夢十夜パロディ へしさに
第二夜
こんな夢を見た。
私は祭囃子の行列の中で横笛を吹いていた。クラシックやポップ・ミュージックとは違った趣のある、神輿が進むために奏でられる曲。夕暮れの中、蛙の鳴き声を背景に太鼓と摺鉦の混ざった音色は懐かしく、またどこか恐ろしくもあった。私は見るからに祭りに参加しているというのに真っ黒のリクルートスーツだった。見渡せば町内会で揃いの法被姿の人々がずらずらと列を成していた。そういえば、私の住んでいた町内会の寄合は、審神者になって数年後に子ども不足で無くなってしまったのだった。摺鉦の小気味いいリズムとローヒールのパンプスの踵の音が時折重なって、その瞬間だけは足音が消えるので安心した。ぴいひょろ、ぴいひょろ。ちゃんちゃか、ちゃんちゃか。もう何年も吹いていないから忘れたと思っていたが、旋律は脳でなく体に染みついていた。
奇妙で懐かしい行進はひとりの侵入者によってその調和を失ってしまった。その侵入者は突然背後から私を抱きすくめたので、手から笛が落ち、お囃子を続けられなくなってしまった。するとどうだろう、夏の湿り気のある空気が冬の鋭い吹雪に変わり、法被を着た人々は煙のように消え去り、真白な雪原のただ中に取り残されてしまった。後ろに立つ侵入者を首だけ動かして見上げると、藤色の瞳と視線が合った。藤の花なら皐月だろうに、雪の中では季節外れだ。
はせべ、と呼ぶ声が掠れて、喉がカラカラに乾いていることに気付いた。なにか読みたい、でも何を? そうだ、本丸に帰ればいい。どうやって? 道も何も見渡す限り白い地平線しか見えないここはどこだろう?
帰りましょう主、俺たちの本丸へ。
どうやって、長谷部、どうやって帰るの、道もわからないのに。
道ならありますよ、そら、目の前に真っ直ぐ伸びているではありませんか。
見えないよ、どこに行くの、どうして、どうしてこんな。
帰ろう帰ろうと口で言う割に長谷部は抱きしめるばかりなので、私はそれに甘えてただ突っ立っていた。雪が積もって膝がすっかり埋まってしまったが寒さは感じなかった。降りしきる白の中で、ここが地獄なのかもしれないとぼんやり思った。道はまだ見えない。
こんな夢を見た。
私は祭囃子の行列の中で横笛を吹いていた。クラシックやポップ・ミュージックとは違った趣のある、神輿が進むために奏でられる曲。夕暮れの中、蛙の鳴き声を背景に太鼓と摺鉦の混ざった音色は懐かしく、またどこか恐ろしくもあった。私は見るからに祭りに参加しているというのに真っ黒のリクルートスーツだった。見渡せば町内会で揃いの法被姿の人々がずらずらと列を成していた。そういえば、私の住んでいた町内会の寄合は、審神者になって数年後に子ども不足で無くなってしまったのだった。摺鉦の小気味いいリズムとローヒールのパンプスの踵の音が時折重なって、その瞬間だけは足音が消えるので安心した。ぴいひょろ、ぴいひょろ。ちゃんちゃか、ちゃんちゃか。もう何年も吹いていないから忘れたと思っていたが、旋律は脳でなく体に染みついていた。
奇妙で懐かしい行進はひとりの侵入者によってその調和を失ってしまった。その侵入者は突然背後から私を抱きすくめたので、手から笛が落ち、お囃子を続けられなくなってしまった。するとどうだろう、夏の湿り気のある空気が冬の鋭い吹雪に変わり、法被を着た人々は煙のように消え去り、真白な雪原のただ中に取り残されてしまった。後ろに立つ侵入者を首だけ動かして見上げると、藤色の瞳と視線が合った。藤の花なら皐月だろうに、雪の中では季節外れだ。
はせべ、と呼ぶ声が掠れて、喉がカラカラに乾いていることに気付いた。なにか読みたい、でも何を? そうだ、本丸に帰ればいい。どうやって? 道も何も見渡す限り白い地平線しか見えないここはどこだろう?
帰りましょう主、俺たちの本丸へ。
どうやって、長谷部、どうやって帰るの、道もわからないのに。
道ならありますよ、そら、目の前に真っ直ぐ伸びているではありませんか。
見えないよ、どこに行くの、どうして、どうしてこんな。
帰ろう帰ろうと口で言う割に長谷部は抱きしめるばかりなので、私はそれに甘えてただ突っ立っていた。雪が積もって膝がすっかり埋まってしまったが寒さは感じなかった。降りしきる白の中で、ここが地獄なのかもしれないとぼんやり思った。道はまだ見えない。