夢十夜パロディ へしさに

第一夜 

 こんな夢を見た。
 私は乗用車の後部座席に座って田舎道を揺られていた。この車は小学生の時分に父親が乗っていたもので、いささかシートベルトの締め付けがきつかった。窓の外には杉の木が見え、夏の緑が目に眩かった。隣には幼馴染が座っていた。中学校ではクラスが離れ、やがて段々と距離が遠くなっていった彼女。何故か小学生の姿で、おとなになってしまった私とは不釣り合いだった。黒髪に銀縁の眼鏡が知的で、落ち着いた性格の彼女にひっそりと憧れていた。大人になった彼女はいかほど美しいだろう、静かな水面の美しさを持った彼女に少女の私は嫉妬していた。
 かつて通っていた小学校の駐車場で車は止まった。誰が運転しているのかよく見えなかったが気にはならなかった。ドアを開けると光忠が笑顔で待っていた。振り返らずに荷物を持って降りる。さようなら友人、もう二度と交わらない道。荷物はスーパーマーケットのビニール袋で、中には食べ物がたくさん入っていた。車は煙の如く私の意識から立ち消えた。光忠は自然な動きで私の荷物を持ち、私もまた当然といったように胴回りに抱きついた。自分の大胆さに驚いたが、これが正解らしく、彼は全く動揺を見せずにそのまま進んでいく。私の突進ぐらいでは足がふらつくこともなく、いつも通りの微笑みを浮かべて、どこか困ったような色をにじませながら空いた手で背中に手を回されたので離れることもできなかった。常日頃見た目に気を遣う彼だのに、上下のジャージの色が合っていないのが気になった。
 しばらくそのまま歩いていると彼は進行方向とは逆の方へ、私はそのまま真っ直ぐ進み、キャンプ場のようなひらけた場所が現れた。そこでは本丸の刀たちがバーベキューの準備をしていた。広場の中心には集団ができていて、そこへ近づいていくと集団の真ん中に光忠が立っていて、私と目が合うとにっこりと顔をほころばせた。彼の隣へ磁石のように吸い寄せられるように歩きながら、この彼は上下のジャージの色が揃っていることを確認した。
 さっきの光忠は長谷部だったのだと思った。そっと周りへ目を滑らせると、食材を持ってやって来る長谷部を見つけた。いつものジャージの色はさっき見たズボンの色と一緒だった。彼と目が合うと、困ったような、嬉しそうな、曖昧な表情で返された。

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