09 犠牲あっての幸福
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サントアンヌ号の目の前まで来たレッド。
「(入っても平気だよな?)」
中の様子を確認しようと、船の入り口のところからそおーっと身を乗り出した時…、
「勝手に入るんじゃない!」
という怒鳴り声に、思わずピシッと背筋をのばして気をつけする。
そこには、黒いスーツに黒い帽子そしてサングラスをかけたおじいさんがいた。
真っ白いヒゲが印象的で、足が悪いのか杖をついている。
「この泥棒め!」
いや、足が悪いのは気のせいだったようだ。
老人は杖をブンブンと振り回し、レッドを叩こうとする。
「わっ!?……っと、危ないですって!俺は聞きたいことがあったからこの船に入ろうとしたんです!泥棒なんかじゃありません!」
「聞きたいことじゃと…?」
少々乱暴だが素直な性格のようで、レッドがそう言うと老人はピタリと動きを止めた。
「というか、アナタは誰なんですか?」
「わしか?わしは港にとまる船に指示を出しとるんじゃ。まあ、この港の会長といったところかのう。」
ヒゲをいじりながら自慢気に答えたおじいさん。
「!会長ってことは顔が広いんですよね!?」
「そりゃあもちろん!」
レッドは少々声をひそめて、会長に耳打ちをした。
「…サカキって名前、聞いたことありませんか?」
「サカキ?どんな奴だね?」
「裏で国を操ってるらしいんですけど…、俺も詳しくは知らなくて。」
「うーむ…。知らんのう…。この辺りを支配しているのはマチスじゃし…。」
「マチス……?」
「ああ。コイツがまた悪い奴でのう…。誘拐やら密輸やら、いろんな悪事をしとるんじゃ。」
はあ、と会長は深いため息をついた。
「そんなことして…、なんで軍人に捕まらないんですか?」
「この国の王が裏でマチスと取引をしておってのう。自分に被害が及ぶのを恐れて、誰も動こうとはしない。」
「そんな…。」
「軍人なんてそんなもんじゃよ。むしろ正義感からその役職についている者なんて、ほんの一握りじゃ。」
「……。」
レッドは思わず黙り込む。
そんな静寂を打ち消すかのように、ボー、という音が響いた。
「お、船が出航するみたいじゃな。わしはそろそろ行かねばならんが…いいかね?」
「はい。ありがとうございました。」
「そうそう。」と会長は付け足す。
「最後に1つ。おぬし、路地裏には絶対行っては行かんぞ?」
「路地裏…。」
「マチスの手下にものすごく強い奴がいて、いつも路地裏を見張ってるんだ。赤髪で黒い手袋をした、名前はたしか…「会長!出航の指示をお願いします!」
船からひょっこり顔をだした船員が、老人の言葉を遮る。
「おお、すまんの。じゃあ、気をつけるんじゃぞ。」
そう言うと、老人は杖をつき船の中へと入っていった。
「(一応グリーンにもマチスって奴のこと知らせとくか。)」
レッドはグリーンの元に戻るため、歩き出した。
すると、
「きゃっ!」
「っ!?」
ドンッ!と誰かとぶつかった。
思わず支えたため、倒れなかったものの端から見れば抱き合っているような体勢に。
「えっと…、君、大丈夫?」
「あ、はい…。」
顔をあげたその子は長い栗色の髪をした、美人な少女だった。
「……。」
「っ…//」
ジッと…やや上目遣いで顔を覗きこまれ、レッドは赤面する。
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