『トライアングル』
「実は俺、好きな人ができたんだ」
突然の告白に、俺は口に含んでいたジュースを思い切り吹いてしまった。
彼は真面目で照れ屋で、女の子ともあまり話をしないような硬派な男なのに、一体どうしたっていうんだ。
マジマジと見つめると、真っ赤な顔で俯く。その逞しい容姿には不釣り合いな可愛い仕種に、俺の下腹部が疼いた。でも、それと同時に胸が裂けそうに痛む。
俺は政樹(マサキ)が好きだ。友達として傍に居られればいいと思っていたのは彼が恋愛に興味がなさそうだったから。
男らしい美形の彼は女子からの人気も高く、毎日誰かしらに告白されているほどモテるのに、部活のバスケが大事だからと全く相手にしない。そんな彼だから、安心していたのに……。
「だだだだ誰だよっ!? その相手っ!」
「……言いにくいんだけど、その、お前と……充(ミツル)と同じ人」
「……誰?」
「だからお前と同じ人だよ! 橋村麻奈美!」
「あー……」
そういえば、以前にそんな事を言った。
クラスの連中に問い詰められた時、まさか政樹だなんて言えるはずもないから、仕方なくクラスの美人の名前を出したのだ。
なんだよ、あんな子が好みなのかよ。小さくてふわふわした感じの、いかにも女の子といった可愛い子。
ちくしょう。
勝てるわけないじゃないか。
「お前! 俺と同じ子が好きなのかよ! 親友だと思ってたのに!」
「悪いけど、好きになっちまったから……」
次の日、俺は彼女と一緒に登校する政樹を目撃したのだった。