09 犠牲あっての幸福
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そんな彼らの様子を見つめるのは、2つの少年少女の影。
少女は双眼鏡を覗いていた。
「ふふ、みーつけた♪」
双眼鏡の先には…、イミテの姿が。
「ねえ、本当にあの女の子がニビシティの裏切りものなの?」
「間違いないよ。グレーバッジを持ってた。本物だ。」
少年が答える。
「だったらさっそく作戦をたてなくちゃ。あの子を捕まえて王に差しだせば…褒美がもらえるのね。」
「姉さん。あの女……能力者なんだよね?」
「…ええ。でもだからって引き下がるわけにはいかないわ。自由を手に入れるためには…仕方ないことなのよ。」
「……ああ。」
少女は双眼鏡を覗きながら、「あら…?」と声をあげる。
「どうしたの?姉さん。」
少女の双眼鏡が映しだしたのは…、レッドだ。
「あの男の子、さっきのカモだわ。ふーん、あの女の子の仲間だったのね。ちょうどいい…利用してやりましょ。」
ふふ…、っと少女の口元が弧をえがいた。
「ふうー…。よかったな、空き部屋があって。」
ソファーに腰をおろすレッド。
グリーンはシャッとカーテンを閉める。
「油断するな。いつ誰に見られているか分からないぞ。」
そんな様子を見てイミテはしゅん、と少しうつむく。
「ごめん、バッジを見せたの…うかつだった。」
「そうしなきゃ危なかったんだろ?無理して戦って、イミテとイエローが怪我するよりはいいさ。」
レッドは優しく笑った。
「…ところでレッド。」
「ん?」
「お前、剣はどうした?」
「……え?剣…?」
レッドは腰に手をあてる、が…。
「ななな、ない!?剣がないっ!!」
「「え!?」」
「はあ…。どうせどこかに置いてきたんだろう。探してこい。」
「クチバについてから剣、はずしてないはずなんだけどなあ…。とにかく行ってくる!」
レッドは急いでドアノブに手をかけた。
すると、ちょうどそのとき、コンコンとノック音が部屋に響いた。
「!」
レッドはすかさずドアから距離をとる。
緊迫した空気が一気に部屋に流れた。
「俺がでる。お前はさがってろ。」
扉の向こうにいるのは例のマチスの手下かもしれないのに、武器を持たずに出るのは危険だと考え、グリーンはレッドをどかす。
そして刀の柄に手をかけながら、ゆっくりとドアを開けた。
「こんにちは!」
そこにいたのは自分と同い年ぐらいの見知らぬ少女。
予想外の訪問者になんだか気が抜けた。
「誰だ、お前?」
「あの、これ…。」
少女はそう言って1本の剣を差し出す。
それは正真正銘、レッドの愛用している剣だった。
「俺の剣!あ…!君はさっきの…!」
グリーンの後ろからひょっこりと顔をだしたレッドは少女の姿を見て驚く。
彼女はさっき港でぶつかった子だ。
「この剣、港に落ちていたんです。たぶん私とぶつかった時に落としたんだと思います。」
「そっか!さんきゅー!」
レッドは嬉しそうに剣をうけとり、しっかりと腰にはめた。
「何かお礼しなくちゃな。」
「いえ、そんな…お礼なんていいですよ。」
「遠慮するなって。この剣、大事なものだからさ。無事に戻ってきて嬉しいんだ。何でも言ってくれよ!」
レッドの言葉に少女は目をふせて考えるそぶりを見せる。
「あの…、アナタ達は旅のお方ですか?」
「ああ、まあ…。」
「じゃあ、もしよろしければ、町を案内させてくれません?」
「えっ、いや、それはちょっと…。」
レッドは顔をしかめる。
こんな騒ぎになっている町の中を歩くのは、いくらなんでも危険だ。
「そうですよね、すいません。」
少女は悲しそうにうつむいたため、その長いまつげが強調される。
……やっぱり美人だ。
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