I know that you don't know
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「◯◯◯って彼氏いるの?」
いきなりイリスから話を振られて◯◯◯は目を瞬いた。
「ああ、まあ」
いるけど、と答えると今度は同僚が身を乗り出してきた。
「彼氏は、いつもあんたがコル将軍と仲良くしてて妬かないわけ?」
「仲良く?え、いや……」
「寛容な彼ね。私なんてこないださ、ちょっと仕事のことで年下男子とメールしただけなのにさー」
「ねえその年下男子って誰よ。いたっけ誰かカッコいい子」
そこから彼女の「嫉妬深い彼氏の愚痴」が始まり、更にそこに登場した「年下男子」にもう一人の同僚が食いつき、話はどんどん逸れていく。女四人も集まれば、話題はあちこちへ飛び、とにかく忙しくかしましい。洒落たオープンテラスのカフェも、一気に夜の居酒屋のようになる。
妬くも何も、本人だし。
言いかけた言葉を飲み込んで、クリームたっぷりのケーキを口に入れた。
「そんなことがあったんですよ」
あ、ケーキは、クリームがふわふわで美味しかったです。次の休みに一緒に行きましょうよ。すぐに食べ物の方へ話がいく彼女に苦笑して、コルは後ろから◯◯◯を抱き寄せた。ベッドのヘッドボードに背を預ける。ことんと胸に頭が当たって、Tシャツの布越しに体温が伝わってくる。
「隠しているつもりはないんだが」
「ね、不思議と気付かれないですよね。付き合う前の方が噂になったり」
そう言っておかしそうに笑う。しなやかな指がコルの指に重なって、絡み合う。髪に口づけるとシャンプーの香りがした。
「もしかしたら、真面目なコル将軍が女の人と付き合ってるイメージが湧かないのかも。私が王の剣だった頃も、浮いた噂なんて一つも流れてきませんでしたよ」
「真面目とそれは関係ないだろう」
「うーん、そうですけど。仕事第一って言うか、恋愛はあんまり関心が無さそうって言うか。だって合コンとか行ったことあります?」
「……無いな」
ざっと過去のことを思い返してみても、そういった出会いの場へ行った記憶がない。付き合った女性も何人かいたが、仕事を優先しがちですれ違いが多く振られることが多かった。◯◯◯と上手くいっているのは、同じ職種で互いに理解があるからだと思う。男女問わず、警護隊はパートナーに振られることが多い。
「私はこないだ数合わせに呼ばれましたよ」
「何だと」
「当直って言って断りましたけど。心配ですか?」
後ろからでも彼女が人の悪い笑みを浮かべているのが分かる。一瞬でも動揺させられたのが悔しく、脇腹をくすぐって仕返しをする。嬌声を上げて◯◯◯は身を捩らせた。
「特に心配はしてないな」
「そういう事にしておいてあげます、ふふ」
束の間、満ち足りたような沈黙が落ちた。彼女の体温が温かく、段々眠くなってくる。◯◯◯がまた指を絡めてきて、そっとコルの指を撫でた。
「実際は」
「うん?」
「付き合ってみると、将軍だって普通の男の人なのにな」
あ、でも、と言葉が続く。
「意外とえろいんだなって思いました」
「!?」
「それから、意外とキス魔だったし、意外と料理上手だったし、まあ優しいのは知ってましたけど、あと」
「もういい、言わなくていい」
いきなりの暴露に眠気が吹っ飛んだ。えろいだのキス魔だの、そんな言われ方をするほどのことはしていない、はずだ。大体、そういうことは自分の胸の中に納めておいてほしい。
「そこまでうろたえなくても……うぐッ」
後ろを向こうとする気配がして、腕にぐっと力を入れてロックする。振り解こうともがく勢いを使ってシーツの上に転がし、手首を掴んで唇を塞ぐ。コルの身体の下から◯◯◯がじとっとした目で睨んできた。
「ほらキス魔」
「これ以上、喋らせておくと何を言いだすか分からないからな」
嫌ならやめる、言いながらシャツの下へ手を這わせると、甘い声が出て身体が震えた。白い頬から首へかけてわずかに赤く染まる。
「……嫌じゃないです」
そう答えた唇が薄く開いて、誘われるようにまたキスをした。柔らかいそれを舌でなぞると、◯◯◯の息が熱を帯びる。熱に煽られるように更に深く口づける。
確かにキス魔と呼ばれても仕方ないかもしれない。心の中で苦笑しながら、コルはシャツの裾をまくった。
終