ただ一つの光が
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伸びてきた触手を刀で払い、距離をとろうとしたのをこちらから追って斬りかかる。手応えはあったが致命傷にはならなかったようで、再びリッチは触手を伸ばしてきた。
「あー鬱陶しい!」
二本の触手をまとめて斬り落とし、旋回した勢いを使って深く刀を突き入れた。やっと一体倒して、◯◯◯は次のシガイへ走る。コルが相手をしている二体の内の片方を背後から襲った。
「助かる」
「こいつら強くなってますね」
「そのようだ……厳しいな」
人類はじわじわと追い詰められてきている。世界が闇に閉ざされてから、シガイは力を増した。残っている隊員の数と敵を見比べて、嫌な予感が頭をよぎった。仲間がまた一人倒れる……あれはもう助からない。
「くそっ……!」
一体斬って、続けて一体。倒してもまだ敵は現れる。全滅の文字が浮かぶ。近くにいた者が力尽きたのか膝をついた。ポーションを放る。
「動けるなら標まで自力で逃げて」
「◯◯◯さん達は……?」
「こいつら放っとくわけにいかないでしょ」
何とか立ち上がって彼は標の方向へ走り出す。追おうとするシガイをこちらへ引きつけ、カウンターを狙って斬撃を叩き込んだ。もう満足に動けるのは自分とコルの二人だけ、背中合わせに刀を構えてリッチを牽制する。
「お前も逃げろ」
「無茶言わないで下さい。ルシス三強のあなたでも一人でこの数は無理ですよ」
「二人揃って死ぬことはないと言ってるんだ」
「だったら私が食い止めるんで将軍が逃げて下さい」
次々と襲ってくるシガイと切り結びながら言い返す。背を向けあっているので声が通らず、互いに声が大きくなった。
「こういう時はより若い者が生き延びるものだ」
「違います、より価値のある者が生きるべきです。あなたは皆の希望です」
国家は瓦解し、王は消え、皇帝は死んだ。有力な指導者層がいなくなった今、人々をまとめ上げられるのはコル将軍をおいて他にいない。彼が死ねば人類の滅亡は速くなるだろう。
「逃げろ、これは命令だ」
「その命令には従えません」
「では頼む」
「無理です」
「聞き分けのない……!」
急に後ろから腕を掴まれた。強引に振り向かされてたたらを踏む。怒りに燃える青い目が近くにあった。
「俺はもう二度と、誰かを守れずに死なせるのはごめんなんだ」
「あなたがいなかったら、私に朝は来ませんよ」
面喰らった表情でコルが黙った。
暗い暗い世界で、先の見えない世界で、今も◯◯◯が立って闘っていられるのは、彼がそばにいてくれるからだ。彼は闇の中の一筋の光。闘う理由で、生きる理由。
だからたとえ王が戻り世界に朝が訪れても、コルがいなければ◯◯◯はずっと夜の中にいるだろう。
「何でそんなことも分かんないんですか」
コルが構えて刀を抜いた。◯◯◯も同様に柄へ手をかける。互いの背後から襲ってきたリッチを斬り捨てた。
「くたばるなよ」
「あなたこそ」
そろそろ息が上がってきたし腕も重い。それでも笑って、燐光に照らされてぼんやりと浮かぶシガイへ切っ先を向けた。