イベント
朝起きてギルドに行くと、その途中で見かける男も女もカップルもみんなソワソワして、中には不審者レベルで怪しいほど挙動不審な奴もいた
理由は明確、何故なら今日はバレンタイン
女はチョコを渡し、男はチョコを貰える…いや、貰いたい日
そんな様子を他人事のように眺めながらギルドに向かう
何故なら?今日のために1ヶ月前なら愛しのナツにバレンタインというイベントについてしっかりと教えたからだ!
ナツからチョコを貰いたい…その一心でどれ程の時間を捧げたか…
まぁそのおかげでナツも理解してくれたのか昨日は誰が見ても怪しむほど挙動不審だったし姿を見ない時もあった
あれは確実にオレのためにチョコを作ってる!
付き合って初めてのナツからのチョコ…嬉しすぎてスキップしちまいそう
グレイ「…」
そうして楽しみにウキウキしていたのもほんの数分前
なんでそんな気分が沈んでるかって?
愛しのナツが何故かこの日に仕事に行ってるからだ
今日はバレンタインだろ?恋人とイチャイチャする日だろ?恋人から貰ったチョコを美味しく食べてついでに恋人も美味しく食べちゃう日だろ!?なんでそんな日に仕事行ってんだよ!!
そんなわけで、涙を流しながらカウンターの席で突っ伏していると、ミラちゃんが注文したブラックコーヒーを持ってきてくれた
傷心した時には砂糖もミルクも入れないブラックに限る
身体を起こしてカップに注がれた黒い液体を口に含むが…
グレイ「ぶっ!!?甘っ!?ミラちゃん!これコーヒーじゃなくてホットチョコレート!」
ミラ「そうよ?」
ニコニコとさも当然と言わんばかりに返される
グレイ「オレが頼んだのブラックコーヒーなんだけど…」
ミラ「独り身ならいざ知らず、あなたにはナツがいるのにこんな日にブラックコーヒーを飲むものじゃないわよ?」
グレイ「だって…ナツは仕事行ってるし…」
ミラ「今日だからこそ…よ」
グレイ「え?」
ナツ「グレェェェイ!!」
ミラちゃんの事情を知っていそうな言葉に詳しく聞こうとした時、扉の方からドタドタと走りよってくる音がした
グレイ「ナッぐふっ!!?」
ナツ「おまえ、なんで家いなかったんだよ!捜したじゃねーか!」
グレイ「だっ、おまえ仕事行ってたんじゃ…」
ナツ「んなもんすぐに終わらせてきたわ!」
グレイ「ってか、家にいろとか言われてねーしってかこんな日に仕事行くおまえに言われたくねぇ!」
ナツ「しかたねーだろ、今日限定だったんだよ!
おっ、おまえのことが好きだからおまえのために行ってきたんだからな!」
グレイ「へっ!?それどういうぐぼっ!?」
なんか今物凄い爆弾を投げ込まれたような気がして思考が停止していると顔面に物凄いスピードで何かが飛んできた
避けることも出来ず顔面で受け止めてしまい痛みにもがいている間にナツは外に走り去ってしまった
グレイ「いってぇ…いったい何なんだよ…あ?これは…」
床に転がる物体…おそらくナツが投げたそれは美味しそうなオレンジ
見た目からもぎたてと分かるほど瑞々しいオレンジ色をしている
おそらくこれがクエストの報酬なのだろうが…
グレイ「なんでオレンジ?しかもオレのためにって…」
ミラ「グレイ」
グレイ「えっ?」
振り返ると差し出されている本
開かれているページを見るとその理由はすぐに分かった
アイツ…チョコ渡すのが恥ずかしいからってよくこんなこと思いついたな
ナツ「っ…///自分からあんなこと言うぐらいなら素直にチョコにしとけば良かった…」