってぐるぐる考えていたから、扉が開いたことに気づかなかった。
「……◯◯◯」
低い声と一緒に、後ろから腕が回される。そっと抱きしめられる。
「すまない。気付かずに辛い思いをさせた」
背中にコルの体温を感じて目を閉じた。肩にキスが落とされる。そっと息を吐く。
「俺にはお前だけだと、どうしたら伝わる……?」
彼の掌が◯◯◯の身体を撫でる。触られたところが熱を持って、いま一番欲しかった言葉を貰ったはずなのに、どんどん切なくなる。シャワーのコックをひねってお湯を止めた。振り返って、腕の中で彼と向き合う。青い目を覗き込む。今、◯◯◯しか見ていない目の奥に、欲望の火が見える。たぶん自分の目にも。
「言葉だけじゃ足りないです」
飢えを満たすように唇が重なる。頭蓋に湿った音が響く。歯がぶつかるくらい激しいキスの合間に、この瞬間を欲しかったんだと、ようやく分かった。
終