『俺の傷と君の傷』

 
「苦しくなったら、大きく息を吸い込め。吸い込んだら吸い込んだだけラクになるから」

 それは小さい頃に教えてもらったおまじない。

「だから泣くな」

 いつも笑ってるように見える細い垂れ目の幼なじみが、俺に手を差し延べる。

 お前の痛みは俺の痛みだ。

 太陽を背に彼が微笑む。

 その手を取れば、きっと救われる。

 そう思って、手を伸ばした。
 
 
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