09 犠牲あっての幸福
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「な…!?イエロー!大丈夫!?」
「は…はい、僕は何とも…。」
イエローには傷1つついていない。
でも状況がのみこめず唖然としている。
男の手を見れば、手袋からうっすらと黒い電気のようなものがでていた。
「(なんなの、これ…。)」
「力の差が分かっただろう?…今すぐ消えろ。」
低い声で耳元で囁かれ、さすがのイミテもこれには少し身震いをした。
しかし、やがて笑みをうかる。
「ふざけないで。負けたわけじゃないから。言ったでしょ?武器は弓矢だけじゃないって。」
「なんだと?……ぐっ!!」
すきをついて、イミテの蹴りが男のお腹にはいった。
「両手がふさがってても足は使え、る…」
イミテの言葉が途中で途切れた。
理由は、男のフードがとれて顔があらわになったから。
目を惹かれる、真っ赤な髪。
それを引き立てるような白い肌。
そして、男だと思っていたその顔つきは、まだ“少年”。
イミテと同い年…、下手すれば年下ぐらいだろうか?
「アナタ、年いくつ…?」
「チッ……」
少年は舌打ちをして、手袋をした手をイミテのほうに向ける。
「!動かないで!」
イミテはあるものを少年につきつけるようにして見せる。
それは、1つのバッジだった。
「…私に傷の1つでもつけたら、ニビシティの王に刃向かうことを意味するからね?」
そのバッジはニビシティで授けられた、ニビの王の第一家来の証。
その国によって名前や形が違い、ニビのバッジはグレーバッジと呼ばれている。
ニビの王を裏切った今、それを見せびらかすのは危険極まりないが、少年の動きを止める方法はそれしか見つからなかった。
「お前、女のくせに軍人なのか…?」
「……ここ、通してもらえるかな?」
唖然としながら聞いた少年の問いには答えず、イミテはそう言った。
「…もう一度忠告しておく。この町を支配しているのはマチス様だ。痛い目にあいたくなかったら、派手な動きはしないことだな。」
少年はフードをかぶり直すと、素早く暗い路地裏に消えた。
「イミテさん、大丈夫でしたか?」
「うん。イエローも平気?あの人の手袋からなんか黒い電気みたいなものがでてたけど…。」
「あ、はい!本当に怪我とかはしてないから大丈夫です。なんだったんでしょう、あの人…。」
「あの手袋…、それにマチスっていう人も気になるね。」
不可解な謎を残した、不思議な少年。
「とりあえずいったん港に行って、レッド達と合流しようか?」
「そうですね。」
バッジをポケットにしまうと、イミテ達は港に向かって歩き出した。
一方、レッド達はすでに港につき聞きこみを始めていた。
しかし民衆にサカキという名前をだしても皆首を傾げるばかりで、一向に手がかりがつかめない。
「まあ…手下がサカキの変わりに動いてるって言ってたから、一般の民衆は知らなくて当たり前か…。」
「王族とつながりがありそうなヤツに狙いをしぼって聞くしかないな。」
そんなとき、ボーという音とともに港に新たな船が入ってきた。
それは、今停泊している船よりも一回り大きい巨大なものだ。
「サントアンヌ号、か…。俺、船から降りてきた人に話し聞いてくるよ。」
「ああ。俺はこのあたりの上流階級の奴らに話しを聞く。」
お互いにコクリとうなずき、レッドとグリーンは別々に歩き出した。
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