Bangarang
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インソムニア郊外、二十キロの地点に突如、帝国の揚陸艇が出現。
王の剣が遠征中のため、報告を受けた◯◯◯たち警護隊は郊外へ向かっていた。
「一個小隊って少ないですよね」
「他にも潜んでいるのか探らせている。もしや王の剣が向かった方は陽動か」
「昇進でもして浮かれた奴が調子づいて、一人で突っ込んできたんだったりして」
◯◯◯が半ば冗談で言うと、コルは微かに笑った。
「そんな馬鹿なら話は早いんだが。お前、楽しそうだな」
ぎくりとして◯◯◯は視線を逸らした。
「いや、まあ久しぶりの実戦なので……事務仕事から解放されてラッキーとか思ってないです、よ」
「本音が漏れてるぞ」
装甲車が止まる。戦闘の前の高揚感に、思わず口角が上がった。
「まあ気持ちは分からんでもない。ひと暴れして思い知らせてやろう」
立ち上がる彼もまた不敵に笑っていた。
「自分がどれだけ愚かな真似をしたのかを」
降りた所は荒れ地で、大小の岩が転がるだけの見晴らしの良い場所だった。◯◯◯たちの姿も丸見えだが、あちらも隠れる余地がない。本当に少数で攻めてきたようだ。
「て言うか、魔法障壁があるって知らないんですかね」
「さあな。何にせよ、それに頼り切るわけにはいかん。各隊、帝国軍を囲むように展開しろ。討ち漏らすなよ」
係留した揚陸艇からばらばらと魔導兵が降りてくる。散らばってしまうと人数の少ないこちらが不利だ。刀を抜いて突っ込む。直に乱戦になる。
「鎧は硬いよ!防具の隙間と関節狙って!」
斬撃が通らず反動でよろめく新人を叱咤し、魔導兵が水平に斧で薙ぐのを体勢を低くして躱す。下から斜めに斬り上げて首を狙い、頭部を失って棒立ちになる胴体を蹴って他の魔導兵に当てた。何体か巻き込んで、団子になってよろけた内の一体を、コルの刀が突き通す。
「俺に振るな」
「偶然ですって」
次々と魔導兵を斬っていきながら、ちらりと揚陸艇の様子を窺う。戦うのは作り物の魔導兵でも、操縦者や指揮官は人間だ。頭を潰せばこの部隊をここで殲滅することができるのだが。
沈黙を守っていたもう一隻の扉が静かに開いた。そこにいたものに◯◯◯ははっとする。
「将軍!魔導アーマーです!」
戦場で何度も見た。長い腕、片側についたチェーンソーと、禍々しい射出口。キュイラス。魔導アーマーがいるとなると、一個小隊でも話が変わる。警護隊には戦略兵器がない。
耳元で通信機がノイズを立てた。
「電撃に気をつけろ。腕に自信の無い者は周囲の魔導兵を片付ける方へ。◯◯◯、来い」
「キュイラスの方へ向かいます」
通信を切る。近くにいた仲間が心得て、槍で大きく敵を薙いだ。魔導アーマーまでの道が拓ける。
「あっちはよろしく」
「任せといて」
駆けながら狙いを定め、一気にキュイラスまでシフトで距離を詰める。ぐわん、というような奇妙に身体の平衡が狂う感じがして、奥歯を噛んで踏ん張る。シフトした先は片腕のチェーンソー付近、刀の鯉口を切った時、若い男の声がした。
「我が名はニフルハイム帝国軍准将、ロキ・トルムト!ルシスの愚民共よ、このキュイラスの餌食となるが良い!」
我が名って何だよ!!
大時代な名乗りに思わずツッコミを入れ、チェーンソーとシャフトの接合部へ刀を振り下ろす。意外と軽い手応えでチェーンソーが切り離された。
「◯◯◯!」
コルの声に顔を上げると片腕の銃口がこちらを狙っていた。地面を転がって
ミサイルを避ける。コルの刀がキュイラスの脚を斬り、がくんと機体がバランスを崩す。コクピットの中にいるロキが顔を歪めるのが見えた。しかし彼もまだ諦めてはいない。電流を纏った槍が地面に突き立てられる。咄嗟に避けるが、びりりと嫌な痺れが身体に走った。
「痛っ……!」
「大丈夫か」
「ええ、まあ」
再びキュイラスの機銃が火を吹いた。二手に分かれ、機体の横へ回り込む。加勢してきた隊員と交互に攻め、魔導兵と分断する。コルが地を蹴り獅子吼を放った。轟音が響き、動力源が破壊されたのか魔導アーマーの駆動音が止まった。
成り行きを見守っていた警護隊の間から歓声が上がる。
「降りろ」
コルが手振りで命じると、顔を憎悪の色に染めたロキがよろよろと降りてきた。◯◯◯は抜き身を提げたまま、注意深く二人を見守る。
「この俺にこんな屈辱を味わせるとは……貴様、名を名乗れ」
どうしてこの男は負けた癖に、こんなに偉そうなんだろうか。
「コル・リオニスだ。階級は将軍だ」
准将の肩書に当てつけるかのような返答に、この人もなかなか意地が悪いと◯◯◯は笑いを噛み殺す。案の定、度重なる屈辱にロキの肩は震えていた。
「さて、ロキ・トルムト准将とやら。この無謀な侵攻の理由を聞こうか」