『天使を抱くマリア』
ルーカへ
まさかあれが偽物だと気づかれるとは思わなかった。
君こそが本当にグアドラードを愛している人間だ。だからこそ、その絵が偽物であることをどうか黙っていて欲しい。
本当は父も母も絵を売りには出したくなかったんだ。しかし父が死に、生活に困った母は幼い俺を守る為に泣く泣く絵を売ることにした。けれど、世間知らずだった彼女は沢山の人に騙されて絵を奪い取られた挙げ句に、貧困で死んでしまった。
なんとか生き延びた俺は、不当に出回った絵を取り戻すために、模写をしては偽物を描いてすり替えてきた。
グアドラードの絵は世界中に飛び散っている。
俺はそれを探しにまた旅に出なければならない。
いつかまた君に会えたら、グアドラードの絵を一緒に眺めよう。
アルディオ・グアドラード
END